松本哉ののびのび大作戦

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 「一揆」っていう言葉がある。これ、「百姓一揆」みたいに歴史の教科書なんかでよく聞いた言葉だけど、現代用語としてはあまり使わない。ちなみにこの言葉、学校で習った当時は「農民の反乱」みたいに説明されて終わっていたし、英語で言ってもRiotとかUprisingになり、暴動や反乱みたいに思われがちだ。しかし! 実はそんな単純なものではない。「揆」という字の意味は、「図る・企てる」みたいな意味で、「一揆」はみんなで何やら企てたり図ったりしてる状態のこと。暴動や一時的な反乱みたいに一瞬発生する騒乱とは違って、独自に新しく作る小さな社会のことだから、何十年と、やたら長く続くことだってあったのだ。そう、一揆とは、単に世を乱したりすることではなく、世を支配する謎の秩序に対抗して、自分たちの手で勝手に独自の秩序を作ってしまうことなのだ。暴動でも反乱でもなく、言ってしまえば「独立共同体」みたいな意味合いだ。で、その民衆独自の秩序を作る時に衝突が起こったから、その反乱的なイメージが残っただけで、長期にわたる場合は「超平和な一揆」っていう状態だってある。要は、支配者(当時だったら幕府など)の権力が及ばないところで勝手に独自の秩序を作ってる人々やエリアの事が一揆なのだ。
 ただ、世を牛耳る権力者からしたら、自分の言う事を聞かない独自の共同体なんか認めるわけにはいかないので、仮に現代に一揆が発生したとしても、「一揆」とは呼ばず「暴動」やら「騒乱」みたいな扱いになっちゃうはずだ。そのせいか、「一揆」って言葉は気付いたら古い言葉になってしまい、さらに80年代にはファミコンのゲーム「いっき」(怒った農民が反乱を起こして悪代官を倒すゲーム。これはこれで最高)なども登場したりして、なんだかマヌケな雰囲気も漂う言葉になってきた。う〜ん、もったいない。本来は結構いい言葉なんだけどな〜。

東京自治区に現れた第一陣はなんとドイツ人!
これから毎日のように謎の外人が現れるはずだ!!

 そう考えたら、今の日本社会ってやはり一揆的なものって少ないのかも。世に物申す系のものではデモなんかがあるけど、これも独自の社会を作ってしまうというより、政府や企業など誰かに対して抗議したり主張するっていう感じだから、一揆とはまたちょっと違う。あるいは本当に棍棒を振り回したり石を投げたりっていう大暴動があったとしても、それだけではただ歯向かって暴れてるだけだから一揆にはならない。ヨーロッパなどにはスクワットと呼ばれる謎の自治空間がたくさんあるけど、あれは一揆かもしれない。空き家や使ってない土地などを勝手に使ったり、時には激安の家賃で場所を手に入れ、自分たちの手で、お金中心で回ってる今の社会とは別のやり方で運営したりしている。建物ひとつのところもあれば、街のようになってるバカでかいところもある。大きいところなんかもう完全に一揆だね、これは。もしくは、かつての全共闘運動なんかで、大学を占拠して自分たちの手で新しい大学を作ろうとしてたのなんか、ある種の一揆かもしれない。ただ、それも一瞬で鎮圧されてしまったので、一揆は続かずに反乱で終わってしまった。もしくは、そんないかにも反体制みたいなものじゃなくても、今の経済システムと違う完全に独自ルールで運営してる小さなスペースやコミュニティなんかはある種の一揆だ。まあともかく、いい世の中にしたいと思っても、我々民衆レベルで全然自治能力がないのに、「いい世の中にしてください」と、全部お上にお願いするだけじゃ、なんだか全部人任せみたいでどうもみっともない。せっかくなので「今の世の中の感じ、なんだか納得いかないし、とりあえずこっちはこっちで勝手にやっちゃうよ〜(=一揆)」ってのをやってみたら面白いに違いない!!! それに、その上で世に物申したらより説得力があるはずだ。 

 …と、いうことで始まって、いよいよ開催目前となっているのが、もう知ってる人も多いかもしれないけど「NO LIMIT 東京自治区」というとんでもない計画。世の中、戦争だの貧富の差だの人種差別だのいろいろあるし、世界中どの国の政府もロクでもない。すぐ金持ち優先で貧乏人を苦しめるし、経済ばっかり優先して危険な事ばかり発生する。都合悪くなると近隣国と揉めて目を外にそらす。そんなしょうもないことにいちいち踊らされるのはもうバカバカしいので、近隣の民衆同士で死ぬほど交流して、自分らがやりたいことを全部やってしまおうって計画。そう、最近交流を深めているアジア圏のインディーズのミュージシャン、謎のアーティスト、変わったスペースを運営してる人などの発想ってすごい似てる。なんでもお金に換算されちゃうような価値観にも嫌気がさしてるし、バカげたルールや常識を押し付けられるのもコリゴリだし、みんな自由に表現して、自分の納得するやり方でスペースを運営しようとしてる。もちろんやってることも表現方法もみんな違うけど、実は似たようなものが根底にある。そんな奴らをみんな東京に招待して、1週間にわたる祭をやってしまおうという計画!! ライブから、映画の上映会、トークショー、展示まで、各種イベントも無数にあるし、実際、東京自治区にやってくる来日外国人(数百人規模!)には食事も宿泊場所も無料で提供され、夜は毎晩都内各所で世界各地で独自の地下文化を作ってるやつら同士による多国籍飲み会が繰り広げられ、各地のアンダーグラウンド文化のものが売られる屋台村もできる。ギャー、まさにこれは一揆だ!!

 準備はもう数ヶ月前から始まっているんだけど、これがまた本当に一揆みたいで面白い。まず、わざわざ海外から自腹で来てくれるような人たちにはご飯ぐらい食べさせてあげたいって事で、真っ先に米や食料の募集が始まった。すると、来るわ来るわ、日本各地から米が送られてくる。それどころか、味噌や野菜も集まってきている。東京で一揆が発生するぞとばかりに、応援してくれる地方の人たちから米や味噌が送られて来る。やばい! 江戸時代みたいだ!! 知らないけど! あと、お金もそう。江戸時代にしろ室町時代にしろ、一揆を起こす時には金の事なんて二の次だ。もう腹に据えかねて、先に一揆が決まってから金の算段を立てる。足りようが足りまいがそんなの知ったこっちゃない。それに、採算の合う一揆を目指すなんて話聞いた事ない。ってことで、何人来ようが全員無料で泊めるとか、毎日無料のご飯を出そうとか、無理に決まってるような事が真っ先に決まるので、大赤字必至! すると、ちらほらと資金を提供してくれる人も出てくる。いやー、これは本当に嬉しい。ただ、こんな無謀で飛ばしまくってる荒技の計画に理解を示して資金提供してくれる人なんて、なかなかいない。しかし、懐具合を気にする一揆なんて恥ずかしい事はできないので、こうなったら腹をくくるしかない。ええい、コンチキショー!! どうにでもなりやがれ!!
 そしてさらに、いろいろなお店や学校、スペースを運営してる人などから、「面白そうだから何か協力しますよ」と、声をかけてくれる。うわ~、助かる!!! 直前になって海外からも新たに「参加したい」というバンドが連絡をくれたりもする。いや〜、当初は無一文の状態から大風呂敷を広げまくって始めたものの、なんだかんだといろいろ広がってきて、いまや当初の予想をはるかに上回る規模に! これはすごいことになりそうだ!!!!

 継続した自治社会! 別に本当に反乱を起こして独立した社会を作るわけではなくても、「あれ? 自分たちで社会を作るって、意外とできるのかもしれない」という気持ちをみんなが持つ事が大事。どんなに小さな一揆でもいいし、大失敗しまくってもいいから、いろんなところでいろんな人が一揆を起こしまくる事が大事。将来どんな時代の流れが訪れようと、どうにもこうにも腑に落ちなくなった時、「ええっ? そんなんだったら、こっちは勝手にやっちゃうよ!?」と、堂々と言えるようになりたい。
 そんなことで、いよいよ始まる東京自治区、いや、東京一揆。誰も経験した事ない前代未聞の一週間になる事は間違いないので、大成功するにしろ大失敗するにしろ、超意義深い経験になるはず。これは実際に見届けるしかない!!!!! やいやい、一揆だ、一揆! いや〜、景気よくなってきた!

***

「NO LIMIT 東京自治区」
2016年9月11日〜17日

http://nolimit.tokyonantoka.xyz/

 

  

※コメントは承認制です。
第94回 前代未聞の地下文化大規模交流イベント「NO LIMIT 東京自治区」いよいよ迫る!」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    教科書で習った「一揆」は、ちょっと怖そうなイメージだったけれど…一揆=権力の及ばないところで、自分たちで勝手につながり合って、小さな自治社会をつくること。そう考えると、なんだかワクワクしてきます。まずはかなーりカオスな公式サイトをチェックして、面白そうなことに乗っかっちゃうもよし、米や味噌やカンパでサポートするもよし、自分で何か始めちゃうもよし。あなたの「一揆」はどこから始める?

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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