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癒しの島・沖縄の深層

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おかどめ やすのり 1972年法政大学卒業後、『マスコミ評論』を創刊し編集長となる。1979年3月、月刊誌『噂の真相』を編集発行人として立ち上げて、スキャンダリズム雑誌として独自の地平を切り開いてメディア界で話題を呼ぶ。数々のスクープを世に問うが、2004年3月の25周年記念を機会に黒字のままに異例の休刊。その後、沖縄に居を移しフリーとなる。主な著書に『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)、『武器としてのスキャンダル』(ちくま文庫)ほか多数。HP「ポスト・噂の真相」

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オカドメノート No.024

沖縄の離島格差問題と米軍基地拡大路線

 那覇市の泊港から高速艇で35分の慶良間諸島にある渡嘉敷島に行ってきた。釣りが目的だったが、その夜は地元の村長、村議らとの飲み会があった。酒の席ということもあってか、離島の自治体がかかえるいろんな話が聞けた。原油価格高騰により、船を使わざるを得ない離島の経済はいろんな悩みをかかえている。沖縄では大手海運会社の倒産もあったし、漁船そのものが燃料代の値上がりで採算が取れないとして休漁することも多いという。最近は原油投資に対するバブルがはじけたためにガソリン代もいくらか安くなったが、国民の生活レベルでいえば、まだ元の価格に戻ったわけでもない。依然として、原油価格高騰による物価高はまったく解消されていないし、リーマンブラザーズに象徴される米国経済の破綻によって、日本にもその影響は確実に出てくるはずである。最初から本命は麻生太郎で決まっているのに出来レースの総裁選を呑気にやっている場合ではあるまいと思うのだが。

 ま、それはともかく、沖縄の離島の一つに与那国島がある。もっとも台湾に近い国境の島で、領有権を巡って国際的な火種を抱えている尖閣諸島も近い。その与那国町議会で、自衛隊誘致に関する要請決議が賛成4、反対1で可決されたという記事が地元紙に出ていた。人口は1600人程度の島だが、二週間足らずの間に514人の署名を集めた与那国防衛協会から出された陳情書を受けての決議だという。防衛協会というのも、何だか怪しい感じだが、外間守吉町長自身は「署名を重く受け止めるが、反対意見もあり、町民の意見は一つではない」と述べている。一説によると、潜水艦の基地が検討されているのではないかという。

 今後の動きが注目されるところだが、問題は要請決議の内容だ。離島や米軍基地をかかえている沖縄の現実を反映して興味深いので紹介しておきたい。「自衛隊という国家の防衛力で身を守りながら、充実した国家予算を獲得し、関連事業で雇用促進を図り、島民全員が安定した生活基盤を築き、子孫に繁栄をもたらす方策は自衛隊誘致しかないと言い切っても過言ではない」。大袈裟というか時代がかった言い回しだが、防衛協会なる団体や自衛隊誘致賛成議員たちの本音がストレートに伝わってくる決議文だ。

 しかし、沖縄では航空自衛隊那覇基地所属のF4ファントム戦闘機のトラブルが続いている。タイヤのパンクで那覇空港を離着陸する民間機の使用を長時間にわたって麻痺させた後も、計器の異常で嘉手納基地に緊急着陸するという出来事があったばかり。沖縄におけるトラブルや事故は米軍基地だけではなく、自衛隊も同様なのである。沖縄の宮古市の下地島にはパイロット養成・訓練に使う3000メートル級の滑走路があるが、ここも自衛隊が以前から目をつけている飛行場だ。

 格差社会、地方格差、離島格差を逆手に取ってアメとムチを使い分ける、こうした軍事力推進、利権ぶら下がり派のヤリクチは、辺野古新基地建設計画の場合も同様に見られる。沖縄本島北部にある名護市は政府の補助金なしでやっていけない依存体質を育んできた。となれば、新基地建設もOKせざるを得なくなるに決まっている。過疎地の原発建設と同じように、雇用創出、経済効果、補助金獲得といったことを名目に悪魔のつぶやきともいうべき日米軍事拡大路線が深く潜行している事実をみすごしてはなるまい。

台湾に近い沖縄の離島、与那国島。
そこに自衛隊の誘致、潜水艦の基地建設が検討されているというから驚きます。
しかし地元要請の内容を読んでみると
「国家予算が欲しい」書いてあるのがなんともストレート。
ここにもまた、地域格差という「貧困」と「戦争」の関係があるのでしょうか?
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