松本哉ののびのび大作戦

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 最近、いろんなイベントをやったり文章を書く時は、海外作戦の話が多い。海外にはとんでもない奴らが大量にいて、こっちがひっくり返るようなめちゃくちゃな価値観でやってたりしてる!! これは相当面白いし、いざ日本で何かやる時にもかなり参考になったりもする。
 で、「これは行くしかないぞ!!!!」と呼びかけるものの、これがまた面白いことに「なに!!」と、興味を示す人と、「ふーん」と、ほどほどの人に完全に二分される。

 友達の音楽ライターで二木信というやつがいるんだけど、コイツもまた腰が重い典型。数年前、タダでニューヨークに行けると言う話があったとき、二木くんに振ってみた。彼の専門はヒップホップで、ニューヨークと言えば本場中の本場。フリーライターだから時間も何とかなるし、しかも行ったことないと言うので、こりゃ間違いない、いい機会だから絶対行った方がいいよと誘ったところ、「それ、いいね〜。前向きに考えるよ!!」などと日本人的なことを言いはじめ、結局「いや〜、ちょっと予定が合わないかなー」と、結局行かなかった。大阪などで何かある時はすぐ駆けつけるくせに、どうも外国はハードルが高いらしい。こういう人って、結構多い。もったいない、もったいない!!!!
 そういえば、最近よく聞く話では海外に出る日本人バックパッカーの数が激減しているという。学生の頃、貧乏旅行で海外に行ったりしていた頃は、バックパッカーのたまり場みたいな宿には欧米人以外では圧倒的に日本人が多かった。たまに韓国人や香港人がいたぐらい。ところが、いまは韓国人とか中国人の方が多く、日本人はすごい減ったという。う〜ん、やばいやばい! ネットの情報ばかりで海外のことを知った気になってしまったら、いよいよおしまい。だんだん世界から見捨てられて、この島ひとつに取り残されて行ったら大変だ! ってことで、今回はひとつ、海を越えるのは意外と楽だってことを改めて。

パスポートを常時持ち歩こう

 たまに、パスポートを持ってない(もしくは期限が切れている)なんて人がいるけど、これはもう言語道断。いま、日本社会は最強にみみっちく七面倒くさい感じに邁進中なので、巻き込まれたら大変なので、日本でマヌケ社会を作る上でも行動を身軽にしておくのは必須条件だ。常にフットワークを軽くしておいて、行ったり来たりしながら国際マヌケ感覚を身につけておかないと、自民党みたいな本当にマヌケな人々とともにこの国で心中することになる。それはまっぴら御免だ。日本を救うためにも各都道府県の旅券課に大至急取りに行こう。
 またチケットも、最近はLCC=格安航空会社のチケットがやたら普及しまくってて恐ろしく安いチケットが山ほどある。それに対抗して、旅行会社でも宿泊付きのメチャクチャ安いチケットを売ってたりもする。「最近ヒマだな〜」って思ったらすぐに、とりあえず「アジアの都市名+LCC」で適当に検索してみると、いろんな会社が出て来て、しかもそのトップページには「ただいまセール中5000円!」みたいなのが出てくるから、何も考えずにそれを買ってみよう。そして手ぶらで現地についてから、何をするか考えてみよう。
 ともかく、いつ面白い話が舞い込んでくるか分からない時代なので、パスポートはなるべく身近な所に置いておくのが重要!!!!

言葉はイカサマで突破!

 さて、ココまでは簡単。パスポートとチケットを取って海外に行くのは誰でも出来る。問題はここから。「いや〜、海外はまだ」と言う人のたいていは言葉がネックになっていることが多い。確かに、なぜか我々日本人は日本語以外は不得意。それにひきかえ最近アジア圏の若い奴らと接すると、英語を意外としゃべる。大学生ぐらいならだいたい英語を使いやがる! あっ、ちきしょー、ズルいズルい! いや、これは手強い。こりゃ、バックパッカー数も逆転されるわけだ・・・。
 ちなみに、自分の話をすると、英語なんてもう冗談じゃない。現代文明から切り離された東京下町で育ったおかげで、小さい時から「なんでアメリカ人の言葉話さなきゃいけねえんだよ。外人なんかどこにもいねえじゃねえか」という感覚に陥り、挙げ句の果てにうちの親父も、毎晩、居間でプロ野球を見ながら「オレはテコでも日本から出ねえ」とか意地を張ってたから、いよいよ英語と縁が薄くなり、中高生の時も成績は最悪。受験も他の科目で辛うじて乗り切り、大学では「欧米の天下もそろそろ終わるに違いない」と思い、外国語を中国語、第二外国語を韓国語(←これは2ヶ月で断念)という妙な選択をしたため、そのまま英語に接することはなかった。・・・と思ってたら、気付いたらネットやらスマホやらLCCやらがどこからやって来たのか続々と現れて、ここ10年ぐらいで急速に国内国外の境目が曖昧になってくるではないか。しかも、アジア人もみんな英語使うようになって来た! ダマされたコンチキショー!! やっぱり必要じゃねえか! 唯一勉強した中国語も、インチキにインチキを重ねてるので、カタコトもいい所。マトモに会話できるのは日本語しかない。よーし、じゃあ、もう開き直るしかない!! かかって来いコンチキショー!
 
 幸いにも世界を牛耳ってる言語は英語と中国語だ。まずはこの2点で攻めよう。
 まず英語は、我々の中学カタカナ英語を全開に発揮すれば何とかなるはずだ。初海外の時は、あの外人のしゃらくさい発音にひるむが、英語はアメリカ人やイギリス人だけのものではない。インド人はインド風発音でしゃべるし、フランス人はフランス語みたいな英語を話す。よっしゃ、そうとなればもうこっちのもの。我々にはカタカナがついている。何も臆することなく日本英語の恐ろしさを知らしめてしまおう。とりあえずは、アメリカだろうとイギリスだろうと、構うことない。BARで並み居る外人の中でビールでも飲みながら、誰かと目が合ったらすかさず「ジス イズ ビール」と言ってみよう!!!! たぶん全く通じない。でも大丈夫! 自信満々にもう一度言えば、なんとか通じる。単語が通じりゃ、もう問題なし。あとはひたすら単語を羅列してどうにかこうにかしてしまうしかない。それで無理矢理会話してたら、そのうちこっちが文法覚えるか、英語の文法が変わるかのどっちか。歩み寄りはあるはずだ。そう、言語に正統派はない。発音だって、どうせ昔から常に変わり続けてるんだろうし、どれが本当かわかったもんじゃない。じゃ、その英語の歴史に我々も混ぜてもらおうじゃねえか、オイ! 

 おつぎは中国語。こっちは漢字なので、もうこっちのもんだ。言葉が通じなくても書けばなんとかなる。例えば「青椒肉絲」「餃子」「米」「茶」と書いた紙を持って中華街をウロウロしてれば餓死することはない。とりあえず、メシにはありつける。だいぶ前、中国でタクシーだったか人力車だったかの運ちゃんにボッタクられそうになった時、あれこれ言ってもしぶとかったので、紙に「激怒」と書いて文句言ったら「わかったわかった」みたいなことになったこともある。おお、これは便利! あとは漢字の単語(できれば読みも)を覚えて行くだけなので楽勝だ! 文法もあるけど、これは英語と同様、強引に行ったもん勝ち。適当にしゃべって「は?」って言われたら順番入れ替えてみたらいい。大丈夫大丈夫。イカサマは世界を救う。

 もちろん、言葉は覚えれば覚えるだけ、交流も深まるし仲良くなるキッカケも多くなるので、勉強した方がいい。でも、全くチンプンカンプンでも意外と何とかなるもんなので、やみくもに出かけることが優先ってのを心がけておこう!

マヌケネットワークを最大限に使え!!

 さてさて、あと、問題はどう行くかってこと。普通に観光地を回って買い物をしておいしいものを食べるだけだったら、そんなに苦労は要らない。別に努力しなくても、パッと行けばいいだけ。でも、価値観が覆るようなオルタナティブ社会を垣間見てしまうためには、やっぱり行く場所が肝心。
 ってことで、とりあえずは知り合いづてに行ってみよう。とんでもない大バカなことやってるやつがいるらしい、などの情報を得たら、とにかくそこに行ってみるのがいい。このマガ9の連載に登場している所に行ってみるのもいいかもしれない。この界隈でウロついていると、全世界どこへ行っても「つまんないことばっかりやってるクソ政府はロクでもねえ。じゃ、自分らで勝手にやる」という価値観はたいてい共通なので、基本的に仲間なので話は早い。で、その中でもバリエーションはハンパじゃなく、普通にマヌケな奴らの飲み屋から、ほんわかした女の子が集まるカフェ、パトカーに石投げまくりの超ハードコア集団、アート系のやたらオシャレ空間、まったり&ヒッピー巣窟のデンジャラスゾーンなどなど、いろんな所がある。しかも、こういう場所はたいてい他の面白い場所の情報を知っているので、いろいろ渡り歩いていれば、すぐに自分にしっくり来る所が見つかると思うので、あとはそのへんをウロチョロしていれば、面白い友達とどんどん出会えるはず! これはすごい! ネットで知る情報は知識にしかならないので、何の役にも立たないけど、こういう所で教えてもらう情報はそのまま実体験と直結する情報なので、ものすごい。「最近、こんなヤバい所が出来たよ!」と聞いたら、「行きたい行きたい! 連れてってよ!」となる。う〜ん、なんと手っ取り早いことか!

世界マヌケ共栄圏の登場!

 かつて日本は大東亜共栄圏ってのをやろうとした。理想はいざ知らず、実態は大失敗に終わるどころか、国内外のいろんな人に迷惑をかけまくり、とんだ恥をさらして終わった。あるいは、「アジアに共に繁栄するエリアを作ろう」っていう、言葉の理想通りに行ったとしても、国家主体で動いてるし、それに全員を巻き込んでやろうっていうおこがましい発想。ダメダメ、失敗するよそんなんじゃ。イヤだって言う人だっているんだから。
 それに対し、いまもくろんでいるのは、まさに世界のマヌケが共に勝手にはびころうという壮大な計画! しかも、いまのくだらない金もうけ中心社会はほったらかしておいて、マヌケ・大バカコミュニティをどんどん先に作ってしまおうって作戦。っていうか、もう既にある。あとは、どう調子に乗って行くかって話。昔の人はすぐ革命を起こして、世の中をひっくり返そうとしたけど、そういう0か1かって単純な話だけじゃない。言ってしまえば、すでに5%ぐらいの革命は起こっている。金持ち中心のボッタクリ社会にお供するのが面倒になって来たら、倒すんじゃなく5%の方にちょっと顔を出せばいいだけ。行ったり来たりでもいい。くだらない社会は勝手に倒れるものなので、勝手なマヌケな奴らがどんどん調子に乗って行けばいいと言う、極めて単純な話! う〜ん、未来は明るい!!!!!!!
 ってことで、来るべく世界マヌケ革命のためにも、今のうちにむやみやたらと海外の大バカシーンを覗いておくことがオススメ! さあ、出かけよう、出かけよう!

【イベントスケジュール】

2月23日(日)
街の再開発に抗する日台大作戦トークイベント

林暉鈞(台湾マヌケ活動家)×柄谷行人(期待の新人)×松本哉(聞き手)
18:00open/19:00start/1500yen
@高円寺pundit
※あと数席なので予約必須です! 予約はこちら→tetsuo@pundit.jp(電話090-2588-9905/奥野)

 

  

※コメントは承認制です。
第80回世界マヌケ共栄圏の出現近し!
英会話講座&中国語講座付き!
」 に3件のコメント

  1. magazine9 より:

    〈すでに5%くらいの革命は起こっている〉の言葉に、なるほどそういうことだったのか! と大納得。なんだかやたらと愉快そうな「マヌケ共栄圏」がどんどん広がっていけば、そのうち5%が10%に、15%に…と、ちょっとずつ革命が拡大していくのかもしれません。さっそくパスポート片手に出かけたくなってきた!

  2. 日本でバックパッカーが減ったのは、ツアーの方が安いからってことにつきますよ。貧乏人はわざわざ高いチケットを個人で買って出かけない。しかも最近のツアーは変なとこ連れてってくれるでしょう。高尾山でも自分で計画立てて登らなくちゃ、行ったことにならないと思うんだけどね〜。

  3. 上野俊一 より:

    「マヌケ共栄圏」いいですね。この指とまれって安倍さんに言われてもねぇ。何とどんな風につながるかは、もう個人の問題だから。人と人の問題だから。そのうち国境も県境くらいにならないと、不自然きわまりない。それからでいいんじゃないか、尖閣、竹島どうするなんてのは。

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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