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2011-06-22up

マガ9レビュー

本、DVD、展覧会、イベント、芝居、などなど。マガ9的視点で批評、紹介いたします。

vol.174

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DOCUMENTARY of AKB48
to be continued
10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?

(2011年/製作総指揮:岩井俊二 監督:寒竹ゆり)

 ぼくたちは、「本音の言葉」に飢えているんじゃないか。
 うら若き女性アイドルたちが語る言葉から、そんなことを感じた。マガジン9の読者も名前くらいは知っているであろう、いま、飛ぶ鳥を落とす勢いのAKB48。この映画は、彼女たちの2010年1年間の活動映像に、主要メンバー15人のインタビューを織り交ぜたドキュメンタリーだ。

 まず驚かされたのは、彼女たちの言葉がとても老成していたこと。10代後半から20代前半の彼女たちは、まるで30代、40代のビジネスウーマンのようだ。
 人生には濃淡があるのだろう。彼女たちは、ハイティーンの数年間で普通の人たちが10年、20年かけて経験することを(それ以上かもしれない)、ものすごい濃縮度で体験する。数々の試練を乗り越えた実績に裏打ちされた言葉にこれまであまり話さなかったであろう本音を加え、文字通り、「自分の言葉」で自分自身や仲間たちを語っている。

 もちろん、その本音は演技かもしれない。だって、彼女たちはアイドルである。加えて、自分たちが「商品」であることにも極めて自覚的だ。また、インタビュー映像ではそれぞれが本音を語りそうなシチュエーションを用意している(たとえば、柏木由紀や指原莉乃には里帰りをさせたりしている)。しかし大切なことは、受け手であるぼくに「本音を語っている」と思わせ、魅力的だと感じさせたことだ。

 翻って政治の世界では、本音の言葉がどうにも見当たらない。もちろん、本音だけで通用する世界ではないのだろう。それは重々承知している。でも、建前ばかりが跋扈する世界で、政治家がちらりと見せる本音の言葉は、相当魅力的に見えると思うのだけれど。政治家が本音をさらけ出すことは恥ずかしいことだろうか。否。政治家こそ、自ら実現したい政策については、本音を語るべきだろう。

 先日、インターネットで中継された「自然エネルギーに関する『総理・有識者オープン懇談会』」を見たが、その場の菅首相はとても魅力的だった。自然エネルギーについて熱弁を振るい、「植物が地球を救う」という持論では話が止まらないほどだった。永田町界隈では、やれ延命策だ、思いつきだとすこぶる評判が悪い自然エネルギー政策だが、何をやりたいのか不明な国会議員が多数の中、自分はこれがやりたいと言っただけでも、菅首相のほうがまだマシなのではないか。

 政治家は、当然、結果責任を負わねばならない。だから、本音を「語るだけ」ではダメだ。菅首相は、ようやく本音を語った。「辞任」という言葉も常にチラついているが、語った本音の「実現」を待っている人だって、けっこう多いと思う。この映画に出てきた、AKBのメンバー以上の奮起を期待したい。

(山下太郎)

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