マガ9備忘録

台風23号が沖縄本島を直撃した10月5日、那覇市のリウボウホールで県内2紙を代表する漫画家によるトークショーが開かれた。私はこれを聴いて深く感銘を受けた。

題して、「大城さとし×ももココロ トークセッション『ふたりのビッグショー 僕らの〈四コマ漫画〉な日々』」。大城さんは沖縄タイムスで『おばぁタイムス』『糸満市ヒーロー課 エイトマン』を、ももさんは琉球新報で『がじゅまるファミリー』をそれぞれ連載している漫画家。ともに沖縄県内で絶大な人気を集めており、殊に『がじゅまるファミリー』はもうすぐ3500回を迎えるほどの長期連載だ。

ももココロさん作『がじゅまるファミリー』のパネル。左から、マンタ君とサンゴちゃん

本を通じて街の活性化を図ろうと、那覇市では「ブックパーリーNAHA」が開催されており、このトークショーはその一環。既に終了したものもあるが、県産本フェアや講演会、読書会、写真展、古本市などのイベントが今月いっぱい盛りだくさんだ。合言葉は「那覇の街が本屋さんになる」。ちなみに「パーリー」とは「パーティー」を沖縄的に発音した言葉である。

この日は台風23号が接近し、バスやモノレールなど公共交通機関が午後からストップ。しかしそんな中続々と聴衆が集まり始め、用意された椅子はほぼ満席に。NPO法人シネマラボ突貫小僧代表の平良竜次さんの司会進行で、トークショーは和やかに始まった。

大城さとしさん作『糸満市ヒーロー課 エイトマン』のパネル。左から、ちゅらオレンジ、はるさーブラウン、海人ブルー、糸満レッド、エイ豚ピンク、ゴーヤーグリーン、かまぼこイエロー、あんまーブラック

執筆時の写真や生活リズムの円グラフなどのスライドを用いた軽妙な2人のトークに、会場には笑いが絶えない。対象を足していくももさん、引いていく大城さん。作風は違えど、お互いを尊敬し、刺激を受けながら作品に真摯に向かい合っていることが心から分かる。一瞬で読み終えることもある4コマ漫画を、いかに呻吟してつくっているか、その秘密を垣間見た思いだ。

ここで全国の新聞漫画を研究している岡部拓哉さんがゲストとして登場。まず1県に有力紙が2紙ある県はほかに1県だけであり、さらに地元出身の作家が連載を持っていること自体珍しいことだと分析した。なるほど、確かにそうだ。日本列島の気候はそれぞれいろいろなのに、4月になれば桜が咲く漫画が。地方の視点は排除され、何となく共通の、平均点的な作品がどの地方紙にも載っている。

この2人の視点は地元に根ざしている。だからこそ地元の人から信頼と支持を受ける。風習、自然、文化から、沖縄戦、社会問題、米軍基地、さらにはオスプレイまでを、漫画だから出来るアプローチで表現し、一緒に笑い、泣き、ときには怒る。政治面でも生活面でもなく、社会面に4コマ漫画が載っているのはなぜなのか、と岡部さんは語ったが、その理由の一端が分かった気がした。

トークショーの前後には2人とも気軽にサインに応じてくれた

 

  

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