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レポートno008

  太平洋戦争開戦の日、12月8日に「非戦を選ぶ演劇人の会」のピースリーディングが行われました。550人が入るホールはびっしりの満員。“非戦”という気持一点で、文字通り手弁当で集まった演劇人や音楽家たちが、忙しい合間を縫って作り上げた一晩かぎりのリーディング。張り詰めた空気の中、俳優たちの発する言葉が、いつまでも心に響く余韻の残る会となりました。
  第1部のリーディングは「イラク、パレスチナ」(台本構成=篠原久美子、関根信一)。岸田今日子さん、根岸季衣さんらが出演し、今も途絶えることのないパレスチナの悲劇についてリーディングが行われました。全世界で絶えず起こり続ける、戦争の集約がパレスチナにある。言い換えればパレスチナ問題が解決すれば、世界平和の道が開かれる、とも言われている奥深いこの問題について、静かに悲しみをたたえながら語られていきました。

  第2部のリーディングは「日本の戦争」(台本構成=渡辺えり子)。太平洋戦争前夜から戦時中、そして終戦直後、そこでは人々がどのようなことを考え、行動し、泥沼にはまっていったかを、軍部、マスコミ、文化人、市井の人々の言葉を通じて描き出されていきました。麻丘めぐみさん、川原亜矢子さん、毬谷友子さん、吉田日出子さん、そして渡辺えり子さんらが情感たっぷりに語ると、60年前の空気が再びここに流れ込んだように、当時が再現されていきます。開戦の高揚、熱狂、不安、悲しみ、絶望、敗戦、そして平和への誓い。1時間という短い時間の中に見事に凝縮された魂のことばたち。

  最後、渡辺えり子さんが『新しい憲法のはなし』の引用を力強く読み上げます。心身に深い傷を負った日本国民が、どんなにこのことばに安堵し、生きる望みとして受け止めたことだろうか。当時に思いをはせると、今、憲法を変えるという愚行によって、彼らの希望を踏みにじろうとしていることへの、恐ろしさとふがいなさに、気持ちが泡立ちます。

  リーディングの他でも1部と2部の間では、相澤恭行さん(PEACE ON)、渡邉修孝さん(米兵・自衛官人権ホットライン)による、イラクの現状と支援の実際、そして自衛隊の置かれている状況についてお話があり、古居みずえ監督のドキュメンタリー『ガーダ 〜パレスチナの詩〜』の予告編の上映と古居監督のお話、イラクのファルージャの惨状を伝える『ファッルージャからの証言』の一部上映(制作:アル・キターフ芸術プロダクション/2005年)、そしてエンディングでは、沢田知可子さんによる歌と、非常に内容の濃い充実した会でした。

  ところで、第2部の冒頭では、イラクで劇団を持つ、イラク人のアナスさんがパントマイムを演じながら次のような言葉が語られました。
  「この土地(イラク)に黒い油−石油が無ければ良かったのにと思うようになりました。石油がなければ侵略者はこなかった。石油を、平和な生活と引き替えませんか? 壊された我が家と家族、友達を返してください。イラクの子供たちが夜安らかに眠れるようにしてください。」 パレスチナもイラクも、太古より素晴らしい文化が育った豊かで肥沃な土地。その人々が文化を奪い取られ、住む場所を追い出され、流浪の民となり、世界から疎まれるような目になぜあわなければならないのか? 彼らの叫びを自分のこととして、受け止め考えていきたいと思いました。

  さて、この「非戦を選ぶ演劇人の会」では、ピースリーディングを定期的に続けています。実行委員が交代で、台本構成を担当されているということですが、今回「太平洋戦争」を担当された渡辺えり子さんは、次のように語ってらっしゃいました。
  「私が次にやりたいと思っているのは、口がきけない動物を主人公にしたものです。青紙が来て戦場に連れ出され、酷使されて殺された馬。放たれ野犬になった飼い犬たち。動物園で餓死させられた象など。戦争中に殺された動物たちの資料や証言を集め、来年の8月にやりたいと思っています。母親と未来を生きる子供に向けて作りたいのです。」

  先の戦争では、動物たちは人間の都合で一方的に殺されていきました。言葉を持っていたら、どんなことを語りたかったのでしょうか?
  動物に弱い私としては、とても直視できないかもしれませんが、きちんと見つめ受け止めたいと思っています。
thanks1


「非戦を選ぶ演劇人の会」のホームページはこちら。
http://hisen-engeki.com/
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