マガ9備忘録

消費税が5%から8%となって、一向に慣れぬまま早3カ月が過ぎた。この増税に伴い、「臨時福祉給付金」と「子育て世帯臨時特例給付金」が支給されることはご存じだろうか。一時期はテレビCMに「カクニンジャ」という忍者のキャラクターが登場して、2つの給付金の周知をしていた。

「臨時福祉給付金」は、低所得者への負担の影響を考えてのもので、対象者は今年度の住民税の非課税者で約2400万人。ただし、課税者の扶養親族や生活保護受給者などは除かれる。1人につき1万円が支給され、年金や児童扶養手当などの受給者は1万5000円となる。

また、「子育て世帯臨時特例給付金」の対象者は、1月分の児童手当の受給者。こちらも、児童手当の所得制限限度額以上の人や生活保護受給者などは除かれ、子ども1人につき1万円が支給される(ともに今年3月末までに生活保護受給が廃止・停止された人は支給対象となる)。

しかし例によって、役所というのは申請しないと何もしてくれない。また市区町村によって申請日時が違い、既に受付を開始した自治体、まだの自治体とばらばらだ。通知があっても、分かりにくく複雑な書類・書式になっているケースもあるようだ。

老人世帯ではデジタルディバイド(格差)もあるだろうから、インターネットを使った告知は限界がある。さらに、最も苦しい生活をしているホームレスには、情報が届いていなかったり、住民登録や口座開設が必要なため、給付を受けづらい制度だ。

そもそもこの給付金は何のためだろう。厚生労働省のHPには「所得の低い方々への負担の影響に鑑み」「子育て世帯の影響を緩和し、子育て世帯の消費の下支えを図る」とある。そうした人々への目配りはどこへやら、毎度のお役所仕事に埋没させてどうするのか。

厚生労働省発表の相対的貧困率は16.0%。すなわち貧困線以下で暮らしている人が日本にはおよそ2000万人いるということだ。15日には同省の国民生活基礎調査で、平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合を示す「子どもの貧困率」が2012年時点で16.3%と過去最悪を更新したと発表された。

貧困問題は深刻さを増している。たった一度の給付では、まったく雀の涙だろう。給付の手続きにも問題がある。それでも、できるだけ多くの人がこの制度を知り、給付されるべき人に漏れのないようにしたい。これは行政の責務だ。

最後に、気をつけなくてはいけないのは、こうした新たな給付金があると必ず出てくる振り込め詐欺や個人情報の詐取だ。厚労省や自治体の職員が、ATMの操作や手数料の振り込み、個人情報の照会を申し出ることはない。身に覚えがないのに、自宅や職場などにそうした電話がかかってきたり、郵便が届いたら、迷わず警察に連絡してほしい。(中津十三)

 

  

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