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日本の憲法9条のこと、海外からはどう見られているのでしょう。
今回は徴兵制がある韓国から、主に30代の徴兵経験者の生の声をお届けします。


第3回
韓国
「徴兵制のある国・韓国から見た改憲」ユン・へラン
ユン・ヒラン1972年ソウル生まれ、南原育ち。
大学卒業後、会社勤めを経験。その後、語学への関心が高まり、
日本語を勉強するために二年間留学。
帰国後、通訳の仕事をしながら大学に入りなおし、
日本文化を勉強中。ソウル在住。
韓国の徴兵経験者は、今の日本をこう見ている
 私はソウルに在住するユン・ヒランというものです。以前日本に二年間語学留学し、現在は日本語の通訳の仕事をしながら、さらに日本をきちんと学ぶために、大学で日本文化を専攻して勉強も続けています。
ウォンビン今回は、日本の改憲の動きに関して、ソウルでの反響と、実際問題としてどうなのだろうかという話から始まりましたが、今のところ、マスコミ的にはそれほど問題にされていません。そこで、改憲では一番問題となる「軍隊」のことをアンケートして考えてみました。
韓国には徴兵制があり、強力な軍隊があります。一方、日本は自衛隊という「自衛」のための「軍隊」で、徴兵制でもありません。その違いを考えながら、次のステップを踏もうとしている日本に対する考えも聞きました。
今回は時期的に正月休みの時期でもあり、ソウルには大学生はあまりいません。そのため、少し年齢が高い徴兵経験者にアンケートを試みました。 当然のことながら全員男性です。
ゴ・キユン(39歳)
◎韓国の徴兵制について
 当然なければならない理由は、我が国の置かれた状況、すなわち地政学的、政治的状況。上には中国が、下には日本という列強がいるからだ。
しかし入隊の前に誰もが一度は悩む。経済的な面や、時間を無駄にしてしまうということ、あるいは除隊の後の不確実性などがあるからだ。

◎現在の徴兵制度について
 もちろん不満で、無作為の徴集制には反対する。政治状況が変わらないとしても、政府の財政能力があったら、募集での徴兵を希望する。

◎日本の自衛隊について
 自立的意思表現が可能な社会という感じを受ける。日本も自衛手段として当然保有することができると思う。誰にも自衛権はある。

◎改憲によって徴兵制や軍隊が顕在化することについて
 これを超えて過去の野望をまた現さないだろうという保障がないから、自衛を越した軍備増強および徴兵制導入はとても心配だ。
ユー・スッグン(40歳)
◎徴兵制について
 間違っている。とても公平性を欠いている。身体的に著しい障害をもっているわけではない軽度の障害者が補充役にまわされるがその等級制さえ理解ができない。現在の徴兵制ではないが、現在と同じ程度の軍事力を維持できる制度がほしい。もちろん新しいスタイルへの適応ができるかどうかは問題だけど。

◎現在の徴兵制度について
 兵役の義務は必要だろうが・・・。。

◎日本の自衛隊について
 経済的なことが裏付けになっているからここまできたと思う。
一国の防衛手段である現在の自衛隊なら大きな問題にされないと思う。

◎改憲によって徴兵制や軍隊が顕在化することについて
 他の国の内政干渉を脅かすような次元ならだめだ。
これまでの歴史から考えて日本は特別な国だからだ。日本が軍備増強を続けたら、私たちもやはり牽制する意味での自衛権がもっと強化されなければならない。たとえばもっと力強い武器(戦術的核兵器くらいなら……)の必要性などが問われるだろう。
キム・デヒュン(35歳)
◎徴兵制について
 軍隊に行かなければならない理由は“国のために働ける能力があるんですから来なさい、と言われれば行くしか……”。
悩んだ部分としては、社会と断絶される時間と、自分の若い日を無駄にしてしまうのではないかという懸念。
しかし、選べるわけではないから行かなければならない。与えられた道と考えるしかない。

◎現在の徴兵制度について
 とても間違っていると思う。職業軍人ではないが、強制ではないという形にできないだろうか。選択できるのが当たり前にしてほしい。
強制されることでの副作用があまりにも多い。私的時間の自由な選択がない。このような強制的義務を強いられるのはいやだ。

◎日本の自衛隊について
 軍事的対置状況が我が国と差があるから、あえて徴兵制がなくても可能な社会。日本も自国の防衛はしなければならないというのは、当たり前なのではないか。

◎改憲によって徴兵制や軍隊が顕在化することについて
 改憲は絶対に反対する。これは経済の長期的沈滞による社会的、経済的な慌ただしさに乗じた一部極右政治勢力による軍国主義的発想ではないかと思う。多数の日本国民が願っていることではないと思う。
アメリカの勢力拡張を土台に敷いている印象がある。日本を利用した中国の牽制などにはなるかもしれないが、そうしたものにのった日本の選択は、結局東北アジアの軍備強化だけ助長し、この地域を地球村にとって大きな火薬庫にしてしまう。
ジン・イルホ(39歳)
◎徴兵制について
 良くないと思うが仕方ない。2、3年なら経済的損失、個人でも国家レベルでもさほどの損失とは言いにくいかも。
しかし、学業時期の大きな空白期間などが、除隊後の生活を暗澹とするのは事実だ。

◎現在の徴兵制度について
 局地的な状況のため必要だとは思うが愉快ではない。
こんな言葉をしばしば思い浮かべる。“軍に入るときの気持ちは屠殺場に引かれていくのと同じだ”という言葉だ。

◎日本の自衛隊について
 政治的・軍事的状況が違う。だから現在日本の状況を見たら当然だと思う。
私個人的には、まずなんであれ、嫌いだ。日本は嫌いだ。過ぎ去ったことだとしても、今でも嫌いだ。自衛隊、言葉は自衛する隊だが、法律まで作ってイラク派遣する国ではないか。

◎改憲によって徴兵制や軍隊が顕在化することについて
 ひとことで言って笑わせる。その国には国民がいる。もしそれが多くの国民の同意を得たとしたら、仕方がないこと。
しかし、そうした選択がなされたら、私たちの過去を刺激する、いや今現在の状況をもっと難しくする大きな要因になるのは間違いない。
パク・キス(35歳)
◎徴兵制について
 肯定的ではない。なおかつ公平性の論議も絶えずされている。例えば社会の既得権層と知名人たちの不道徳な兵役忌避などが、他の社会層の葛藤を引き起こしていないか。
このような点が、より合理的な制度改革なしに持続したら、これは国家の全般的基盤を揺るがす要因になるだろう。
徴兵制は韓国人男性にとってまず第一に、そしてもっとも憂慮する大きな悩みだ。私も人生の一過程として当然受け入れた。
しかし、このような肯定出来ないものを受け入れなくてはいけないことが、この制度の大きな問題点だ。

◎現在の徴兵制度について
 肯定的な要素と否定的な要素が共存している。私たちがおかれている状況による絶対的要因があるので、より効率的、先端化による軍人専門化が実用的代案だと思う。
言い換えれば現代は、軍隊の規模よりはまず、質的向上にならなければならないということだ。ここには、もう強制的徴兵制はアナクロニズム的制度に過ぎないと思う。

◎日本の自衛隊について
 まさに天国だ。人生にあって黄金の時期に徴兵制がなければ、選択の幅が広くなる。自国を守ろうとする意志は本能ではないか。
しかし閉鎖的な社会国家ではないから、必要以上の軍備増強は周辺国の大きな反発と誤解を受けるのだから、気を付けなければならない。

◎改憲によって徴兵制や軍隊が顕在化することについて
 改憲するとなると政治的に日本は後進化していくような気がする。このような発想自体が近隣国への挑発だからだ。過去に世界的挑発をしたことによって受けた傷をもう忘れたようだ。
私はむしろ問いたい。君たちの改憲で果たして何を得ようとしているのか……。
日本の軍備増強、武装化は周辺国(中国、北朝鮮、韓国)の軍備増強をけしかけて、取り返しのつかない世界大戦にまで至らせてしまう可能性がある。何度でも憂慮する。そして君たちの子孫たちの模範になるようにと望みたい。
9条を変えると、日本は「怖い国」になる?
 アンケートしながら、面白い経験をさせてもらったと思いました。いろいろな考えがあることも改めて判りましたし、現在の日本に対しては否定的な人がそれほどいなかったことも判ったからです。
ヨン様 ぺ・ヨンジュンそれでも、やはり「改憲」ということが起きてしまうと、日本は「怖い国」になる可能性が高いとほとんど全員が思っているというのも一方の事実でした。
日本の「韓流」ブームや韓国での日本の漫画人気(現在、韓国のアニメ・漫画の90%は日本のものです)等を考えるとこれまでにない関係をつくれそうだと思いますが、そうした動きがプラスの部分を一気に吹き飛ばしてしまうとも考えられます。
そうならないようにするためには、日本の人たちにがんばって下さいというしかありません。

ソウルからの第二弾は徴兵以前の若い人たちに同じことを聞いてみます。日本からこんなことを聞いてもらえないかというのがあれば、どんどん送って下さい。
それでは。
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