今週の「マガジン9」

 昨年8月29日付の更新で、私は「いまこそ日朝国交正常化交渉を」というタイトルの巻頭言を書きました。それから1年ほど経ったいま、その思いはより強くなっています。
 数日前、アメリカのオバマ大統領は韓国の朴槿惠大統領との電話会談で北朝鮮の非核化について話し合いました。北朝鮮政府がアメリカに対して、核問題などを話し合う高官級の会談の開催を提案したことを受けてのものです。6月7〜8日にカリフォルニア州で行われたオバマ大統領と中国の習近平国家主席との会談でも、北朝鮮が主要テーマだったことは想像に難くありません。
 北朝鮮の「後見人」的な立場にある中国がアメリカにどんな提案をし、アメリカがどのような反応を示したのか。それについては知る由もありませんが、日本がこの問題に関して蚊帳の外に置かれているという印象は拭えません。朝鮮半島の非核化という大きな課題が立ち上がっているなか、日本発のニュースとして世界に流されたのは、安倍首相の歴史認識(侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない)と、橋下大阪市長の従軍慰安婦容認と在日米軍への風俗奨励の発言でした。
 安倍首相は事あるごとに「日米同盟」の重要性を強調します。しかし、朴槿惠大統領の米国議会での演説(5月8日)や、オバマ・習近平のノーネクタイでの8時間におよぶ会談というニュースを聞くに、はたして安倍首相はオバマ大統領にとって信頼に足るパートナーなのか、はなはだ疑問であり、北朝鮮が発するシグナルを受けて、アメリカが日本の頭越しに北朝鮮との対話のテーブルに着くことも十分ありうると思うのです。
 かつてニクソン大統領は電撃的に中国を訪問し、毛沢東との会談を実現して世界を驚かせました。ニクソン訪中を事前に知らされていなかった日本はその後、なんとか日中共同声明の発表にまでこぎつけましたが、それが可能だったのは、以前から民間レベルでの人的交流が行われていたからです。今後、米朝間で同様のことが起こったら、(かつて野中広務氏のもっていたような)北朝鮮とのパイプのない日本政府は慌ててアメリカに追随し、拉致問題もそのままに日朝国交を回復して、「これまでの強硬姿勢はいったい何だったのか?」という苦々しい自問をせざるをえなくなるのではないか。
 だからこそ安倍政権には今から北朝鮮との関係改善に動いてもらいたいのです。対北朝鮮強硬派といわれる安倍氏の主導であれば、国内の右派勢力も露骨に反対はできないでしょう。
 日朝国交正常化は、株価の乱高下を招く経済政策や96条を変えての憲法改正云々などとは比べものにならない、後世に残る功績として称えられると思うのですが、安倍総理、どうでしょう?

(芳地隆之)

 

  

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