マガジン9

憲法と社会問題を考えるオピニオンウェブマガジン。

「マガジン9」トップページへ畠山理仁の「永田町記者会見日記」:バックナンバーへ

2010-05-26up

フリーランスライター 畠山理仁の「永田町記者会見日記」~首相官邸への道~

第14回

2010年5月25日@参議院内・中庭側廊下

「具体的に直接…、強く要請したということではないわけで…。これはもう(記者会側の)自主的なご判断でなされているんだと思いますよ」
(長妻昭厚生労働相)

※iPhoneが圏外!だったので、録画画像をアップしています。

 5月24日朝、突然、私の携帯電話がなった。出てみると、なんと厚生労働省の記者クラブ、厚生労働記者会の幹事社からだった。

「今週から厚生労働省の閣議後会見もフリーランスの記者の方にオープンになりました。先週のクラブ総会で決まりましたのでお知らせします」(幹事社・テレビ朝日の記者さん)

 自分でもいつ問い合わせたのか忘れてしまったが、以前、厚生労働記者会に「大臣の会見に出席したい」とお願いしていたことが幹事間でずっと引き継がれていたらしい。
 私はさっそく、長妻厚労相の会見に参加するべく準備を始めた。しかし、翌日の記者会見の場所は「参議院の院内」。国会記者証を持たないフリーランスの記者は自由に出入りできない場所だ。せっかくオープン化されたのにガックリきたが、私はなんとか各方面の協力を得て国会内に入り、長妻大臣に2問質問した。

畠山「今週から閣議後会見へのフリーランス記者の参加も認められるようになりました。政権交代から8ヶ月。岡田大臣をはじめ、多くの大臣が会見をオープンにする中、(記者クラブに所属しない)雑誌出身(長妻大臣は元・日経ビジネス記者)の長妻大臣がオープンにするまでにここまで時間がかかってしまった理由をお聞かせください」

長妻大臣「まあ、あのー、定例記者会見というのが記者クラブ主催ということでありますので、これはまあ記者クラブの方のご尽力、ご配慮があったんだというふうに思います。
 それまでも、そういうフリーの方、クラブに所属していない方の参加というのもされていたと聞いておりますので。今後ともですね、我々厚生労働省が主催するいろいろなイベントについては皆様方にもご案内を申し上げておりますので。多くの方が参加できるような、まあ、厚生労働省主催についてですね、さらに広報を周知、広報室とも話しあって周知を努力するということで。まあこれからも、まあ、その努力はして参ります」

 残念ながら、この長妻大臣の認識は事実と異なる。実際、私はこれまで記者クラブ主催の記者会見への参加を求めても断られてきた。だから今回、わざわざ幹事社から連絡があったわけで、この日が初めて「公にオープン」になった会見なのだ。
 他の記者の質問が続く中、私は次の質問の機会を待った。

畠山「今回のオープン化は、大臣のほうから働きかけて実現したのか、それとも記者会側が自主的にといいますか、率先してオープンにしたのか。そのあたり、大臣のご認識としてはどちらになりますでしょうか?」

大臣「…(しばし沈黙)。ま、これは…(沈黙)。ま、そういうふうな形がありがたいという思いは持っておりましたけれども、まあ、具体的に直接、ま、強く要請したということではないわけで…。これはもう(記者会側の)自主的なご判断でなされているだと思いますよ」

畠山「記者会側が、ということですね」

大臣「はい」

 長妻大臣は、“自らオープン化を要請していたわけではない”という事実を認めた。先月末の厚生労働省・省内事業仕分け後のぶら下がり会見で、大臣は私の質問に対して「検討していきたい」と答えていた。それなのに、実際には何も進んでいなかったのだ。「会見のオープン化」を約束してきた民主党政権の閣僚なのに、国民の一人としてはガッカリだ。

 もちろん記者会見がオープンになったのは喜ばしい。国民にとってもマイナスにはならない。それを拒否しなかったという消極的な意味では長妻大臣も悪くない。確かに大臣がいうように厚生労働省主催の各種行事はフリー記者にもオープンになっている。
 それでもなお、私は思う。一言、「閣議後記者会見をオープンにする」と言うのはそんなに難しいことなのか。もし記者会側がオープンにしないと言ったら、「大臣主催で会見を開く」と言えばいいだけの話ではなかったのか。実際、亀井静香金融相、枝野幸男行政刷新相、小沢鋭仁環境相は、記者クラブ側がオープン化を了解しなかったため、大臣主催で別の会見を開いている。だが、長妻大臣は記者クラブ側に「オープンにして欲しい」という要請すら行なっていなかった…。

 ちなみに今回、初めて「公式に」オープンになった記者会見に、フリーランスの記者として参加したのは残念ながら私一人だった。それは場所が「国会内」だったからだろう。
 国会日程など、なかなか難しいところもあると思う。だが、亀井静香大臣や原口一博大臣は、なるべくフリーの記者も参加できるよう、省内の会見室にわざわざ戻って記者会見を開く努力をしている。ぜひ長妻大臣にも頑張っていただきたい。

 最後に、自らオープン化に踏み切った厚生労働記者会には「報道を担う者としての良心」を感じることができた。「かなり時間がかかりましたね」というイヤミ付きですが(笑)。
 さて、まだオープン化をしようとしない大臣や記者クラブの皆様、どうします?

2010年5月22日@自宅

「事前登録申請についての審査が終了しましたので、登録手続きを取らせていただきます。ついては、メールアドレスを登録願います。登録申請書は5月28日までに(必着)下記当庁総務部検察広報官あて郵便で送付願います」
(東京地方検察庁からの手紙)

 最高検が全国の地検に「フリーランス記者等も参加出来るオープンな記者会見」の開催を呼びかけてから約1ヶ月。筆者も東京地検に事前登録の申請書を送っていたが、5月22日、ついにお返事がきた。ようやく「参加できる」というのだ。
 実は封筒を開けるまで、「登録は認められなかったのか…」とがっかりしていた。なぜなら東京地検の応募ページには、次のような文言があったからだ。

「登録申請を行ったものの、登録対象者として認められなかった方には、5月18日(火)発送に係る郵便で、その旨お知らせします(登録者にはお知らせしません。)。」

 つまり東京地検から郵便物が届いた時点で「アウト」と思っていた。なにしろ、事前登録をするフリーランスの記者には、下記のような厳しい条件が課されていたからだ。

 「必ず、直近3ヶ月以内に執筆・掲載した刑事事件に関する署名記事等(少なくとも毎月当たり1記事、計3記事以上)の写しと、記者として活動していることについて、記事を執筆・掲載した各会員社が発行した証明書を添付してください。」

 地検の情報はこれまで司法記者クラブにしか知らされてこなかった。それなのに刑事事件に関する署名記事の提出を求めるのはかなりハードルが高い。幸い、私はなんとかクリアできたが、これって「落とすための文言」じゃないのか? …おっと、いけない。うっかり「推定無罪」の原則を忘れていた。

 話を冒頭の文言に戻す。東京地検からの手紙の内容を一般市民にもわかりやすく噛み砕いてまとめると次のようになる。

 「連絡用のメールアドレスをワープロソフト等で印刷し、郵便で送付」

 定例記者会見の日時は「ホームページで案内する」と言っているのに、メールアドレスは郵送! デジタル化が進んでいるのか遅れているのかよくわからない。そもそもメールアドレスを登録するのは臨時記者会見の案内を受け取るためだという。手紙をよく読んでいくと、もっと興味深い内容も書かれていた。

 「通常、30分前にその旨お知らせすることとし、原則としてメールで案内する予定です」

 本当に直前。同様に記者会見をオープンにする横浜地検の場合は「開催2時間前」。もうちょっとなんとかしてほしい。記者クラブのように都心の一等地に無料の記者室を持たない私は、いつ記者会見が開かれてもいいように東京地検の回りをぶらぶらしていなければならない。もう日比谷公園で暮らすしかない。

 そんなことを考えていた5月25日、東京地検から私の携帯電話に連絡があった。

広報官「畠山さんは登録するメールアドレスを3つ書かれていますが、アドレスは一つでお願いしたいと思います。パソコンのアドレス、iPhoneのアドレス、携帯メールのアドレスと3つありますが、どれにいたしましょう?」
畠山「どんなメールが送られてくるのでしょう。長いメールですか。それとも臨時会見の時間と場所を知らせるだけの短いメールですか?」
広報官「臨時会見の開催をお知らせする短いものになります」
畠山「それでは携帯メールを登録してください」

 あの〜、今みたいな感じで電話連絡をもらうんじゃダメですか(笑)。
 ちなみに第一回のオープン化された記者会見は、「6月第2週以降に開催すべく準備をすすめておりますので、実施要領等の詳細は、後日お知らせいたします」とのこと。お知らせはメールで届くのか、それともお手紙で届くのか?
 また電話だったりして(笑)。

2010年5月25日@事業仕分け終了後の記者会見

「まさに行政、あるいは政治がやっていることを、間接情報ではなく国民のみなさんに知っていただけるということは、政治の革命だと思っています。そこにできるだけ素材を提供していく。私はライブ中継も報道だと思いますから」
(枝野幸男行政刷新相)

 5月20日から25日まで、計4日間の日程で行われた行政刷新会議の事業仕分け。今回は公益法人などを対象としたもので、その過程は一般市民にもすべて公開された。
 4月に実施された独立行政法人を対象とする事業仕分けでは、会場に訪れた傍聴者数は延べ約3100人。今回は延べ約4870人だ。多くの人が実際に会場まで足を運び、仕分けの様子を「直接見た」ことになる。
 また、この模様はすべてインターネットでもライブ中継された。4月の視聴者は延べ約130万人。今回は約128万人。注目度は相変わらず高かったと言えるだろう。
 ちなみインターネットでのライブ中継に協力していたのは、ニコニコ生放送などの民間5社で、行政刷新会議からは一円も報酬が支払われない。つまり、みんなタダで中継に協力しているのだ。しかも、会場に来た一般傍聴者にも、撮影や録音などの制限は一切設けられなかった。枝野大臣が「政治の革命」というのもうなずける。
 冒頭の枝野大臣の発言は、ニコニコ動画の七尾記者が終了後の記者会見で質問した「今後のネット活用の展望、可能性」についての答え。
 今後も政治が「オープンなもの」として定着していくことを心から願いたい。

←前へ次へ→

畠山さんたちフリーランスが働きかけたことが、
徐々にではありますが確実に「オープン化」されていってます。
最も壁が厚いと思われた検察についても、最高検が全国の地検に
「フリーランス記者等も参加出来るオープンな記者会見」の開催を呼びかけ、
まもなく第1回が開かれようとしています。
これからは、「空いたけど、フリーランス記者が誰もこない」ということに
ならないような体制づくりの支援や、市民の関心も必要です。
そのあたりについては、先日行われた「記者会見開放座談会」の
トピックスでもありましたので、記事掲載をお楽しみに!

ご意見・ご感想をお寄せください。

畠山さんの「つぶやき」も読んでね!

googleサイト内検索
カスタム検索
畠山理仁さんプロフィール

はたけやま みちよし1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。 昨年9月18日、記者クラブ加盟社以外にも開放された外務大臣記者会見で、フリーの記者として日本で初めて質問。今年1月22日には、東京地検からの事情聴取直後に開かれた小沢一郎・民主党幹事長の記者会見を、iPhoneを使ってゲリラ的にインターネットで生中継し注目される。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。

フリーランスライター畠山理仁の
「永田町記者会見日記」
最新10title

バックナンバー一覧へ→