ホームへ
もくじへ
この人に聞きたい
height="20" border="0" alt="最新ページへ"> バックナンバー一覧

松崎菊也さんに聞いた(その2)

2007年、護憲派はこう戦うべし
前回は「いろはがるた」で ズバッと世相を斬ってくれた松崎さん。
今回は、「憲法9条を護りたい」と思うからこその
護憲派への提言・苦言です。
松崎優子さん
まつざき・きくや 戯作者
1953年、大分県別府市生まれ。劇団民芸の演出家を経て、85年にコントグループ、キャラバンを結成。日本テレビ系「お笑いスター誕生」での優勝や、NHK「新人演芸コンクール」で最優秀賞を受賞するなどテレビを中心に活躍。88年、社会風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」に参加。99年独立。
現在、風刺コントの台本を書きつつ政治風刺ライブを展開。
ほかに、『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでコラムを執筆。著書に『一瞬の沈黙』『巷は勘違いに満ちている』『男が捨てられた夜』(いずれも三五館)、『コメディアン』(実業之日本社)、『松崎菊也のひとり天誅!』(毎日新聞社)など。
改憲派の「分かりやすさ」に護憲側はどう立ち向えばいいのか。
編集部  前回の終わりに松崎さんは、護憲派にも色々と注文があると言ってましたね。
松崎  そうそう。わたくしだって「9条を変える必要はない」という考えですから、「護憲派」といえば「護憲派」なんですけど、世間一般で言うところの護憲派――政治家や学者、それから運動団体など「9条を護ろう」って声あげている人たちに要望があるのですよ。いやお願い事と言ったほうが正確ですかね。
編集部  護憲派メディアの『マガジン9条』としても気になるところです。
松崎  まず、護憲側の主張って分かりにくいんです。わたくしなどは9条を変えてはいけない理由を聞かれれば、「『戦争はやめましょう』というのは、学校に置き換えてみれば『廊下を走るのはやめましょう』という校則のようなもの。それを最近は廊下を走る生徒が増えたから、現実に合わせて『廊下を走りましょう』と校則を変えますか?」と答えます。もっと個別具体的な改憲・護憲の話になれば別ですが、そんなに憲法のことを考えていない人たちに向けてはこれぐらいの話でいいんじゃないでしょうか。ところが、護憲側の学者や政治家が言うことって理屈が先行していて話が難しい。だから、あまり憲法に興味のない人は少し聞いただけで飽きてしまう。せめて話の導入ぐらいは分かりやくしないとね。

 それに比べて改憲派は単細胞で…じゃなくて単純明解で実に分かりやすい。「自分の国を自分で守るのは当り前(だから軍隊を持ちましょう)」「北朝鮮のミサイルが飛んできたらどうするんですか(だからミサイル防衛システムを構築しましょう)」とか、憲法も安全保障もあまり考えていない人にとっても分かりやすい。もちろんわたくしはそんな主張に反対ですけど、分かりやすさという点では改憲側が格段に上ですよね。
編集部  まあ、改憲側はあえて話を単純化したほうが有利に話を展開できるという計算もあるでしょうけど。
松崎  もちろんそう。でも、いいんです、単純化で。あっちがやるならこっちも単純化すればいい。「自衛隊は誰が見たって軍隊じゃないですか。なのに憲法にはそうでないと書いてある。おかしいじゃないですか」と相手が言うなら、それに対してこちらも簡単な言葉、しかも短い説明で対抗しないとね。
 なんでわたくしがそんなことにこだわるかというと、こういうことなんです。今の流れのままいくと、憲法を変えるか、変えないかを決める国民投票は早ければ5年以内、遅くとも10年以内に行なわれるでしょう。そのときに勝敗を決めるのは、護憲派でも改憲派でもなくて、態度を決めかねている人たちの動向ですよ。
編集部  いわゆる中間層ですか?
松崎  そう。改憲、護憲ともう態度が決まっている人は、たぶんこの先よほどのことがない限り考え方は変わらないでしょう。各種世論調査を見ても、「憲法を変えたほうがいい」という人は多くても、こと9条になると変えることに否定的な人が多いか、もしくは五分五分といったところでしょう。で、態度を決めかねている中間層の割合は多い。この中間層が改憲・護憲のどっちにつくかが勝負のカギになります。だから中間層に向けて、なぜ憲法9条を変えてはいけないのか、分かりやすく話していかないといけないんです。
編集部  具体的には、まず何から始めればいいですか。
松崎  たとえば、護憲派の方たちが開催する集会のやり方なんかも、たまには変えてもいいんじゃないですか。
 5月3日の前後だけでなく、一年中全国あちこちで「憲法を護ろう」という趣旨の集会が開かれていますけど、たいていは会場で見ている人も壇上で喋る人もみんな護憲派ばかりが集まっています。そんな集会は意味がないなんて言いません。でもね、憲法を護ろうと思っている人たちばかりが集まって「憲法9条は素晴らしい」「護りましょう」なんて拳を振り上げても仕方ないじゃありませんか。「9条を変えたほうがいいのかどうか分からない」「そもそも憲法って何?」という人たちを巻き込まないとダメですよ。同じ志を持った人たちが集まって、閉ざされた空間で「憲法を護りましょう!」って言い合ってどうするのってことです。
編集部  確かに、壇上も会場も同じような顔ぶれが集まるというケースもありますが、まあそればかりではないですし……。
松崎  いや、いいんですよ、同じ志を持った人たちが集まるという集会があっても。でも、そればっかりじゃねえ。
 わたくしもたまにそういう集会に呼ばれて何か喋ったりするんですけど、会場に来ている人たちはみんなマジメすぎて、わたくしが喋ることなんかはだいたいいい加減なことなんだから(笑)、適当に笑ってくれればいいのに、一番前で真剣にメモをとっている人とかいるんです。で、私がシャレなんぞ言おうものなら、「マジメに話してください!」なんて怒られちゃう。
 講師の話をありがたがって「ははー」ってな姿勢で聞いていてはダメなんですよ。『マガジン9条』の発起人だからあまり悪口言えないけど、非常に見てくれのいい大学教授の話なんかをおばさまたちが目をうるうるさせて聞いているわけですよ。「あー、ありがたい、ありがたい。南無阿弥陀仏」って、そりゃ違うでしょ(笑)。
改憲派の政治家を呼んで「憲法を変えるべき理由」を聞く集会をマガジン9条が主催すればいいんじゃない?
編集部  たとえば、どんな集会にすればいいですか?
松崎  憲法を変えたいって人たちとまず話をしないといけないでしょう。護憲側の集会にそういう人たちを呼んで討論会を開くとか、逆にあっち側の集会に行って意見を述べるのもいいんじゃないかな。たとえば自民党の政治家を呼んで「なぜ憲法9条を変えなくてはいけなのかを聞く会」を開くとか。なぜ変えたいのかその理由をきっちり聞いて、「でもそれはね」と反論していく。そういう趣向の集会がなさすぎますよ。護憲派がたとえば「石破茂先生を囲む会」を開くんです。石破先生は鼻声でいろいろ言うでしょ。それを一個一個突き崩していけばいい。イベントとしても面白いと思いますよ。

編集部  護憲側の集会に自民党の政治家は来ますかね?
松崎  それこそ『マガジン9条』が仕掛けてみたらいいんじゃない。改憲派からも一定の評価受けてるんでしょ、このサイト。

編集部  はい、改憲派の方からは、正直さだけは、評価いただいているようです。(笑)。
松崎  あはは、正直ね。でも、正直であったり、誠実さって実は大切なんですよ。たまに野次が飛び交う集会ってあるでしょ。あれよくないです。自分と意見が違うからって、自分は会場の中の一聴衆という安全圏にいて壇上の人を野次る、あれは最低。自分と違う意見でも、相手の主張をしっかり聞いて、後で堂々と反論する、そんな当り前の誠実さって護憲も改憲も関係なく大事ですよ。
 それから「護憲」って言葉もそろそろ変えたほうがいいんじゃないかな。

編集部  また、それはなんで?
松崎  これは永(六輔)さんが言っていることなんだけど、憲法を「護る」というのはなんだか守備的・保守的でよくないです。「この憲法ってすごくいいじゃん」って広めるには、「愛憲」でもいいじゃない。それだと「ワン!」って感じがするんだったら(笑)、「恋憲」でもいいんです。護憲という言葉はあまりにも後ろ向きすぎると思います。

 こういう話をすると、「なんだ松崎は護憲派をバカにして!」とお怒りになる方がいるんですけど、勘違いしないでください。わたくしは、マジメに憲法を護らなくてはと運動している人がダメだと言ってるわけではないですよ。国民投票になったとき、やっぱりそういう人たちが運動を広めていくわけですからね。国民投票になったときに備えて、もっと支持を広める方策を考えてほしいということなんです。

 世論調査の話を先ほどしましたけど、「憲法を変えたほうがいい」と回答している人の多くは、「何となく変えたほうがいいのかな」という人たちですよ。「安倍総理が言ってるし」とか「北朝鮮が怖いし」とか、確固たる信念があるというよりは「何となく」なんですね。この「何となく」というものほど権力にとって都合のいいものはない。「何となく時代に合わないから憲法を変えましょうよ」と呼びかけるわけです。でもね、「何となく」という人たちって、もともと改憲思考がガチガチに強い人ではないのだから、護憲側が「それは違うんですよ」ときちんと説明すれば、今度は「何となく変えないほうがいいかな」に変わるんです。だから護憲派は、同じ志の人たちが集まる集会ばかり開いているのではなくて、もっともっと外に向って行動していかないとダメだと思うんです。

 有権者の中で無党派層と言われている人たちって「何となく」という人たちでしょ。そういう人たちを引っ張る力が護憲側には感じられないんですよね。自民党には「憲法変えるためだったら何でもやりますよ」「妥協? ええどんどん妥協しますよ」という貪欲さがあるじゃないですか。

編集部  与党でいるためには連立パートナーの公明党とも妥協しますからね。
松崎  そう、「比例は公明党に」なんて選挙協力もするわけでしょ。あんな行為は政党としては自殺行為もいいとこなんだけど、護憲派といわれる政党や政治家にも「目的を達成するためには何でもする。誰とでも手を組む」というあの貪欲さを見習ってほしいですよ。昔ながらの左翼運動の流れをくんでしまったのかどうか知らないけど、護憲側って、憲法を護るという目的は一緒なのに、ともするとその護り方をめぐってケンカになってしまうようなところあるじゃない。もうそんなことしている場合じゃない。この点に関しては、共産党に特に言いたいですね。「自分たちが一番正しい」なんていう唯我独尊じゃダメですよ。自民公明が選挙協力をバンバンやっているのだから、護憲側も参院選にしろ統一地方選にしろ、選挙協力しないと、ほんともう間に合わなくなってしまいますよ。

編集部  昨年の沖縄県知事選などでは与党対野党の構図ができましたけど、それをもっと広げていくべきだと?
松崎  まあ憲法に関しては民主党をどう見るかという問題もありますが、基本的には自民公明の連立与党を倒さないといけないわけだから、野党共闘ということは必要でしょう。だから共産党もほぼ全選挙区に候補を立てるとかやめたほうがいい。だって本当に勝てると思ってないでしょう? オリンピックですら今では「参加することに意義がある」なんてこと通用しないんだから、その考えは改めてもらわないと。
 いやあ、なんか今回は「松崎菊也が護憲派を斬る」みたいになってしまったけど、きっと共産党系の護憲派の方々から猛烈な批判がくるんだろうな。でもね、ほんともう時間がないとわたくしは思うのですよ。だからこそ、わたくしはこんな要望、いやいやお願いをしているわけです。そこのところ、分かってもらえますかね?

松崎さんからは、『マガ9』主催で「改憲派を呼んでの集会を開いてみたら?」
との提案がありましたが、確かにこれまでとは違った集会や、
憲法について話をする場所や機会を広げていく必要を感じます。
松崎さん、ありがとうございました!
  
ご意見募集!

ぜひ、ご意見、ご感想をお寄せください。
このページのアタマへ