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2013-07-31up

雨宮処凛がゆく! 

第270回

山本太郎議員に貧困問題をレクチャー! の巻

 7月26日、「私たちが生み出した国会議員」である山本太郎さんを、思い切り引き回させて頂いた。

 当選直後の、もっとも多忙とも言える時期である。しかし、「この日、とにかく私が行く場所に一緒に来てくれれば貧困についてのあらゆる問題が網羅できる!」と熱烈アピールしたところ、「ぜひ勉強したい!」という返事。打てば響く国会議員もいたものである。

 ということで、昼過ぎに集合したのは厚生労働省。午後一時から記者クラブで開催される「生活保護引き下げにNO! 一万人審査請求運動に関する記者会見」にまず同行してもらった。

 ご存知の通り、今年8月から生活扶助基準の引き下げが始まる。その額、最大で10%。3年かけて減額となるので、3年後には2万円近く減額する世帯もある。冬期加算や期末一時金などを入れると5万円近くなるところもあり、文字通り大打撃だ。「だけど別に生活保護受けてないから関係ないし」という人も要注意。この基準引き下げによって、就学援助を受けられなくなったり、住民税の非課税世帯が課税されたり保育料が上がったりと、主に低所得者層が影響を受ける可能性が大きいのだ。

 こんな状況に貧困問題に取りくむ活動家たちが黙っているはずはない。「一万人で審査請求をしよう!」ということになり、そのためのホットラインを開催することを発表するために記者会見を開いたのだ。

 会見に出席したのは宇都宮健児弁護士、「もやい」の稲葉剛氏、POSSEの今野晴貴氏、ほっとプラスの藤田孝典氏などなど。それぞれの立場からこの引き下げが格差と貧困を更に広げるものであることを訴え、これに抵抗するため、全国各地で当事者一万人規模の審査請求を呼びかけていることを伝えた。

 会見は1時間ほどで終わり、次に訪れたのは厚生労働省内のある部屋。ここでクローズドなある会合が開催されたのだ。

 内容は、最低賃金について。7月30日、「貧困問題に取り組む有識者による『最低賃金アピール』」が厚生労働省記者クラブで開催されるのだが、その事前打ち合わせである。

 毎年改定される最低賃金だが、今年は特にその改定に注目が集まっている。それはやはり生活保護の引き下げが始まるからで、「最低賃金で働いても生活保護に届かない」逆転現象が起きている都道府県は11。だからといって生活保護を下げるのではなく、最低賃金を上げることこそが重要なのだということはこの連載でも触れてきた。が、現実にはその真逆のことが強行されるわけである。

 だからこそ今、真っ正面から「最低賃金を上げろ」と要求することが重要なのだ。非正規雇用率は過去最高の38.2%。働く人の4人に1人が年収200万円以下。働いても食べられないという状況が長年放置されていることこそが大問題なのである。

 また、安倍政権はデフレ脱却のためにインフレ政策をとり、賃金を上げると言って参院選で勝利した。ならば上げてもらおう、ということである。物価は既に上昇しはじめ、消費税の増税も予定されているのだ。これ以上、ワーキングプア層を痛めつけるのはやめてほしい。そんな「最低賃金アピール」についての打ち合わせにも同席して頂いた。

 さて、その次に訪れたのは、貧困問題に取り組む活動家たちによるクローズドな勉強会イン弁護士会館。生活保護改正法案と同時に出てきた生活困窮者自立支援法についてだ。どちらも廃案となったわけだが、また出てくることを多くの人が懸念している。この2案に対してどんな取り組みをすべきなのか、活動家たちが熱く議論を交わす2時間となった。

 そうして午後6時、「貧困問題ディープツアー」は終了。記者会見以外はかなりテクニカルでマニアックな話だったのだが、山本太郎さんはすぐに論点を言い当てていたことに私が何度も驚かされた。

 前回の原稿でも書いたように、彼は「私たちが生み出した」国会議員である。そんな山本氏は、原発の問題を入り口として、労働問題に辿り着いたことを今回の選挙演説でも語っている。「人を切り捨てる」「人の命や健康をないがしろにする」という点で、原発も労働破壊・貧困問題も繋がっているからだ。そうして多くの人が低賃金に喘ぎ、朝から晩まで長時間労働を強いられる社会は、人から簡単に「社会問題に目を向ける」余裕を奪ってしまう。目を向けたところで、「自分はこんなにすり切れながらギリギリで働いてるのにあいつら楽しやがって」という形での「生活保護バッシング」になってしまい、それが政治利用される形で「どん底への競争」が加速しているのが今の状況ではないだろうか。

 「勉強になった」「いろんなことが知れて本当によかった」

 一年生議員の山本太郎さんは、Tシャツに短パンという本当に「小学一年生」のようないつものスタイルでそう繰り返していた。

 とにかく私は、「反貧困」運動の現場を見てほしかった。どれだけの活動家や法律家たちが自分の知識と経験を駆使し、「国会」を動かすために動いているか、そのためにどんなことが語られているかを、これから「国会」が主戦場となる彼に肌で感じてほしかったのだ。

 これからも、勝手にいろいろレクチャーするために引き回したいと思っている。

 その報告をお楽しみに☆

山本太郎さんと。やっぱり国会議員に見えません・・・。

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「私たちが生み出した」国会議員なんだから、
「あとはお任せ」でいいはずがない。
ちゃんと支えて、声をかけて、ときには苦言を呈したり、疑問を投げかけたり。
「こんな問題があるよ!」と伝えていくことも、もちろんその一つ。
それをさっそく実行に移しちゃう雨宮さん、素敵です。
「絶対黙ってない議員」の活躍にも、期待&注目です。

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雨宮処凛さんプロフィール

あまみや・かりん1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮処凛のどぶさらい日記」

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