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その26
まず最初に

 本当は、このコラム、今週はお休みにしてしまいたい。そう思ってしまうほどの、脱力感に襲われています。あの選挙結果、一体なんだったのでしょう。

 でも、これだけはまず、声を大にして言っておきたい。

 自民党は総得票数の50%には、遠く達していない。比例代表選挙の結果だけをみても、自民党の得票率は38%です(ちなみに、民主党は31%)。それがこんな巨大な差を生む。

 ここに、小選挙区制の、大きな危険性があります。つまり、得票率が38対31なのに、実際の獲得議席数は、296対113なのです。

 「民意は圧倒的に小泉自民党を支持した」と、あらゆるメディアは語ります。しかし、
実際の「民意」は38対31でしかない。もう少し詳しくみると、与党(自民・公明)は比例区得票率で、計51.4 %、野党(民主・共産・社民)は計43.8 %。ところが、実際の議席数では、与党327対野党 129、という結果になります。
 これ、どうですか? 「民意の反映」と言えますか?

 ツッコミ人は、「小選挙区制反対」論者です。こんなにも膨大な「死票」を作ってしまうような制度がいいとは、とても思えないからです。
 本当に「民意の正確な反映」を考えるならば、「完全比例制」にするべきでしょう。でも、そうすると小党が分立して、政治に混乱が生ずる、などと反対する人がいます。
 しかし、少数意見を大事にできない民主主義などありえない。

 ここまでは、ツッコミ人の勝手な意見です。読み飛ばしていただいて構いません。で、ここからが
今週の、悲痛なツッコミです。

今週のネタはこちら↓
●毎日新聞 2005年9月13日朝刊より
新議員84%が改憲派
本社調査10年で倍以上に伸張
 衆院選の期間中に毎日新聞が実施した全候補者アンケートを基に、当選した新議員480人の考え方を集計したところ、憲法を「改正すべきだ」とする改憲派が402人と84%に上り「改正すべきでない」とする護憲派(36 人、8%)を圧倒した。96 年の衆院選後、当選者を対象にしたアンケートで41%だった改憲派は、約10年で倍以上に伸張。衆院選で大勝した自民党は結党50周年を迎える11月までに党の新憲法草案を策定する方針で、憲法改正が現実味を増す中で、衆院議員の意識の変化が浮き彫りになった。

集団的自衛権 各党で温度差

 改憲派を政党別にみると自民党が93%でトップ。同党で「改正すべきでない」と答えたのは河野洋平前衆院議長(神奈川17区)、大塚高司氏(大阪8区)、竹本直一氏(大阪15区)の3氏だけだった。改憲派は公明党が87%、民主党も69%に及ぶ一方、共産、社民両党は当選者全員が「改正すべきでない」と答えた。
 また、現行憲法の解釈でできないとされている集団的自衛権の行使を認めるべきかを尋ねたところ、自民は75%が「認めるべきだ」と答え「禁じるべきだ」の11%を大きく上回った。逆に民主は「禁じるべきだ」が50%を占め「認めるべきだ」は39%。公明も「禁じるべきだ」と答えた当選者が94%と大勢を占めた。<以下略>
 恐ろしい記事だった。
 郵政民営化とかなんとかで、刺客だくの一だ落下傘だ抵抗勢力だカリスマ主婦だミス東大だ外資系エコノミストだホリエモンだ、と浮かれ騒いでいるうちに、とうとうここまで来てしまっていたのだった。
 衆院の3分の2どころじゃない。すでに84%が「改憲菌」に感染していたのだった。国民(って、おいっ、いったい誰なんだ!)の知らないうちに、ここまでカイケン・バイキンマンが蔓延していたのだった。
 郵政問題で目くらまし選挙を仕掛け、その裏で、
きっちりと自民党の党是・悲願ともいえる「憲法改定」の下地を作り上げていたのだった。 小泉純一郎、見事といえば見事な役者ぶり、だが、これほど汚いやり方もないのだった。ほかの重要案件はすべて切り捨て、後は野となれ山となれ、なのだった。

 しかし-----。
 郵政を改革して、一体この国のなにが変わるというのだろうか?

 かくして、私たちの国は、はっきりと「危険水域」に踏み込んだ。『亡国のイージス』ならぬ『亡国のイージャン』。
 郵政イージャン改革イージャンと、コイズミ・イージャン馬鹿踊りを踊らされているうちに、国の基本軸であるべき「憲法」が、いつの間にか改定されかねない状況に陥っていたのだ。

 11月には「自民党新憲法草案」が発表されるという。それはもちろん、8月1日に発表され、先週のこのコラムでツッコンだ「自民党新憲法第一次案」を基にしたものになるだろう。

 実はこの「第一次案」は、自民党内ではあまり評判がよくなかったようだ。「各党に遠慮しすぎて、自民党らしさが出ていない」との理由だ。
 とくに、この案に「前文」が書かれていなかったことに、批判は集中した。なぜなら、党内最右派の安倍晋三氏や中川昭一氏らが、現憲法の中で最も攻撃の対象にしたのが第九条とこの「前文」だったからだ。
その「平和主義」が、どうにも気に食わなかったらしい。ここに「国柄」としての「愛国主義=ナショナリズム」や「国民の義務・責務」を書き込むことを求めたが、第一次案ではそれが見送られたのだ。

 しかし今回の選挙結果で、事態は大きく変わった。
 小泉総裁率いる自民党は、異論反論を許さない、まるでかつてのどこかの国、そして現在のあの国のような、独裁権力を手に入れたのだ。なんでもできるっ! もはや、誰に遠慮がいるものか!
 たった3人しかいない党内護憲派など、先日の郵政参議院騒乱を思い起こせば、平気の平左、屁の河童。一刀両断、小泉芝居の血しぶき篇。
 いつだって「改憲芝居」の幕は上げられるのだ。

 で、
ここで問題になるのが、ご存知、創価学会・公明党。
 小泉自民党に徹底的に利用され、あれだけ協力させられながら、結局、改選前より3議席減らした公明党。それでもまだついていくのか? 権力の酒は、そんなに酔い心地のいいものなのか。

 とりあえず、参議院では絶対多数を占めていない自民党だから、まだ公明党に多少の利用価値はある。てなわけで、しばらくは自公連立政権は続くだろうが、気に入らなければいつだってバッサリ切り捨てられる運命にある。
 それは、今回の、「刺客騒動」を見ればサルでも分かる。
 根っからの自民党員を情け容赦なく切り捨てたのだ。利用価値の半減した公明党など、切り捨てることに、小泉総統(いや、間違えた、総裁でした。でも、ナントカ総統と言いたくなるよなあ)が、躊躇なんかするはずもない。
 公明党さん、アンタの運命、風前の灯なのですよ。権力の中に入り込んでしまうと、外から見えるこんな簡単なことも見えなくなる (今頃、自民を勝たせ過ぎたと臍を噛んでいる、きちんとものが見える公明党員も、少しはいるだろうなあ)。

 しかし、それにしても、「反戦平和」を党是にしていたあの公明党はどこへ行ってしまったのか。
 憲法の根幹に関わる議論をそっちのけで、郵政一本槍で自民党に媚を売ったツケは、けっこう高いものにつくはずだ。
 九条をどうするのか、集団自衛権をどう考えるのか、政教分離についてはどうか? 実際に自民党が改憲案を提出し、そこで公明党とのねじれが露呈したとき、公明党はどう動くのか。それでもまだ、権力の蜜を吸い続けたいとへばりつくのか。

 
絶対に相容れないはずの思想を持ちながら、権力の蜜の甘さに擦り寄った党は、これから一体どこを漂うのだろうか。
イラスト
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