この人に聞きたい

普通の人の、
普通の行動が自殺を防ぐ

編集部 お二人にとって、自殺対策は以前から考えていたテーマだったのでしょうか。

拓也 僕は高校くらいから常に頭のどこかにありました。人付き合いが苦手で、社会に適合できないことで生きにくくて。高校の最後に、自殺をテーマにしたシナリオを書いているんですよ。「こうすれば自殺せずに済む」っていうことを探るために。その時出した結論は基本的に今とあまり変わらなくて、誰かが支えることができれば、人は自殺しないで済む。自殺対策は、みんなが生きやすい社会にするということでした。

伸也 ここは兄弟で感覚が違っていて、僕は現象としての自殺に、それほど興味がありませんでした。でも、佐藤さんに出会ってからは、二人の方向性が一緒になりました。

 社会では、”自殺は個人の自由だ”という風潮もありますが、自殺は追い込まれた死です。孤立せずに寄り添う人がいれば、もっと生きられることが取材を通して明確になっていきました。藤里町で発足した『心といのちを考える会』の袴田俊英さんは、毎週1回、1杯100円のコーヒーサロン「よってたもれ」を開いて、集まる人たちに寄り添っています。

編集部『希望のシグナル』のポスターやチラシは、黄色いエプロン姿で微笑む袴田さんですね。

伸也 一見、自殺をテーマにした映画とは思えないほど明るい印象でしょう。秋田の自殺対策に取り組んでいる人たちは、みなさん明るいパワーを持っていました。

 袴田さんの本業はお寺の住職ですが、僧侶として活動しているのではありません。ただの”おじさん”として話を受け止め、コーヒーをいれています。

 常連さんの1人の精神障害のある方は、いつも独学で得た宗教の知識で袴田さんに議論を挑みにくるのですが、その方、普段はけっこう暗い表情をしているのに、サロンにいるときはニコニコしています。議論では袴田さんに負けちゃうんですが、そのやりとりが彼にとって嬉しいことなんだと思います。

拓也 袴田さんは、「自殺対策は、特別な人の特別な活動ではない」といいます。素人で普通の人たちが無責任なことはできないけれど、人と人とをつなぐことは誰でもできると。愚痴をいったり、ただひまをつぶすだけの”場作り”が、自殺を考える人を引き止めています。

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(C)『希望のシグナル』サポーターズ・クラブ/ロングラン映像メディア事業部

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