ホームへ
もくじへ
最新へ
バックナンバー一覧へ

日本の憲法9条のこと、海外からはどう見られているのでしょう。
第1回は、ニューヨークから鈴木ひとみさんのレポートです。


第1回
アメリカ
 日本の憲法9条は、英語圏では”pacifist constitution"、つまり”パシフィストの憲法”という。パシフィズムとは「戦争(暴力)反対主義、反戦論、平和主義(ミリタリズムの反対語)、無抵抗主義」(研究社リーダース英和辞典 1991年版より)。 「平和主義者」の憲法を知っているか、とニューヨークっ子に尋ねる限り、この中年日本人女と率直な意見を交換できるほど開けた心を持つ者と、口をつぐむ者の差は著しい。米国は二分化した「恐怖の王国」(ベトナム戦争時代”ニュー・ジャーナリズム”の旗手的ジャーナリスト、故ハンター・トンプソン2003年刊遺作の題)だ。特に、あの9/11以来。

 建前と本音があるのは日本人だけではない。意見を”外人”に言えば、お上のお怒りが怖い、だから何も言えない。別にぃ、どうでもいい、何をやったって、何にも変わるはずがない、それより自分の生活が大事、と無気力、日和見主義、自己中心的な人たちもいる。ニューヨークと東京を往還するたびに、言葉や文化の違いがあろうとも、人間みな同じ、と思う。  さて、メディアに注意を払い日本の情報を追い、質問を投げ掛ける日本通とニュース・ジャンキーたち。つまり「リベラル」、いや、最近語の「プログレッシブ」(進歩的)、かつパシフィストで9条を支持する人たちはともかく、日本憲法に9条が存在する事実を知る向きが少ないのに驚く。

「日本の平和憲法の話なんて、気にもしないし、忙しくて注意を払う時間もない。そもそも、自分たちアメリカ人に何の関係があるのか?日本は自分の国をスペシャルな存在、と考えすぎ。」(五十代、白人女性)

「日本はアメリカの親友として、米軍を助けるためにイラクに派兵し続けているんでしょう? 友達同士なんだから、頼ったり、頼られたり。だったら、平和憲法は建前だけの話だし、書き直しは当たり前。」(五十代、夫の赴任で東京在住経験がある白人女性)。

「アメリカは、戦後からずっと日本に軍事基地を置き、北朝鮮など他国からの脅威に対する盾となってきた。もう日本は自分の国を自分たちの軍できちんと守るべきだ。終戦から六十年も経つんだ。六十歳の大人だって、自立していて、自分で自分を守るんだから(苦笑)」(六十代、黒人男性)。

 黒船来航から百五十周年余。小泉内閣が対米協力とばかり自衛隊のイラク派遣を決めた時、「これであなた方も私たちの味方ね。」(四十代、白人女性)と喜ばれた。自衛隊はイラク駐在を続けるが、その事実さえ知らない人も多く、一般レベルでの日米の相互理解はまだまだ進んでいない感が強い。
私はこう答える
 第二次大戦で日本相手に闘っていたり、ベトナム戦争の従軍者の中には、日本人と話すのは苦痛、という人もいる。その中で、戦争の恐ろしさを身をもって知る二人はこう語ってくれた。
「いかなる方法を持ってしても、日本の平和憲法は守り抜かなければならない。あれは、もともと我々米占領軍が(憲法に)入れた条項ではなかったのかい?平和の尊さは、あの恐ろしい戦争を体験した日本人が一番よく知っているはずではないのかい?」(第二次世界大戦中に日本軍の捕虜だった八十代、白人男性)

「平和とは失ってこそ、その大切さを知る存在。日本は、そして日本人は、憲法に9条という世界まれに見る大切な条項があることを、世界のピース・キーパーである意義を、一人一人が責任感を持ち、きちんと考え、話し合うべきだ。そうでないと、世界はまた、とんでもない方向に行くような気がしてならないのさ。僕がそれを生きて再び体験するか、否は別として。」(第二次世界大戦中、南太平洋で日本軍相手に闘い、乗っていた軍艦を沈没させられた元海軍兵、八十代白人男性)

なお、自国の徴兵制度について、当事者である若者の意見はこうだ。

米軍基地がある韓国と同じく、日本に徴兵制度がある、と思っていたニューヨークの女子高校二年生は
「戦争は嫌。同級生のボーイフレンドのためにも、絶対に徴兵制度復活は阻止したい。」とイラク反戦のデモに積極的に参加し、昨年秋の大統領選の際も、民主党ケリー候補のために、選挙資金集めの手作りクッキー売りや電話キャンペーンを手伝った。

「ベトナム戦争の忌まわしい話は、親から聞いたり、本を読んで知っている。だから、戦争には行きたくない。徴兵制度が復活したら、カナダに逃げる。」(高校三年生、男子)
ご意見募集!
ぜひ、ご意見、ご感想をお寄せください。
このページのアタマへ