松本哉ののびのび大作戦


 最近仲良くしている、釜山のアートスペース=Agit界隈の人が「イベントやるから何かブース出して」と、また例によって漠然とした感じで招待してくれた。「何したらいい?」と聞くと、適当に高円寺の雰囲気を出してくれたらいいと言う。う〜ん、これはいよいよ難しい注文! ま、要は素人の乱的に何かやってくれということかな?
 ま、順当に行けば友達が作ってる物とか作品、CDなんかを売ったり、素人の乱の活動の紹介なんかをしたらいいのかもしれないけど、どうもそれじゃつまらないし、そういうブースって、たいていよっぽど話し込まないと理解されない。う〜ん、なんかないかな・・・。

 と、思っていた矢先! なんだか知らないけどまた日韓の政府がくだらないケンカをしはじめた! 
 韓国の李明博大統領が、何を思ったのか用もないのに突然竹島に上陸したと思ったら、今度は日本政府が国際機関に訴えたりした。そしてお互いの国のメディアでは連日「相手がヒドい」と報じている。言うまでもないが、領土問題ってたいていはお互い言い張っちゃったもんだから、引くに引けなくなってて、永久に解決されないパターンが多い。
 もっといえば、これもちろん本当のケンカではなく、どうせ、お互いわかってやってる茶番劇の一種でしょ。自分のところで都合が悪くなったら近所の文句を言うというのはお決まりのパターンで、毎度の話。今回もどうせ、お互いロクでもない政策のおかげで支持率が急落している政権同士の利害が一致したってところだろう。

野田「李先生、景気はどうですかい?」
李「いやあ、パッとしませんねえ。野田の旦那も家まで囲まれてるそうで」
野田「いやまったく。李の大将、そろそろひとつやりましょうや」
李「おお、そりゃ願ってもない。一丁派手にやらかしましょうか」
野田「いいですなあ。ここはひとつ、例の小さい島に上陸なんていかがですかね」
李「またまた、野田の師匠も大きく出ますなあ」

 ぐらいの密談があってもおかしくないぐらいだ。お互い民衆には苦しんでるから、意識をそらす格好のネタだし。・・・で、例によってマスコミも大喜びの隣国叩きの応酬が始まり、例によって広告代理店級のくだらない大騒ぎ! 挙げ句の果てには駐韓日本大使までが引き揚げになったという。
 こういうとき、外国人の友達がいなかったりする人はコロッとそのプロパガンダに騙されて、マヌケにも本当に怒り出しちゃったりする。まったくもう〜、日韓友好、いや、世界の友好関係にとって本当に邪魔だよな〜、こういう話って。

 よしきた!!!! 引き揚げたんだったらこっちが行くしかない。よし決まり! 釜山のイベントでは「日本大使館」を出そう! で、それならばパスポートも発行しまくった方が面白いな! 大アホな国同士は勝手に揉めてるけど、こっちは仲がいいんだから、「どんどん日本に遊びにきて〜」と言いまくって来るしかない! ってことで、釜山行きの数日前から急遽パスポート製造を開始! 万全の準備をして韓国・釜山に向かった!!

マヌケ事件再来! また入国拒否の危機!

 2年前、韓国でG20なる謎の国際首脳会議が行われていたとき、そんなことは何も知らずに韓国に遊びにいこうとしたら、日本でデモをやりまくっているのがバレており、テロリストと間違えられて入国拒否されたことがあった! ま、その後は問題なく、2度ほど韓国にも遊びに行ったことがあるので大丈夫だろうとは思っていた。が、今回はパスポートを100冊以上持っていて怪しすぎることもあり、一抹の不安があった。

 で、釜山空港に着き、入国審査。 例によって入国審査官にパスポートを出してはんこを押してもらう。感じの良さそうな女性審査官。普通にポンと押してくれたのだが、そのまま謎のモニターを見た瞬間、動きが止まる!!! 嫌な予感! 約2分ほど画面を真顔で凝視した後、片手に持ったままだった入局許可のはんこを置き、別のはんこを取ってまたポンと押す!!
 入国許可取り消し!!!!!!!! やられた!!

 で、ボスっぽいオッサン審査官が駆けつけてきてああだこうだと言い始める。隣のカウンターにいた若い男性審査官も口を挟む。なんだなんだ!? そして、「ちょっと、アチラの事務所へ」 ・・・終わった!!

 事務所という名の取調室に連れて行かれ、またオッサン審査官は謎のモニターを見始める。「事務所」というけど、この部屋の隣には牢屋があるのを俺は知っている。おいおい、勘弁してくれ〜!
 そこへ若手の審査官たちも珍しいのか興味津々で集まってくる。う〜ん、2年前と同じパターンだ。
 モニターには2年前の入国拒否の履歴が出ているが、その当時の国際会議で厳戒態勢がしかれていて騒動起こしそうな人を追い払っていた云々は、もちろん書いてない。完全に不審人物扱いだ。

 そう、ここから先はもう審査官の胸三寸であることは経験上知っている!
 よっしゃ、そう来るならこっちにも考えがある。こちとら生まれも育ちも大江戸=大東京。江戸町人直伝(?)の得意技の発揮しどころだ! 我々はうまくごまかして切り抜けるという、とんでもない技術を持っている! 悪代官が出て来ようと、奉行所が恐ろしかろうと、家でカミサンが圧政を敷こうと、何も恐ろしくはないのだ! かかってきやがれコンチキショー!
 よし、戦闘開始! 先手必勝だ! 地獄を見せてやる!!!!

 「メガネがカッコいいですね〜」と、褒めてみる。
 「・・・」無言でモニターを見つめている。しまった、失敗だ!!! なかなか手強い!

 すると、早くも敵の反撃! オッサン、片言の日本語で「アナタ、2年前、仕事ワルイですか?」と聞いてくる。商売繁盛してるかってこと? 「大きなお世話だよまったく。儲かってなくて悪かったな!」と思ったが、ここはひとつ心証を良くしておかねばならない! 「はい。あまり良くないですね」と、答える。どうだ、恐れ入ったか!

 いや、ちがうちがう! オッサンの言いたいのは、悪い仕事してたかどうかってことだ! あっ、そうか! 密輸とか麻薬とかってことか! 騙された!
 「あ、いや。仕事はとてもいいです」と、すかさず言い換え、九死に一生を得る。いやー、引っかかるところだった。オッサン、お主なかなかやるな!

オッサン

 しかし、相変わらずボス級のオッサン審査官がモニターの前に座って眉間にシワを寄せながら画面を見ていて、その周りを5〜6人の若手が立って画面を覗き込んで、何やらブツブツ相談している。で、その後方のベンチに一人ぽつんと座らせられている自分。う〜ん、これは心細くなってきた。
 たまに、「エ、エ、エッヘン!!」と、咳払いなどをしてみて注意を引いてみるが、奴ら全く動じない。たまに、一番後ろに立っている最若手の兄ちゃんがチラッとこちらを見るが、それだけ。あまりにも当事者をほったらかしにするので、たまに「あのぅ〜」と、おそるおそる声をかけてみるが、オッサンは画面に集中してこっちには興味なし。クソッ!

 よーし、奥の手だ。釜山の友達から「もし何かトラブルになったらこれを見せろ」と言われて持たされていた、イベントへの招待状を見せる。ええい! この招待状が目に入らぬか! 頭が高い、頭が高い!! しかしオッサン「なんだこれ?」と、部下達に見せる。なんだ、意外と効かないぞ!
 「このイベントに呼ばれて来たんですよ!!! 結構大きい音楽やアートのイベントですよ、これ」と、わざわざ説明する。すると、オッサン、ようやく老眼のメガネを外して凝視した後、「じゃ、オマエは何なんだ。アーティストか?」という。事前にトラブルになったら「参加アーティストだと言い張れ」というので、言われた通り「当たり前だ。アーティストだ」という。するとオッサン、急に目が輝き「ほんとか。どんなことやってるんだ?」と、やたら興味ありそう! ヤバい、話が違う! 「いや〜、ちょっと説明が難しい。変わったもの作ってるんですよ〜」とごまかすが、「そうか、で、何で作ってるの? どんな感じ?」と、しつこい。おい、オッサン、さっき日本語片言だったクセに、こういうところだけ流暢に食いつくな! ここは深入りは禁物だと悟り、「あ、いや、間違えた! ミュージシャンだった!」と言うと、「なんだ、そうか」と興味なさそうで、プイッと向こうを向く。いやー、危ない危ない。で、助かるかと思ったら事態は進行しない。「ところで、2年前の仕事は?」と、また元に戻った! おい! もう、わかったわかった!  
 「あっ、間違えた! 物書きだった。この本読んだ方がいいですよ」と、韓国版の『貧乏人の逆襲!—タダで生きる方法』をオッサンに手渡す。ええい、煮るなり焼くなり好きにしろ!
 オッサン、本を読み始める。長い沈黙の時間…。さあ、これ、吉と出るか、凶と出るか?

 突然、ニッコリと満面の笑みで「ハイ」と、本を渡してくる。
 よし勝った!!!!
 「モウ、イイデス。アナタ、ダイジョウブ」と、また片言に戻り、入国許可!!!!
 いやー、スリリングな入国!

日本大使館、ついに釜山に開館!

 さて、なんとか入国の許可をしてもらい、韓国に入国成功!(←何も悪いことしてないのに!)さーて、今度はこっちが入国ビザを押しまくる番だ。
 まずは、釜山の本拠地の、謎のアートスペース=Agitに行く。例によっていろんな人が集っていて、意味不明の飲み会に巻き込まれ、危険な韓国焼酎をメインとしたいつも通り韓国の洗礼を受け、とりあえずはゴキゲンに睡眠!
 そして、翌日からいよいよ日本大使館作り! 会場はビーチでステージなども超巨大で、相当でかいイベントだった! うひゃー、これはいよいよちゃんとブース出さないと!!
 まずは、ブースに「素人の乱21号店・日本大使館」という看板を出し、「日本大使館・パスポート無料配布中!」とハングルで書いた看板も出す! もうこの時点で既にマヌケなんだが、日本で量産してきたパスポートを山積みにして、配りまくる!

日本大使館を防衛するのは、クラウンアーミーの日韓共同軍。これは無敵だ!

 あ、一応言っておくけど、パスポートと言っても単に偽造パスポートを作ってバラまく訳ではない。そんなことしたら一瞬で捕まるし、そんなに面白くない。今回作ったのは、なんと前代未聞の「世界万能パスポート」という万国共通旅券! これはすごい!
 そこで、東京のビザを発行しまくる。で、このビザには、東京の知り合いの店の住所のリストを書いておいて、このパスポートを持ってその店に遊びに行ったら、それぞれいろんなサービス(コーヒー100円、チャージ無料、ビール1杯無料など)が受けられる! そして、江上くんという福岡のアート系、カウンターカルチャー系の場所をウロウロしてる人も来ていたので、福岡ビザも発行! ついでに香港の有名な非合法ライブハウス=Hidden Agendaの人も来ていて「うちもビザ出すよ!」ってことになり、ワンドリンク無料の香港ビザも発行! いいね、なんだかだんだんパスポートらしくなってきた!

これが噂の「世界万能パスポート」! これでどこへでも行けてしまう(はず)!

 これがまた大人気! ブースに座ってると、みんな「ほしいほしい」と、パスポートをもらいに来る。いいね、国境ってこれぐらい軽くなったら楽しいね〜。で、いろいろビザを発行したり、発行者のサインをしたり、入境許可のハンコを押したりするから、意外と時間がかかる。この時間がちょうど良く、雑談したり「東京にはこんな店があるから遊びにきた方がいいよー」などと説明できたりするから、仲良くもなる。で、めでたくパスポートを発行するから、こりゃもうもらった方は来たくなる。みんな大喜びで、ノリのいいやつなんか勢い余って「じゃ、○月に行きますよ!」なんて言う人も続出! うーん、いいね。
 イベント自体は2日間で、数千人規模でかなり盛大にやっていた。ビーチで行われる音楽フェスだし、もう遊ぶしかないという感じ!
 しかも釜山市もたくさんお金を出しているので入場無料! どうやら、文化・芸術に使う予算をたくさん取ってあるらしい。うん、これはいい使い道だね〜。おまけに、近くの大学の寮が開放されていて、出演者やブース出展者など遠方から来てる人は無料で泊まれる。いや、太っ腹! 国もいろんな所から来ていて、日本、香港のほかにも中国、タイ、アメリカ、ドイツなどなど、いろんなところから集まってきていて、いいイベントだった。

イベント自体は数千人規模の超巨大イベント! ビーチ沿いにステージが何個もある

とりあえず秘密アートスペース=AGITにて! 右下は居心地がよすぎて気付いたらAGITの主と化している、謎の日本人=マリオ氏

パスポートをむやみやたらと発行する大使館業務は多忙を極めた!

 そんな感じで、くだらない日韓政府を尻目に、またも国籍不明の奴らが集まりまくって遊びまくって来た。

8月29日(水)
超巨大イベント! 入口のドア修理大会
素人の乱16号店「なんとかBAR」にて

8月29日(水)
「インチキショップの続け方」
対談:小鷹拓郎×松本哉

19:00~ 野方・こたか商店

 

  

※コメントは承認制です。
第65回 素人の乱、釜山に日本大使館を開設!」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    今回の「鈴木邦男の愛国問答」でも指摘されているように、国民の不満を逸らすために外国の脅威を強調し、「愛国心」を煽るのは、落ち目の政治家が使う常套手段。
    そんな使い古された手に引っ掛かってるより、勝手に「人」と「人」で仲良くなっちゃってるほうが、ずーっと楽しいし有意義だ! と思うのです。
    ご意見・ご感想をお寄せください。

←「マガジン9」トップページへ   このページのアタマへ↑

マガジン9

まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

最新10title : 松本哉ののびのび大作戦

Featuring Top 10/47 of 松本哉ののびのび大作戦

マガ9のコンテンツ

カテゴリー