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2011-01-19up

「マガ9学校 第5回」

2011年1月15日(土)15:00〜17:30
@カタログハウス本社地下2階セミナーホール

記者会見は誰のもの? ~ゲリラ記者、「ソーシャルメディア」で「マスメディア」を討つ!~

講師:畠山理仁さん(フリーランスライター)×岩上安身さん(ジャーナリスト)

2009年、「記者クラブ」以外のフリーランスのジャーナリスト、ライターらの働きかけによって、「記者会見オープン化」へのブレイクスルーが図られ、2010年、次々と各省庁のオープン化がなされました。しかしここにきて、新たな問題が勃発してもいます。さてその問題とは? 一方、現実的にはフリーランス記者やネットメディアは、ニーズがあったとしても「記者会見」に出席し、その記事を発表するだけでは「食べていけない」という問題もあります。どうすればいい? などなど、2011年のスタートにふさわしい話題満載、飛び入りゲストもあり、でお届けしました。

畠山理仁(はたけやま・みちよし)1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。現在「永田町記者会見日記」を連載中。

岩上安身(いわかみ・やすみ)1959年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、出版社(情報センター出版局)に就職して編集者となる。退職後、週刊誌記者を経て、1987年よりフリージャーナリスト。1989年から94年まで6年間かけて、旧ソ連・東欧圏を取材し続け、1996年に ソ連の崩壊とロシアの民主化の実装を描いた『あらかじめ裏切られた革命』(講談社)を出版。同年、第18回講談社ノンフィクション賞を受賞。2000年 10月からフジテレビ系『とくダネ!』のレギュラーコメンテーター(現在も継続中)。2009年夏にウェブサイト「WEB IWAKAMI」を大幅にリニューアル、同年11月30日ビデオ取材に手を染め、年末にtwitterをスタート。2010年3月20日Ustreamによるインタビューのライブストリーミング配信の開始。同年12月に(株)インディペンデント・ウェブ・ジャーナルを設立。兼業ジャーナリストのすすめ、中継市民によるストリーミングネットワークを提唱。twitterでは、@iwakamiyasumiで日々発信中。

 今回の「マガ9学校」は、フリーライター畠山理仁さんの新著『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)の発刊記念イベントでもありました。

 第一部は、「記者会見は誰のもの?」をテーマにジャーナリストの岩上安身さんが畠山さんへの聞き役となり、「記者クラブ制度の不思議」や、「なぜ自らが“ゲリラ”となって、オープン化への働きかけを執拗に行い続けてきたのか」について話されました。政権交代が行われ、鳩山さんが総理になった時は、「これでまもなくフルオープンになるだろう」と思われたそうですが、一年が経ち、現在の首相である菅さんは「記者会見が嫌いなのでは?」と思えるほど消極的。一度開いた省庁も、その扉が近ごろは狭くなってきたように感じるそうです。
 飛び入りゲストには、フリーランスの立場で大臣記者会見に積極的に参加されている小川裕夫さんがまず登場。「僕らは記者クラブの崩壊を願っているわけではない。第一、省庁や政治家側が主催者側になれば、権力に都合の良い記者だけが、優遇される危険性もある」という指摘がありました。なるほど。

 また元産経新聞記者で現在は弁護士の日隅一雄さんも登場。かつては記者クラブに加盟していた記者としての経験談や、著書『マスコミはなぜ「マスゴミ」と呼ばれるのか』(現代人文社)で書かれたNHK問題について。またネット新聞「News for the People in Japan」を設立し、ブログでの発信を積極的に続けている日隅さん自ら兼業ジャーナリスト宣言をし、市民メディアの可能性と将来への希望について語りました。

 第二部は、「兼業ジャーナリストのすすめ」をテーマに、主に畠山さんが聞き役となりました。岩上さんが先頃設立したIWJ(株式会社インディペンデント・ウェブ・ジャーナル)のわくわくするような構想を語り、「我々国民は、知る権利だけでなく、発信する権利も持っている。ネットというテクノロジーを手に入れた今、配信をする人は全てジャーナリストになれるのだ」と参加者にちょっとアジテーション。ちょっとした配信の技術や文章編集テクニック、マナーを教えるワークショップの開催なども考えている、という具体的な話がありました。

 二部の飛び入りゲストも二人。まずは非営利インターネット放送局「OurPlanet-TV」代表の白石草さん。世界人権宣言の文言を例に出し(「すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。(第19条)」)、誰もが発信者になれる権利を重ねて主張しました。

 そして「ダダ漏れ」という言葉を昨年の流行語大賞の候補になるほど流行らせた株式会社ソラノートのそらのさんは、近く「配信育成講座」を市民向けに開きたいと考えているそう。最初の企画会議から、何もかも「ダダ漏れ」してしまおうというそらのさんらしい企画について、お話がありました。まさに可視化の最前線。

 時間がかなりおしてきたところで、質疑応答タイム。参加者から次々と手が挙がりますが、残念ながら途中でタイムアウト。最後、記者クラブ加盟の現役新聞記者からの「フルオープンしたら、新聞記者の質は上がると思いますか?」という質問に畠山さんが、「上がります。スター記者が生まれる可能性があるでしょう」ときっぱり答えていたのが印象的でした。なおこの日は「マガ9学校」では、岩上USTチャンネルによる初のユーストリームが入りました。
 盛りだくさん過ぎて時間が足りなくなってしまったのが、ちょっと残念! 講演後、サイン会が開かれ畠山さんの前に、長い列ができていました。

参加者の声

アンケートに書いてくださった感想の一部を掲載いたします。(敬称略)

いわゆる大手メディアでは絶対に報じられないメディアの裏側のアクティヴな話が聞けて良かった。
(学生)

本講座を聞き、さらなる応援を畠山氏にしたいと考えます。フリーライター、フリージャーナリストの自由と権利を守るUNION(他の表現が見つからない)が必要と強く思います。経済的なものも含めて。菅政権が「開国」というなら、まず記者クラブ廃止、ジャーナリズムの開放こそ「開国」だ! 岩上さんの司会はいつもすばらしいな。
(福田良紀)

情報革命が起きることによって、国民一人一人が変わることが大事だなと思いました。政治家もマスコミも日本国民も自分のことだけを考えてしまうから、フリージャーナリストの声は届きにくいのだなあ。自分も勇気を出して、未来を考えた行動をしたいと思うことが出来ました。ありがとうございました。
(小林未宇)

「兼業ジャーナリスト」という発想がとてもおもしろいと思いました。ジャーナリストというと、とても高いところから「モノを言う」というイメージでした。記者クラブ等の制度のあるマスメディアもそういう考え方なのでしょう。
(海野ひとみ)

初めて参加しました。大変学びになりました。自分からも問題提起できるよう行動しようと思います。行動の動機づけの場として大変有意義な場だと感じました。
(匿名希望)

ユーストリームやツイッターといったものの勢いはおどろくほど激しく、どんどん人々をのみこんでいく様子に恐怖さえ感じていました。ですが、今回の講座でその状況を相対化して把握でき、市民ネットワークの可能性を感じることができました。市民が情報の発信者になり得る世の中・・・それは、受け身でいてはいけないという、怠惰をいましめる流れでもあるのかもしれません。
(学生)

勉強になった。失望することも多いけれど、今後の講師両氏の活動も含め、自分たちの行動により、変化していく時代を楽しめることに希望を持てると思った。
(横田明宏)

大変面白かった。いつもツイッターで見ている方々に直で会えたのが良かった。
(匿名希望)

とてもおもしろかったです。時間が短く感じました。
(谷家幸子)

密度の濃い内容で、時間が足りなかったです。お一人ずつのお話をもっとじっくり聞きたかったですね。岩上さん、畠山さんの二人でもっと濃い内容でお願いしたいです。
(米田三輪子)

講師の方のお話は、記者クラブ関連のお話はいつも伺っていることでしたが、市民メディアを育てるという視点でのお話はすごく刺激になりました。ゲストの方のお話も絡めて、吸収していきたいです。
(匿名希望)

最前線で生きているジャーナリストの人たちから、現場の生々しい実態を話してもらい、たいへん参考になった。今や情報の世界は、大マスコミ/メディアからネット/市民メディアに中心が移っている。個々が鋭く深く踏み込んでいくことはもちろん重要だが、個々をうまく組織できれば社会を動かすより大きな力になるだろう。大マスコミ/メディアも利用次第で役に立つから、それを一部として含むような、より広い情報の世界をつくり上げていきたいものだ。
(本田都南夫)

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