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2010-07-07up

マガ9スポーツコラム

No.025

ニッポンコールをやめてみたら?
――ワールドカップ決勝トーナメントで考えたこと

 ワールドカップ南アフリカ大会の決勝リーグでは、韓国がウルグアイ、日本がパラグアイと、予選リーグを勝ち上がった東アジアの2国はともに南米チームと対戦した。

 結果は、韓国が1対2、日本が0対0の末PK戦で敗退。しかし、試合内容は対照的だった。

 前半に先制点を挙げられたものの、後半に入っても積極的に攻めていくスタイルを変えない韓国は、20分過ぎに李青龍(イ・チョンヨン)のヘディングシュートで同点に追いついた。その15分後にルイス・スアレスのその日2点目となるゴールを決められて、タイムアップとなったが、韓国は果敢に相手のゴールに攻め入る「どつきあい」のような試合をやった。終了の笛の後、ピッチに仰向けに倒れこんで、しばらく立てなかった韓国のディフェンダー、車杜里(チャ・ドゥリ)の姿が印象的だった。

 一方の日本とパラグアイの試合も死力を尽くしたものであった。しかし、韓国とウルグアイのそれに比べると、両者ともに守備を固めてチャンスを狙っていたせいか、フィールド中央で「小競り合い」をしているように見えた。

 といって、日本がリスクを負って攻めていくべきだったとは思わない。もし日本が仕掛けていたら、PK戦に持ち込むことさえできなかっただろう。現時点での日本の実力である。

 4年前、イビツァ・オシム監督が就任し、逆サイドへのロングパスの多用など、フィールドをフルに使ったダイナミックなサッカーを志向した日本代表は、岡田監督就任後、選手間の距離を縮めたコンパクトなパス回しを中心とするスタイルに変わった。当初は「なんてせせこましいサッカーなんだ」と思ったが、W杯アジア最終予選、とくにアウェーのバーレーン戦、カタール戦ではそれが見事に機能したように見えた。岡田監督の目指すものがわかった気がした。

 だが、岡田監督はあのレベルでは、W杯を勝ち抜けないと考えていたのだろう。かくして本戦まで1年足らずの期間でレベルアップを図る努力が始まった。だが、東アジア選手権やキリンチャレンジカップなど、多くの国際試合で、日本代表は無残な姿をさらした。

 岡田ジャパンはホームで弱い不思議なチームだった。アジア予選も、国立競技場では冴えないのに、コーランを連想させる拡声器での声援が響きわたる中東のスタジアムでは、素晴らしい動きを見せる。オランダで行われた親善試合でも0対3で敗れはしたが、決して悪い内容ではなかった。

 マスメディアが冷淡で、多くの評論家が手厳しかった理由のひとつは、国内の試合でいいところを見せられなかったからではないか。

 私は、アウェーでのパフォーマンスのよさ、そして無用に騒がないマスメディアと過剰な期待をしていない国民の存在が、日本代表にとってとてもいい環境に思えた。大会直前の親善試合で敗戦が続いたときは「ヤバいかな」とも思ったが、イングランドとの親善試合における守備を見たときは、「間に合ったんだ」と勝手に安心した。

 今大会の日本代表の守備は一級品である。2004年の欧州選手権で優勝したギリシャを彷彿させるそれは、どの強豪チームとも互角にわたりあえるレベルだろう。

 しかし、ベスト8まで勝ち残ったチームは、さらにその先を行っていた。攻撃的なプレーが売り物のオランダは堅実な守備で優勝候補のブラジルを下し、しっかり守ってカウンターというイメージの強かったドイツは多彩な攻撃の引き出しをもっている。

 岡田監督が当初掲げた目標「ベスト4」には、とてつもなく高い壁がある――というのが実感である。それを越えるために何をすればいいのかはわからないが、一ファンとして思うのは、従来のニッポンコールをやめてみてはということ。しょうもない提案に聞こえるかもしれない。しかし、あの「ニッポン、チャチャチャ」のリズムは基本、盆踊りのそれなので、選手の動きをかえって撹乱し、彼らの緊張感を削いでしまう気がするのである。

 チーム内の多様性もほしい。日本に帰化する在日コリアンや日系ブラジル人だけでなく、日本に生活する外国人の子供たちが、普通にサムライブルーのユニフォームを着て、ピッチに立つこと。かつての中田英寿氏や現在の本田圭佑選手の「個性」が特段ニュースにならないような、様々な顔がそろうチーム――。

 エジル(トルコ移民の子供)、ボアテング(父親がガーナ人)、ケディラ(父親がチュニジア人)、クローゼ、ポドルスキ(ともにポーランド生まれ)らが活躍するドイツのプレーを見て、私はそんな日本代表を想像してみた。

(芳地隆之)

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