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日本の憲法9条のこと、海外からはどう見られているのでしょう。
第6回は、ロシア・モスクワから。
大学で日本について学んできたドミトリー・ヴォロンツォフさんによる、
憲法9条とこれからの日本の役割についてのコラムです。


第6回
ロシア
「軍隊をもたない国が「普通の国」になる時代へ」ドミトリー・ヴォロンツォフ
ドミトリー・ヴォロンツォフドミトリー・ヴォロンツォフ(Dmitri Vorontsov)
1966年モスクワ生まれ。
大学卒業後、旧ソ連の国立研究機関を経て、
現在は日本の貿易投資促進団体のモスクワ事務所に勤務。
日本の独特さは、9条に基づいて育てられた
 私は1983年にモスクワの大学に入学してから今までずっと日本のことを勉強し、1992年からは日本の機関のモスクワの事務所で働いています。日本国憲法の9条を改定するかどうかは、当然ながら、日本国民独自で決めるべきことであると十分認識していますが、こうした自分の個人的な立場からいうと、9条を変えた日本という国をやや想像しにくいと言わざるをえません。
 日本国民のデリケートなセンスにタッチしたくはないのですが、率直に言えば、現在の日本の独特さ、素晴らしさ、強さを育ててきた原因の一つは、まさに戦争をしない、軍隊を持たないという根拠に基づいた、戦後から現在にいたる日本の原理なのではないでしょうか。
 ですから、私は『マガジン9条』のサイトで「9条を変えるべきではない」に自信をもってクリックさせていただきました。
 日本が軍隊をもたないということは、他国のための良い事例でもあります。
9条を改定して国際貢献を増やす、あるいは「普通の国」になるというような声があるようですが、私は、むしろ、軍隊を持たない国、全く平和的な社会の国々こそ、21世紀の「普通の国」になるのではないかと思っています。
「軍隊が強ければ国が強い」は、もはや時代遅れな論理では?
 国際貢献を増やすために軍隊を持つと言い、国際問題への貢献などを心配する必要も日本には特にないと考えています。軍事なくしても、産業、技術、文化など、多くの分野で日本は確実に世界リーダーの一国になっており、21世紀やそれ以降の世界のための機関車の役割を果たしていくためには、これらが軍事よりもはるかに重要だと強く信じています。
 危機に対応するための手段についてはこう見ています。
 現在、一般の軍隊の危険より、性質の違う恐れの方が、場合によって危なくなっていることは周知の事実ですね。これはつまり、テロ、麻薬、IT分野での違法、環境問題、等々です。これらの危機への対策としては、軍隊よりむしろ、言わば「付加価値」のもっと高い知的な解決方法が必要になってくるでしょう。これこそ日本が現在の世界に貢献できる分野であり、今後の日本が重視していくべき方針だと思います。

 ロシアでは、かなり状況が違いますが、軍の将来というのが話題になっています。軍の改革、とりわけ徴兵制度の廃止、軍隊のプロ化がだんだんと進行中です。
上記のように性質の変わった危機への、効率的な対策方法を確保できるのは、現在のような「普通」の軍隊よりも国際社会の協力、ハイテクの成果、外交交渉、ITソリューション等のような手段だとよく主張されており、「軍隊が強ければ強い程、国の影響力も増える」というような古い論理がどんどん見直されてきているという感じがします。

 言い換えれば、軍隊を持っていない日本への期待やニーズが、国際問題を解決する手段として、今後は全世界で増えると思うのです。
ヴォロンツォフさんはこのコラムを、日本語で書いてきてくれました!
日本人の微妙な感情をふまえつつも、
海外流通の先端に携わっている立場から見た日本のこれからについて、
力強いことばで語ってくださいました。
ヴォロンツォフさん、ありがとうございました!
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