松本哉ののびのび大作戦

選挙前日の山本太郎イベント。高円寺駅前広場が全部人で埋まってた!

 自民党バンザーイ、バンザーイ! いや〜、勝ちましたね、自民党様。他の追随を許さぬ約300議席獲得で、選挙圧勝!!!!!! さあ! …てことで、いよいよ暗黒の日本社会の到来〜! いやこれはすごい! よーし、金持って来〜い! 地主万歳! 原子炉持って来い〜!! 農薬を大量に撒くしかない!!!
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 さて、金持ちと権力者優先の暗黒社会が訪れるといっても、そう簡単にすり潰されるわけはない。このマガ9読者を含め、日本社会の各地に散らばってウロウロする我々は、何を隠そう、貧乏人、大バカ、役立たず、大マヌケ、ロクでなし、オッチョコチョイのスットコドッコイ、穀潰しのボンクラ、うっかり八兵衛に与太郎である。そう簡単に言うこと聞けるわけがない。というか、人の言うことを聞かない技術だけを磨いて来たようなものだ。

 さあマヌケな貧乏人の諸君。いよいよ暗黒社会が到来したので、実力の発揮のしどころだ! ってわけで、今日はちょっと作戦を考えてみよう! 意味の分からないやつらの恐ろしさを知らしめてやるしかないのだ!!!!!

こっちは序盤戦。毎回駅前が人で埋まってた!

ゴマすり

 金持ちや権力者はゴマすりに弱い! たぶん、アメリカとか中国は完全に実力社会なので、ゴマをすったところであまり効かなそうだが、日本はいけるに違いない!

 来たる暗黒の日本社会は役人も威張りだすはずなので、少しでも税金を払ってなかったり、歩きタバコをしたり、ゴミの分別を間違ってしまったりしたら、遠くから「コラ〜!」と怒鳴りながら、ノッシノッシと巨漢の役人が歩いて来るはずだ。これは怖い! 言っておくが、間違っても楯突いてはいけない。ここはひとつ「おお、旦那! 相変わらず男前ですね〜。いや、こりゃかなわねえですな〜」と、一挙に総攻撃をかけ、敵が油断してニヤっとしたところで「今日はどちらまで? ええっ、税金の取り立て? 払ってない奴がいる? ふてえ野郎がいますね〜、いや、もう怒った! お供しましょう」と、畳み掛け、タイミングをくじいた隙に「おっと、いけねえ。急用を思い出した! すいません、かわりの奴をすぐ寄越しますんで、ちょっと失礼!」と走って逃げよう。これで必勝間違いなし。

 もちろん、警官も強気になるので、夜中に自転車なんかに乗ろうもんなら、もう一巻の終わり。警官と目が合った瞬間に拳銃を向けられ「動くな!」と、一喝されるようになる。こんな時、「なんだよ、家に帰るだけだよ」などと生意気な口など聞こうもんなら、即座に銃口から火を噴き、お気に入りの愛車に銃弾を5、6発打ち込まれ「防犯登録を確認させろ!」と言われることになる。万一、これが友達のチャリだったり、盗んだ物だったりしたら、もちろん射殺は免れない。こんなときは「お、これはこれは! また冗談やめてくださいよ。おや、今日もシャネルの警棒持って、いや〜さすが署長!」と、敵の気勢をそぎ、すかさず「やっぱり杉並署ですねえ〜。隣の中野署のやつらなんか、腰巻き一枚でこん棒持ったのがドロボー追っかけてましたよ。いや、さすがは紳士な杉並署だなぁ…」と、ライバル警察署の悪口を言って、縦割り行政に付け込んだ攻撃をして切り抜けよう。

 あ、当然ながら連立政権を組む公明党にもムダな抵抗は禁物だ。暗黒時代には冤罪なども多発するので、あらぬ罪を着せられて追っ手に迫られているときなどがあったら、毎朝「ナンミョーホーレンゲキョー」とお題目をわざと近所に聞こえるように大きい声で唱えたり、近所の廃品回収から池田大作先生の全集を丁寧に拾って来て、ここぞとばかりに二宮金次郎級にその本を読むフリをしながらゴミ拾いをしたりして、なんとか切り抜けよう。無事切り抜けたらまた感謝の意を込めて廃品回収に出せば、次の人が拾ってくれるはずだから安心だ。

ワイロ作戦

 強権にワイロは付き物。上意下達の強力な支配体制が敷かれると、たいていワイロが効くようになる。特に自民党のような富国強兵&弱肉強食的な斬新な発想の社会になったら民主主義は後退するので、当然役人の意識も同時に後退して、ワイロに対する考え方も寛容になるはずだ。これはビッグチャンス! …とはいっても、よくよく考えたら我々に金がある訳がない。これは困った。

 ということで、そういうときは香港か上海あたりに飛び、スーパーコピー職人にニセ札作りをお願いするという手もある。彼らの技術はハンパじゃなく「何でも作るアルヨ」と登場する職人に大量発注! ゆくゆくはこのニセ札貿易が活発となり、両国の経済を支えるようになって、険悪となった日中関係も関係修復! さらには、海外のメーカーに追い越され、業績不振に悩む日本家電メーカーなどもニセ札生産に乗り出し、世界に誇る日本の技術力を発揮して景気回復も実現するかもしれない。これはすごい!! そして、最終的にはニセ札=本物になり、夢のような世界が訪れるに違いない!!!!(深く考えないように)

日本文化擁護作戦

 自民党政権になったら当然ながら、やみくもに「日本独自の文化=世界最高」と、言わなければならなくなる。ケシカラン外来文化などはもってのほかである。我々も率先して独自の伝統文化を活用していかなければならない。中国伝来の漢字なども使っている場合ではない。よし! 漢字中止! 全部ひらがなだ!

 いやー、よかったよかった。これであんしんしてもじをかける。へんかんのひつようもないし、じみんとうににらまれずにもすむ。もうかんじはふようだね。いやよかったよかった。…あれ、ちょっとまてよ? よくかんがえたらひらがなも、もとはかんじをくずしたもの。ようはかんじのひっきたいだ! これはいかん! あっ、そうだ! にほんにはゆいいつおやぶんのくにがあった! じみんとうもあたまがあがらないあめりかだ! よし、あるふぁべっとだ。これならおこられまい! ざまあみやがれ、こんちくしょう!

 Douda maittaka! Korekara zenbu arufa betto de kaite shimaou. Iya, seiseishita ne honto ni! Mou kanji nanka tsukawanai mon ne! Are? Demo nandaka yatara to yominikuku neeka, kore? Chiki syou! Madorokkoshii na~.

 やめた!!!! 駄目だこりゃ! やっぱり漢字は使おう!

重税対策

 暗黒時代は重税は当たり前。消費税は手始めに10%とか11%とか言われてるけど、ここは先手を打って300%ぐらいは見据えて覚悟しておかねばならない。そう。商品の3倍の税金がかかるから、例えば1000円の物を買ったら4000円払うということだ。う〜ん、こ、これは手強い! ということは、これまで通りに暮らすには、店で4分の1に値切らなければいけないということだ。値切り後進国の日本としては厳しい闘いかもしれないが、ここはやるしかない。ちなみに値切り先進国は中国とインド。せっかくなので、先人たちの技術をちょっと紹介してみよう。

 中国式は「これ、100円でいい!?」と、ズバッと10分の1の値段を大声で迷いなく言い、勝負をつけにかかってくる。で、「だめ? じゃ、150円ならいいでしょ!? 2個買うから!」「じゃ、170円!!! 全部買うよ!」と、眉間にシワを寄せて矢継ぎ早に手の内を探り出す。しかも勝手に100〜300円あたりが勝敗ラインのようなムードを作ってくる。店側も少しずつ下げて来て折り合いがついてくる。やたらとテンポが速いのが特徴。店側がグズグズしてたり、折り合いがつかなかったりしたら、突如「この店高すぎだよ!」とか「バカヤロー! ボッタクリ!」みたいに悪態をついて去っていく。とにかく決断がせっかち。畳み掛けるスピード重視の作戦だ。

 インド式の場合はこう。「チョット、これ、この部分がヨクナイねえ」などとやたらと細かいところを言い出して、まわりくどい。沈黙タイムなども多用し、店員をイライラさせたところで「コレ、ヤスイ、ダイジョブ?」と、急にカタコトになり(ズルい!)勝負に出てくる。場合によってはなかなか値段交渉が始まらず、なにが目的なのかわからないこともある。世間話かと思わせていきなり値切りだしたりして、かなり手強い。「それは絶対ムリです!」と、引導を渡しても、「あ、そう?」と、トボケた返事をして、他の商品を見たりして時間を稼ぎ、突如「デ、イクラ、ダイジョブナノ(カタコト)?」と、奇襲をかけてくる。根負けを引き出す戦術。

 ま、ともかく、この二大流儀を中心として、世界にはいろいろな作戦があるので、我々もそろそろ備えなければいけない。ちなみに、日本にも東京下町(もしくは大阪)のおばちゃん式の「いつも買ってるんだから負けなよ」「お客さん紹介するから〜」「先代はよく負けてくれたのに」などの情に訴える作戦がある。ただ、残念ながらこの手法では国際競争力上難しいかもしれない。

 余談だけど、この値切り作戦が浸透していけば、いちいち買うのに時間がかかるから、スーパーやコンビニ、デパート、電気屋、コインランドリー、自販機、タバコ屋、銀行など、街中どの店に行っても値段交渉で長蛇の列になり、あたかも景気が回復したような活気であふれて楽しいかもしれない! あるいは、確定申告の時に税務署で大量の人が値切りだして、異常にザワザワ騒がしくなったりしても面白い。しかも、暗黒役人は独裁権力を持っているので「ええい! うるさい!!! 全員3割引にするからおとなしくしろー!!!」なんてことになるかもしれない。これはいい!

惨敗したのに微動だにしない宇都宮氏。やたらケロっとして「たいしたことないんですよ」

土下座作戦

 問答無用の暗黒時代なので、権力は強大。しかも、いろいろとくだらない、いや、大切なルールも増えてくるだろうから、不遜な態度は禁物。今こそ日本人の伝家の宝刀=「土下座」を改めて見つめ直すことが必要なのではないだろうか。街の英会話学校みたいに続々と講座をオープンし「これでバカな権力者もニッコリ! 土下座講座」とか! あるいは、島津久光みたいな人が登場しかねない時代なので、外国人向けの講座も重要だ。その名も”No Dogeza No life!”とか”Dogeza Now!”もオープンしてみよう! 「電車内ケータイ禁止」のような日本独自ルールから外国人を守るためにも、これは大ヒット間違いなしだ! NHKとかで「朝の土下座」とかもいいかも!

秩序大作戦!

 自民党の憲法改正案では基本的人権より秩序の方が優先することになっている。う〜ん、これまたすごい時代! デモなど言語道断。ドライバーの皆さんの迷惑になり、交通の秩序を乱すから禁止。駅前や公園などで楽器の演奏や演説なども、通行人の会話の秩序を妨げるので当然憲法違反。朝の通勤時間にSuicaでエラーを出しても逮捕。公衆トイレで長かったり顔を洗ったりする行為も秩序が乱れるから厳禁だ。

 しかし、よく考えたら、「雑多」なものより、極端な「秩序」の方がはるかに不気味だ。よし! ここはひとつ、秩序デモしかない! 新憲法下では秩序のみが許されるのだ。バンザーイ、バンザーイ! とりあえず全員スーツ着用で、住宅地から駅までデモ行進。行進も、歩くと誰かが乱れて違憲状態になる恐れがあるので、直立不動でベルトコンベヤーで行進。あるいは、全員ユニクロの服を着用して郊外のイオンまで全員笑顔で行進。う〜ん、これは怖い! 権力者も「これはさすがにヤバい!」と、ビビるに違いない!

 これは最強だが、よくよく考えたら、訳の分からない有象無象にこんな芸当が出来る訳がないので、やっぱりやめた!

 さて、こんなくだらない文章をここまで読んでしまったキミ! ヒマ人にもほどがあるぞ! しかし、我々には世界最強にして最も簡単な抵抗手段=「人の言うことを聞かない」という術を持っている。くだらない政府が誕生したらクモの子を散らすように逃げ散り、いい政府が誕生したらそれを応援すればいいだけの話(よく考えたらいい政府なんか出来たためしがないけど…)。そう考えたら、仮に国会が全議席自民党だろうと、世の中の政治家が全員石原慎太郎だろうと、実はどっちでもいいのかもしれない! こっちの政界への関心度が変化するだけの話。

 あ、せっかくなので、最後に、いま進行中の実際に超便利な作戦を少し紹介して終わろう!

世界地図作戦

 最近、ここ数年で日本の中にも謎のスペースはだんだんと増えている。訳の分からないカフェだったり、雑貨屋だったり、イベントホールだったり…。こういう場所にいろんな面白い奴らが集まって来て、どんどん交流の輪が広がりまくって来ている。こんな場所がここへ来てなぜか急速に拡大して来ている。ってことで! 「せっかくだからこういう場所を全部載せた日本地図を作ってしまおう!」という作戦がここ最近進行していて、データ集めが始まっている。コレがあれば、日本中をウロウロしていても、なんだかんだと知り合いの知り合いとかに行き着いたり、共通の話題があったりするような、とんでもないネットワークがいとも簡単に出来てしまう。ま、『TOKYOなんとか』(←あっ、偶然このときも選挙の時期。自民党政権が崩壊して民主になるとき。うーん、このときも「興味ねえ」と文句言ってた!)の日本版と思ってもらえればいい。う〜ん、コレは便利だ! という話で盛り上がっていたら、なんとお隣、韓国の友達も、「あれ! それ私たちも似たようなこと考えてたところだよ! せっかくだから日韓地図にしない?」という。おお、いいね。確かに韓国も李明博政権になってからは、謎の大バカな役立たずショップなどは鎮圧の対象で、維持は大変になって来ていると聞くから、コレは重要。さらに! 台湾の大バカな連中にもその噂が伝わり、「あ、台湾も最近変な場所が増えて来たから、うちらもその地図に混ぜて〜」と言って来た。おお、いいねいいね! そう言ったら、最近は香港の奴らとも仲がいいので、絶対この地図に一枚噛むでしょ。こうなったらひとまず東アジア地図を作っちゃおう〜!! ってことで、店名、住所、連絡先、店の概要、店主(もしくはキーパーソン)の名前、メシにありつけるか、泊まれるかどうかなどを記載したとんでもないオルタナティブ地図が着々と完成に向けて進んでいる。
 こんなのが完成しようもんなら、もうこっちのもの。日本がクソつまらない社会になって来ても、どこにでも居場所があるので、行ったり来たりして遊べる。逆に韓国の大統領選の結果次第では、韓国をウロつくロクでもないマヌケな仲間たちが大挙して日本や台湾に避難がてら遊びにくるかもしれない。さらに、最近は東南アジアにも面白い奴らがいたり、とんでもない場所があったりして、仲良くなって来てるので、この地図もどんどん拡大していくに違いない。ちなみに、ヨーロッパ辺りの連中やアメリカの連中も似たような一覧表作ってたり、大バカスペースのネットワークがあるので、コレと連結なんかさせたら、いよいよ大変なことになってしまう!

 うーん、これうらやましいでしょ! ま、完成まではもうちょっとかかると思うけど、楽しみに待っててくれ!!!!

 というわけで、いよいよ忙しくなって来た! 大変だ大変だ!

めちゃくちゃテンションが高い山本太郎氏。投票日の「素人の乱TV・開票速報」に緊急出演。

【スケジュール】

12月23日(日)
高円寺・北中通り商店街
もちつき大会

新宿アルタ前・福島支援RIOT
午後から、アルタ前特設ステージでライブ・トークなど
パンクロッカー労働組合・松本哉ほかたくさん!

12月27日(木)
Sound across the line
open 18:00 / start 19:00 / @地球屋(国立)
トーク:松本哉(司会)、コヌー(釜山Agit・この間家が爆発した人)、アコー(香港の地下ライブハウスHidden Agenda)
ライブ:Seongmin(釜山)/SAWADA/Son z(釜山)/nacca/Negi+菅原雄大/Ahkok(香港)+Jungmin(釜山)

 

  

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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