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「憲法改正国民投票法」のリーフレット発行で考える。

憲法改正国民投票法施行までの1年間に、
何をすべきなのか、何ができるのか?

国民投票法施行まであと1年!

 「ご存知ですか? 平成22年5月18日から「憲法改正国民投票法」が施行されます。」そんなタイトルで、国民投票法の施行を知らせるリーフレットが今、役所や公共施設などで配布されている。

 「国民投票の基礎知識」的なことが表面に簡潔に書かれてあり、中面では、憲法改正の発議から国民投票までの流れが解説されていて、投票用紙の見本なども載っているこのリーフレットは、憲法改正国民投票の主管省庁である総務省が、法律の内容を国民に周知させることを目的に300万部印刷したものだ。同様の目的でポスターも5万部刷るそうで、これら広報にかける予算は2300万円なり。

*中身はこちらの総務省HPから見ることができます。

 このリーフレットを最初に見たとき「いよいよ来たか!」という気持ちになった。もちろん投票法が施行されるからといって、憲法改正の発議があるというわけではない。しかし・・・国民投票法施行まであと1年、「マガジン9条」では、いったい何をしなくてはならないのか? という思いのほうが強くなってきた。

 もちろんこのリーフレットに対しては批判の意見もあり、社民党党首の福島瑞穂さんが「国民投票法」国会の議論に先行して作動するのはおかしい」と題して、ブログでその問題点を詳しく書いている。

法律がいったん施行されれば、国民投票はいつでも可能になる

 法律が成立してから約2年。ここのところ、憲法審査会も機能していないし、附帯決議に関する議論も全く進んでいない。だから「法律が施行されても国民投票はまだまだ実施できない」という雰囲気が護憲派の間には、ないだろうか? しかし、ここで確認しておかなくてはならないのは、附帯決議とは「但し書き」「努力目標」のようなもので、法的拘束力は全くないということだ。

 あの個人情報保護法にもいくつかの附帯決議が付いていたが、それらは「放ったらかし」のまま法律は施行された。同じように、国民投票法の附帯決議について今後一切話し合われることがなくても、法施行や国民投票の実施を妨げるものではないのだ。 

 次の衆院選、そして来年の参院選の結果がどうなるかにもよるが、基本的には自民・民主・公明などを合わせた「改憲派」が衆参両院の3分の2を占める構図は変わらないだろう。となると、政局の展開次第では、

総選挙後(2009年9月すぎ?)
・憲法審査会での審議開始
・(附帯決議について合意)※必須条件ではない。
・自民党、民主党らによる、「憲法改正原案」の作成
・改正案の審議  

■国民投票法施行(2010年5月18日)以降
・衆参両院で2/3以上の賛成を得て、憲法改正案の発議
・60日から180日以内に国民投票の実施  

 なんていう動きがちゃくちゃくと進んでいっても、不思議ではないということだ。なんだか、ずいぶん先だと思っていた国民投票がグッと近づいてきたように思えてきた。  

付帯決議はこのまま放ったらかしていいのか?

 2年前に憲法改正国民投票法が成立したときには18の「附帯決」が付けられていたのだが、法案成立から約2年が経過した今も「附帯決議」は一部を除いて「放ったらかし」の状態。附帯決議というのは、「法律が出来た時点では議論は深め切れていないけど、施行までの間にできれば詰めて行きましょう」という、いわば「課題」のことで、例えば以下のようなもの。

●国民投票の対象や範囲をどうするのか(憲法だけに限るのか、それとも臓器移植や原発の是非なども含めるのか)。
●民法成年年齢、選挙権年齢等の見直しを検討し、法律施行までに完了させること。
●最低投票率を設けるのか(一定の投票率に達しないときは無効とするのか)。
●テレビ・ラジオの有料広告規制を具体的にどうするのか。

 そして前述したように、これらは「議論が深まっていなく」ても2010年5月18日になると、施行ということになるのだ。

 といっても、やはり公正な国民投票を行なうためには、問題だと思うのだ。例えば、附帯決議の中にあるテレビやラジオ等でのCM規制について。現状では、改憲・護憲などを訴えるCMを投票の2週間前から禁止することが決められているだけ。これでは、憲法改正案が発議されてから国民投票運動期間として認められている60〜180日間の大半にわたって、財界等をバックにした改憲側の宣伝文句が連日大量に流され続けるのは目に見えている。いくら投票日の2週間前から規制をしても、そのときはすでに「勝負あった」となってしまう可能性が大きい。そんなことにならないためにも、改憲・護憲の主張に関係なく、公平さを担保するためのメディア規制についての議論を、護憲派側から仕掛けていってもよいのではないか、と思ったりもする。

 こんなことを書くと、国民投票法をめぐって議論されていたときにもあった「相手の土俵に乗るだけ」という批判を受けるかもしれない。でも、国民投票法が現実にできている今、そして何よりも今後も改憲派が衆参の3分の2以上を占めることが予想されるだけに、前記のような戦略はありなのか、なしなのか、議論の余地は大いにあるような気がするが、さて、読者のみなさんはどう思う? 

マガジン9条でも、この2年間は国民投票法については
あまり触れてこなかったのは事実。
今後は、附帯決議ほか、国民投票(法)について、
折りに触れて取り上げていこうと思います。
みなさんのご意見も、お待ちしています!

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