木内みどりの「発熱中!」

映画、テレビ、舞台と幅広く活躍してきた女優の木内みどりさん。
3・11以降は、脱原発についても積極的に活動しています。
脱原発への思いや憲法のこと、政治や社会参加についてなど、
日々の暮らしや活動のなかで感じていること、気になっていることを
「本音」で綴っていただきます。不定期連載でお届けします。

第25回

カトリーヌさん

 ベトナム人アーティスト、Dinh Q Le さんの「ディン・Q・レ展:明日への記憶」@六本木ヒルズ森美術館のこと(ぜひ、見にいらしてください。お勧めです)。影響されて前から行きたかったベトナムに思いつきそのものの勢いで行って、見聞きしてきたことのあれこれ。そして東京に戻ってから再度見に行った「ディン・Q・レ展」のこと。このアート展が引き金となって興味がむくむく湧いてしまって、ベトナム戦争について勉強していることなど、たくさん・たくさん、お伝えしたいことがあります。

 が、今は、きのう(9月6日)出会った女性のことをお伝えします。このフランス人女性には、わたし、痺れました。カトリーヌ・カドゥ(Catherine CADOU)さん。

 きのうは、京都に日帰りで行って、「さようなら原発、さようなら戦争」集会 @梅小路公園で司会。雨が降ったり止んだりの悪条件のもと、安倍政権に怒ってる5,500人もの人々が集まった、熱意にあふれたいい集会でした。原発現地からの報告として、鹿児島・川内原発再稼働後について向原祥隆さん、次に再稼働を狙われている福井高浜原発の地元からの怒りを東山幸弘さん、川内・高浜に続いて「新規制基準」に「合格」していて再稼働を予定されている愛媛・伊方原発の地元から松本修次さんが話されました。

 前滋賀県知事・嘉田由紀子さんは、数日前に交通事故に巻き込まれ胸部打撲なさって、参加は無理かもと主催者が残念がっていたところ、痛みを乗り越え「コルセットしてるから大丈夫」と仰っていらしてくださり、スピーチしてくださいました。雨が激しくなっても帰る人などいないほど熱いみんなの怒りがそうさせるのか、嘉田さんは身振り手振りをまじえて大きく話して熱を帯び、勢いに乗った体が前に、また一歩前に、と進まれる。それはそれはステージのギリギリまで進まれるので、司会・進行のわたしはハラハラドキドキ。ついにはそばまで行ってジャケットの後ろを掴んで引っ張りました。w

 そして、そして、カトリーヌさん。「原発要らない、再稼働などもってのほか。みんなで戦い抜きましょう」とスピーチされた後、「これはわたしの小さな経験ですが」と言って話してくださったエピソード。

 ある日電話がかかってきて、日本国がわたしに勲章を下さると言うのです。わたしは“勲章”なんて好きじゃないけれど、わたしがしてきたことがみなさんに知っていただけるならうれしいとお受けしますと言ったのです。ところがその翌日、当時の野田首相が大飯原発を再稼働させると発表したとニュースで知りました。わたしはすぐに大使館に電話して、「きのうはお受けしますと言いましたが、変更します。原発事故を起こしておきながら再稼働をさせるなんて、そんな政府からの勲章などいりませんので、変更します」と言いました。

 カッコいいぃぃぃ〜〜!

 カトリーヌさんは、映画界の巨匠・黒澤明監督の通訳として日本とフランスで活躍。次第に日本の映画監督がカンヌ映画祭に関わる時は、ほとんどカトリーヌさんが通訳・翻訳・コーディネイトするように。日本の、特に下町の暮らしの「豊かさ・美しさ」に魅了されて東京・木場に住まいを持ち楽しんでいたところ、巨大スーパーができると知ります。このままじゃ町がすっかり変わってしまうと、失われる前にその暮らしの豊かさを記録したいと撮影を始めます。それが映画『KIBA Tokyo Micropole/住めば都 』。
 なんと 、この9月20日に一回だけ上映会があります。京都の「アンスティチュ・フランセ関西」で。カトリーヌさんのアフター・トーク付きです! 行きたい!
 
 もう1本、カトリーヌさんのドキュメンタリー映画『KUROSAWA’s Way/黒澤 その道』。黒澤明監督に影響されたと公言している世界の監督たちに黒澤監督について語ってもらうというインタビュー映画。ベルナルド・ベルトルッチ、クリント・イーストウッド、マーティン・スコセッシ、アッバス・キアロスタミ、ジョン・ウー、テオ・アンゲロプロス、塚本晋也、宮崎 駿・・・。この映画も観たい!
 フランス語・日本語・英語が堪能なカトリーヌさん。超インテリのカトリーヌさんの見つめた日本人の暮らしや文化を知りたい。

 わたしは「みなさんの熱い怒りを感じます。カンパも思い切ってしちゃってください。気前よく、熱く熱く、お願いしま〜〜〜〜す!」、「チャリンじゃなくてバサって感じで〜〜〜〜」、こんな風にカンパのお願いをしたのですが、結果、集まった金額は、¥572,975。主催者一同からも参加者からも「おおぉぉ〜〜〜〜」と歓声があがり、うれしい瞬間でした。

 次は、9月23日、代々木公園です。「さようなら原発1000万人集会」も、わたしの提案を受け入れてくれることが多くなって、前の印象とは違うリフレッシュした集会になると思います。
 オープニング・ライブはTOSHI-LOW (BRAHMAN/OAU) 。登壇者は、いつもの鎌田慧さん、澤地久枝さん、落合恵子さん、河合弘之さん。福島から武藤類子さん、北海道に自主避難されている宍戸隆子さんに加えて、奥田愛基さんなどSEALDsのメンバーが来てくれます。
 わたしは司会と後半に津田大介さんと佐藤タイジさん(シアターブルック)とトークもします。集会後のデモも、サウンドカー2台がふた手に分かれて代々木公園~原宿~渋谷と歩きます。
 ぜ・ひ、ぜ・ひ、参加してください。

 この日、代々木公園には行けないって方も、お住いの近くできっと何かしらのイベントか集会かデモがあるはずです。この「マガジン9」の「日本全国デモ情報」はとても便利です。チェックしてみてください。

 

  

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第25回 カトリーヌさん」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    ベトナムに京都にと、あいかわらず飛び回っていらっしゃる様子の木内さんです。カトリーヌさんの映画『住めば都』は10年ほど前に制作された作品。さまざまな方が、日本の原発再稼働の動きに注目していることをあらためて感じます。今週末は、全国各地で安保関連法案に反対する抗議行動、デモが予定されています。私たちもそれぞれに自分の思いをしっかりと伝えていきましょう。

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木内みどり

木内みどり(きうち みどり): 女優。’65年劇団四季に入団。初主演ドラマ「日本の幸福」(’67/NTV)、「安ベエの海」(’69/TBS)、「いちばん星」(’77/NHK)、「看護婦日記」(’83/TBS)など多数出演。映画は、三島由紀夫原作『潮騒』(’71/森谷司郎)、『死の棘』(’90/小栗康平)、『大病人』(’93/伊丹十三)、『陽だまりの彼女』(’14/三木孝浩)、『0.5ミリ』(’14/安藤桃子)など話題作に出演。コミカルなキャラクターから重厚感あふれる役柄まで幅広く演じている。3・11以降、脱原発集会の司会などを引き受け積極的に活動。twitterでも発信中→水野木内みどり@kiuchi_midori

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