マガ9備忘録

今年の憲法記念日に、新聞2紙にそれぞれ掲載された憲法をめぐる対談記事は、どちらもなかなか興味深かった。東京新聞と毎日新聞だ。

東京新聞は、憲法学者の古関彰一さんとヒップホップミュージシャンShing02(シンゴツー)さんの対談を見開きを使って展開。Shing02さんが米ハワイ在住のため、インターネットのテレビ電話を使って、2人は押し付け論の欺瞞や、なぜ70年守られてきたのかを縦横に語り合う。

シンゴさんは2年前に知人から「日本国憲法についての作品をつくってはどうか」という打診があり、それを引き受けたのが、憲法に興味を持ったきっかけだったという。彼がつくったその「日本国憲法」という曲は、制定過程や戦後憲法が辿ってきた問題を22分に及ぶ長いラップで歌い、語っていく。圧巻なのでぜひお聴きいただきたい。

この対談の外に付された「戦後日本に刻まれた憲法の足跡」では、画期的な違憲判決の数々が一覧になっており、生活の中に憲法が息づいていることが分かる。

毎日新聞では、法哲学者の東京大学大学院教授・井上達夫さんと憲法学者の首都大学東京教授・木村草太さんの対談だが、こちらは憲法と安全保障に焦点を絞った対談だ。2人は憲法9条を巡って鋭く対立する。

井上さんは自らの解釈を自衛権を認めぬ原理主義的護憲派と同じだと規定し、戦力を否定した9条によって戦力=自衛隊を統制する規範が憲法に盛り込めない、ゆえに9条を削除せよと主張する。

一方、木村さんは「必要な自衛の措置」を認めた従来の政府解釈を肯定し、ゆえに今回の安保法制で改正された自衛隊法の「存立危機事態」条項は違憲であり無効であるとする。

2人が一致するのは沖縄への視点だ。自治権の制限を伴う米軍基地建設に、地方自治の本旨を述べた憲法92条と、特定の自治体にのみ適用される特別法の住民投票を規定した同95条によって、住民投票を行ないその意思を反映させるべきだとした。

ほかに特筆すべきは、樋口陽一さんら識者にインタビューした「時代の正体 憲法特集」をラッピング紙面で発行した神奈川新聞だろう。大書された「萎縮しない」「『なめんなよ』の精神を」といった文言にも注目が集まった。この紙面はプラカードにもなり、PDFでダウンロードできる。

もはや古新聞になってしまったかもしれないが、もう一度目を通されてみてはいかがだろうか。

(中津十三)

 

  

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