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今週のキイ

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新連載が始まりました。
 『今週のキイ(鍵)』というタイトルです。
 一年間にわたって連載された『今週のツッコミ』が終わって、「時事ネタがないのが淋しい」とか「ツッコミがなくなったので『マガジン9条』の切り込みが少し物足りない」などというメールを沢山いただきました。
 そこで、編集部で話し合った結果、いろいろな方にお願いして、なんと「今週のキイ選定委員会」なるものを結成してしまったのです!

 当選定委員会は、ジャーナリストやエディター、ライター、研究者など、5〜6名の集まり。いろいろ情報交換をしながら、委員会のひとりがまとめて記事を作っていく、というスタイルです。

 さて、では中身は?
 「今週のキイ・パーソン」、「今週のキイ・ワード」、「今週のキイ・ブック」、「今週のキイ・ニュース」などなど、その時々に目に付いた、もしくは注目すべき事柄を、「マガジン9条・今週のキイ選定委員会」が「勝手に選定」しちゃう、というコラムなのです。
まあ、いろいろ議論は錯綜するでしょうが、しばらく続けてみたいと思います。ぜひ、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

というわけで、第1回・今週のキイの開始です。
 
選挙
 さて、なんといっても今週のトップ・ニュースは「衆院千葉7区補欠選挙」でしょう。
 ここはもともと自民党の松本和巳前衆院議員が議席を持っていたのですが、公職選挙法違反事件に絡んで辞職、補欠選挙ということに。
 当初、自民公明の与党は、例の民主・永田議員の偽メール事件の影響で圧勝気分、民主党なんかメじゃない、と左うちわムードだったのですが、民主・小沢一郎代表の出現で風向きが激変、ついに、今回の結果となったのです。

 それにしても、「風」ってやつはコワイ。今まで圧倒的な風に乗ってきた「小泉劇場」は、その風を読み違えてあえなく失速。
 特に、あの「小泉チルドレン」を総動員しての選挙戦、自民党内部からさえ「あんなワケの分からない連中を投入して、かえって選挙民の反発を買うのではないか」(森喜郎前首相)との批判も出ていました。しかし、まだまだ「彼らは風に乗っている」と判断したのが武部幹事長、調子に乗って手ひどいしっぺ返しを食らったのです。いつまでも、偽メールで「我が世の春」とはいかなかったみたいです。

 選挙終盤戦では、状況がよくないとの判断から、創価学会の女性群にはカリスマ的な人気を誇る浜四津敏子・公明党代表代行まで動員、強固な組織力をバックに、自民党はまたしても公明頼みの選挙戦を展開したのですが、それでも及ばなかった。学会の動員力を加算してさえ、もう小泉神通力は風を巻き起こす力を失ってしまったのでしょうか。
 自民党業界利権集団票+公明党創価学会宗教票でも、26歳の(あの杉村太蔵議員より若い)太田和美さんに敵わなかったという結果が、なによりも雄弁に風の変わり目を物語っています。
 それに加え、なんだかコワモテの小沢一郎・民主党代表の存在感も、強く影響したようです。

 いわゆる「格差社会」が問題になっているにもかかわらず、「格差社会がそんなに悪いものだとは思わない。むしろ働く意欲をかきたてる、という側面もあるのではないか」などと、相変わらずの人を食った答弁を繰り返す小泉首相に、さすがの小泉人気も影を潜めてしまったのでしょう。

 だからと言って、今回の結果が、小沢氏の豪腕の勝利、とだけは言えない。明らかに、「小泉政治の終わりの始まり」現象なのだと思われます。

 メディアは今回の選挙は、「政策面では明確な争点がなく」(毎日新聞4月24日)と報じていますが、本当にそうでしょうか。
 そうとしか見られないのはメディアの取材力不足と言わざるをえません。いったいどこを見ているのでしょう。
 ここには、明確な「対立軸の発生」があります。
 すなわち、「憲法九条改定」に突き進む小泉自民党政権と、九条を残したままで国連待機部隊を創設しようという「国連中心主義」の小沢民主党という「対立軸」がはっきりしてきた、ということではありませんか。

 「憲法改定国民投票法案」が与党内部では合意に達しつつあるとのことですが、こと「九条」については、与野党間ではっきりと明確な争点が浮上してきたのです。これを「明確な争点がなく」などと報じてしまうのは、やはりメディアの怠慢です。
 ある意味で、日本の総右傾化現象にやや歯止めがかかる最初の現われ、と後に評価されることになる結果だったのかもしれません。

 「今週のキイ・ワード」は「選挙」です。
 で、この千葉補選と同日に行われた「選挙」で、本当は千葉に劣らず面白い結果が出た選挙がいくつもあったのです。

 まず「広島県岩国市長選」です。
 ここは、3月12日の「住民投票」で、旧岩国市民が圧倒的な票差で「米空母艦載機部隊移転」に対し反対の意思表示をしたことで、全国的な注目を集めていました。
 その住民投票結果を受け、米軍部隊移転反対を明確に表明していた旧岩国市長の井原勝介氏が、今回、旧岩国市と周辺7町村が合併して誕生した新・岩国市長選に当選したのです。
 井原新市長は「わたしは艦載機移転に対する住民の悲願を知っている。市民の素晴らしい良識の勝利だ。新しい岩国の声を国は正面から受け止めてほしい」(東京新聞4月24日)と語ったそうです。
 対立候補の自民推薦候補とは、5万4144票対2万3264票という、圧倒的な大差でした。市民の意思は、この2度にわたる投票結果で明確でしょう。特に今回の市長選では、自民党政府は、移転容認と引き換えに多額の地域振興対策費を投入するという、相も変らぬ「飴」をぶら下げたのですが、これもキッパリと拒否されたわけです。
 しかしそれでも「政府は引き続き、在日米軍再編の最終合意を目指す方針」(同・東京)と態度を変えていない。住民無視の政治が、どこまで続くのでしょうか。

 さて、次は「沖縄県沖縄市長選」です。
 ここでも「米軍基地反対候補」の東門美津子氏(民主、共産、社民、沖縄社大など推薦)が勝利しました。
 沖縄市が抱える米軍嘉手納基地は、自衛隊と米軍の共同使用が決まっているのですが、東門氏は一貫して反対をとなえてきました。それに対し、自民公明が推薦する候補は、「負担軽減策と併せて評価する」(朝日新聞4月24日)と主張しました。しかし、市民はやはりこれを拒否したのです。
 ここでも、圧倒的な強さを誇ってきた「自公選挙」の綻びが露呈してしまいました。
 住民との意識の差がこんなにも遠く隔たってしまったことに、小泉さん以下政府自民党は気づかない。いや、気づいてはいても、アメリカの呪縛から逃げられないということなのでしょうか。
 憲法九条を巡る対立軸は、こうして米軍基地再編問題を抱えた地方自治体の選挙で明らかになってきています。米軍基地と戦争、そして憲法九条は切っても切れない因縁があるのですから。

 最後にちょっと目に付いた「選挙」
 「東広島市長選」です。
 なんと、ここに自民党中川政調会長の次男・俊直氏が立候補しました。でも、落選。
 あのソフトムードのタカ派・安倍自民党幹事長が応援に入ったにもかかわらず、あえなく落選なのです。小泉後の自民党総裁選で安倍氏を担ごうとしている中川氏への安倍氏なりのお礼の応援だったと思うのですが、それほどの効果はなかったようです。
 となれば、「安倍氏では頼りない」との声が、自民党総裁選に影響を与えかねない状況になりつつある、という観測もうなづけます。
 たしかに、前原前民主党執行部の体たらくを見れば「若さへの不安」が拭えません。ことに、安倍氏のアジア外交に関する意見や政策については、「ちょっとあれじゃあなあ」と二の足を踏みたくなる自民党ベテラン議員たちの気分も分かります。
 その不安が多くの国民にも浸透し始め、今回の千葉(ここにも安倍氏は重点的に応援に入りましたが)を含めた一連の選挙結果に表れたのだ、と見るのが妥当なところではないでしょうか。

ということで、第1回の「今週のキイ」でした。

(今週のキイ選定委員会)
 
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