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2011-03-02up

最高裁大法廷へ傍聴に行ってきました!(1人1票裁判の口頭弁論/2月23日)水島さつき

みなさん、裁判傍聴へ行ったことありますか? 私は正直に告白すると、この日、生まれてはじめて、裁判傍聴へ行きました。しかも最高裁デビュー。

 これまで何度か「伊藤真のけんぽう手習い塾リターンズ」でもお伝えしてきたように、2009年8月の衆議院小選挙区選の無効を求めて全国の高裁で、次々と訴訟が起こされ、そのうち7件が違憲判決・違憲状態判決、2件が合憲判決と判決が割れました。そこでこの判決が最高裁に回され、最高裁の「判決」を受けることになったのです。これはかなり画期的な出来事であり、また最高裁の大法廷が開かれることは、年に何度もあることではないそうです。

 ともかくその「口頭弁論」が2月3日に行われることになったというので、傍聴に行ってきました。そもそも最高裁に傍聴に入れるのか? なんて思ってしまったのですが、最高裁といえどもそこは、開かれているんですね、当たり前ですが。その場に行けば誰でも傍聴できます。

 1時半からの口頭弁論に先立ち、原告団が最高裁正面でメディア向けにデモンストレーションを行うというので、まずはそこに集合。全国の弁護団の先生たちや支援者たちが、ゾクゾクと集まってきます。この日、弁護団代表として口頭弁論を行う伊藤真先生もすでに到着していて、満面の笑顔。なんとも爽やかな青空と最高裁をバックに記念撮影です。みなさん「いや〜1年でここまで来るとは思わなかったよ」と感慨深そうにおっしゃっていました。たくさんのご苦労があったんですね。

 大法廷の傍聴席は155ありますが、この日傍聴希望に200名を超える人が並んだので、抽選になりました。この抽選は、有名人であろうが関係者であろうが、平等公平に行われます。この運動を支援している元ヤクルトの古田敦也さんも抽選に並んでいました。ドキドキしながら発表を待つこと15分。くじ運が悪いので、なんとなく諦めていたのですが、なんと合格! 張り出された紙の手渡された整理番号を見つけた時は、小さくガッツポーズ。

 いよいよ最高裁の中に入ります。筆記用具と貴重品などを持って入ることのみ許されて、大法廷へ。なんともすごい空間です。ドーム型の天井は、何のために? というぐらいの高さがあります。まるでオペラの劇場のようです。指定された傍聴席に座った私の右前方には、被告の選挙管理委員会の担当者が、そして左前方には原告代理人らが座っています。時間となり開廷が告げられると、正面の大きな扉がすーっと開き、15名の最高裁判事が入ってきて、私たちを見下ろすようにずらりと並んで着席します。ああ、この人たちが「法の番人」なのね。

 ついもの珍しくて法廷のディテールにばかりを説明してしまいましたが、ここからが本題です。この日、代理人の口頭弁論は升永英俊弁護士、久保利英明弁護士、そして伊藤真弁護士の3名です。原告側は、すでに膨大な量の資料を書面にて提出しているのですが、さらに口頭にてそれぞれの立脚点にそって、90分にわたり弁論が行われました。ここでその要旨を簡単に紹介します。

 トップバッターである升永先生は、この訴訟の争点の概略を説明されました。

 憲法は、代議制民主主義(すなわち、主権者の過半数が、国会における代表者を通じて三権を支配する統治の仕組み)定めています。憲法は前文冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会に於ける代表者を通して行動し」と定めています。この憲法が保障するところの正当な選挙の議論を深めていけば、人口の多数が国会議員の多数を選び、人口の少数が国会議員の少数を選ぶという本来の代議制民主主義を実現するには、人口比例の原則により選挙する以外にはない、という結論になります。そして、この問題は選挙の当事者で構成される国会や内閣では解決することはできないものであり、最高裁こそが違憲立法審査権により、この国のシステムの根幹を正すことができ、その最高の国家権力を行使する責務を負っている機関である、と述べました。

 続いて久保利先生は、ご自身のこれまでの経験からなぜこの問題に取り組むようになったのか、について話されました。まず学生時代、東大法学部で芦部教授のゼミにて、「2倍の格差は許さない」という先生の教えを受けたものの「ではなぜ1.9倍ならいいのか」という疑問がずっと残っていたということです。また自身の弁護士生活においては、長年総会運営やコーポレートガバナンスの専門家としてやってきたが、日本のガバナンスは全て1人一票で行われてきているが、そうでないのは国会議員の選挙だけだ、ということに気がついたから、と述べました。国家と会社では統治機構の差はあるけれど、この原則は同じ、同一のガバナンス論で考えるべき問題だと、久保利先生は指摘されました。

 最後に伊藤真先生は、法律家を目指す学生たちに、これまでずっと「2倍未満の格差なら正しい」と教えてきたことが、間違いだったことに気がつき愕然とした。限りなく「1人1票」に近づけることこそが、憲法上要請されているということに、1年半ほど前にようやく私自身もわかったことなのだと述べました。

「憲法は多数決民主主義を前提として、少数者の人権を守るためにある、と教えてきました。しかし、前提が崩れていることに気がついて、この問題には目をつぶれなくなったのです。また人間の尊厳(憲法13条)にも関わる重大な問題です。住む場所によって、投票権が1票ある人、0.2票しかない人がいるのでは、あきらかな差別問題です。この「1人1票」が憲法上の原則である以上、これを制約するには別の憲法上の理由が必要ですが、それは見あたりません」と、大法廷内によく響く声で、身振り手振りを使って、いつもの授業のように明快に話されました。最後に伊藤先生、「この問題の責任は、裁判所にある」と15名の最高裁判事を前にきっぱり。伊藤先生、さすがです。

 閉廷後、麹町のホテルに場所を移し、記者会見が行われるというので、そこにも参加しました。入りきれないほどの人がつめかけて、立ち見の人も多数。この問題への関心の高さがうかがえます。たっぷり60分に及ぶ記者会見で、いくつかの論点が明らかに。ということで、続きはブログで。

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