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その44
いやあ、驚きました。こんなに早くホリエモンが逮捕されるなんて、一部の警察関係者を除けば、誰にも予想も出来なかった進展です。知り合いの新聞記者やテレビ局の政治記者さえ、ボーゼン自失って感じでしたからね。
  だから巷では、家宅捜索が耐震データ偽装事件の国会証人喚問の日だったことから、例えば伊藤公介元国土庁長官や安倍官房長官の疑惑隠しではないか、などとささやかれています。
  それはうがちすぎだとしても、そんな噂が飛ぶほどに、政治と金、政治家と企業との癒着がいまも根深いところで続いているのでしょう。
  さらに追い撃ちがアメリカ産牛肉の輸入停止

  我が世の春を謳歌していた藤原道長のような小泉サンも、ソートーあせっているようです。国会答弁もしどろもどろ。
  なにせ、「偽装・牛肉・ライブドア」の3点セットですからねえ。これをどう切り抜けるのでしょうか。またも、適当なワンフレーズで誤魔化すつもりなのかしら、ね。

  で、今週はそんなことにツッコミたいと思いますが、まずその前に、ちょっと一件。
今週のネタその1↓
●2006年1月20日付 産経新聞より

河野衆院議長

憲法改正 党是に「反対」
---また “介入”

河野洋平衆院議長は十九日、自民党本部で講演し、「私は憲法改正に賛成しないけれども、議論をすることはいい」と述べ、憲法改正に反対する立場を明言した。<中略>

河野氏は講演で「憲法改正にあれだけの政治的エネルギーを使うなら、なぜ教育を立て直すためにエネルギーと時間を使わないのか」と述べ、憲法改正の論議自体も牽制した。

河野氏は、元日の衆院議長年頭所感でも「中国や韓国など近隣諸国との関係の立て直しなどの課題」があると指摘、小泉純一郎首相の外交姿勢に注文をつけた。昨年六月には小泉首相に靖国神社参拝自粛を求めるなど、立法府の長として、行政府への介入とも受け取られる発言を繰り返し、党内から「慎重に考えてほしい」(安倍晋三幹事長代理=当時)との批判が出ていた。

その1

  これ、すっごく産経新聞らしいと思いませんか。なにしろ、「憲法改正に賛成しない」と言っただけで、「介入」と書かれてしまうんですから。
  首相の靖国参拝が批判されると「首相には思想信条の自由はないのか」と反論なさる新聞ですが、では「衆院議長には思想信条の自由はないのか」にはどうお答えになるんでしょう。
  また「近隣諸国との関係の建て直し」という提言が、行政府への介入? そんなバカなっ! 衆院議長は、モノを言ってはいけないのでしょうか。
  とにかく、「憲法改正反対」を言う人間は許しておかぬ、と言わんばかりのこの記事、昨年の6月の古証文ことまで持ち出して(なにせ、安倍幹事長代理=当時、ですもんね)叩くのです。その「改憲」にかける意気込みたるや、すさまじいものがあります。
  でも、立法府の長が行政府に意見を言う。これ、ごく普通の「民主主義」じゃないんですか。立法府が行政府に従属する、それはとても危険な状況でしょう。そんな例が、かつて私たちの国にも存在したのです。          
  戦前の、そして戦中の国会のこと、少し文献でも調べてみてはいかがでしょうか。

イラスト
ネタその2↓
2006年1月24日の毎日新聞より

衆院代表質問 野党
「格差拡大」を批判 ライブドア事件
首相「捜査見守る」

衆院は23日の本会議で、小泉首相の施政方針演説など政府4演説に対する各党の代表質問を行った。首相は昨年9月の衆院選で、自民党がライブドア社長の堀江貴文容疑者を支援したことについて「(事件と)自民党幹部などが堀江氏を応援したことは別の問題だ」と強調。民主党の前原誠司代表は「自民党は堀江氏を小泉改革の広告塔に利用した」と追及したが、首相は「捜査の状況を見守っていきたい」と述べるにとどめた。<中略>

首相は米国からの輸入牛肉に特定危険部位背骨が混入していた問題について、「輸入再開には日米間で合意したルールの順守が必要で、米国に原因究明と再発防止を求めている」と述べた。

耐震データ偽造問題については「売り主への責任追及を前提に、居住者への公的支援を行う必要がある。建築確認制度を総点検し、必要な制度改正を行う」と語った。前原氏はヒューザーの小嶋進社長との関係が指摘される自民党の伊藤公介元国土庁長官の証人喚問や、安倍晋三官房長官の政策秘書らの参考人招致を求めたが、首相は「国会でよく議論していただきたい」とかわした。 <後略>
その2

  なんとも情けない答弁じゃありませんか。
   あの、「改革を邪魔する者は抵抗勢力だっ!」「抵抗するような自民党なら、オレがぶっ壊す!」と絶叫していた小泉サン、どこへ行ってしまったのでしょうか。

  「事件と堀江氏応援は別の問題だ」って、そりゃあないでしょっ、小泉サン。そんな事件を起こすような人を候補者として応援したこと、その責任はアンタがとらなきゃいけないでしょっ。
  小泉サン、別の会見では「そりゃあ、候補者全員のことまで全部は調べられないからねぇ」なんて言ってます。
  ねえ、自民党って、そんなデタラメな党だったんですか。自分の党から送り出す候補者のこと、よく調べもせずに決めてたんですか。
  でもまあ、そう言われりゃ、ある意味ナットクしますよね。だって、タイゾーくんにピンクおばさん、国会をホッポリ出して講演会に出かけるカリスマ主婦、不倫報道のゆかりタン、野党党首をアイツ呼ばわりの元ミス東大、ブルードレスの勘違い大使、その他いーっぱいの83名。
  なんだか不安になってきます。

  アメリカ産牛肉の危険部位混入。これにも反省の弁がありません。アメリカのごり押しに負け輸入再開したものの、輸入量のほんの1割を検査しただけで、ばっちり背骨が見つかってしまった。では、あとの9割にはどれほどの危険部位が混じっていたか、そのうちの多くはすでに日本国内で流通していたはずなのですよ。
  「ルールの順守が必要で---」と、まるで何も語っていないような答弁。政府としての責任には一切触れず、「米国に原因究明と再発防止を求めている」なんてことなら、小学校の生徒会ですら通用しないでしょう。
  ことは国民の健康にかかわる問題です。少しは考えた答弁をしたらいかがか! 得意のワンフレーズで、いさぎよく責任を絶叫してみてくださいよぉ。

  さらにさらに、耐震データ偽装問題。
  「国会でよく議論していただきたい」とは何事か! 首相として、つまり行政の最高責任者としてこの問題にどうかかわるのかを問われての答弁がこれです。情けなくって、もう涙も出ません。
  少なくとも、この事件の背後で蠢く政治家たちぐらいは「古い自民党をぶっ壊す!」と叫んだアンタが、カタをつけなきゃいけない。それがリクツってもんでしょう。
  なぜ、企業と癒着して金をもらうような古い体質の自民党議員たちをかばうのですか。歯向かう連中には「刺客」を送り込んで、徹底的に潰しにかかったくせに、歯向かわなきゃ、古くても汚くてもほっとくってワケね。

  もうリクツもなにもあったもんじゃない。
  辞任まで秒読みに入って、もうやる気をなくしちゃったのか、それとも古い自民党に回帰してキングメーカーのカードを握りたいために、古い体質には目をつぶることにしたのか、まあ、どっちにしても私たちの国にとって、いいことは一つもない-----。
  寒い冬です。

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もう一つ、ちょっと悲しい記事を見つけました。
今週の切ないネタ3↓
2006年1月24日の毎日新聞・都内版より

昨年の検視死体
10年で1.5倍の1万8000体
核家族化など要因 高齢者の2割 “独居”

警視庁が昨年1年間に検視を実施した死体の数は約1万8000体で10年前の1.5倍に増えていることが、分かった。約6割が高齢者で、そのうち独居老人が2割を占めた。同庁鑑識課は高齢化や核家族化など社会の変動が原因の一つとみている。

検視は殺人や自殺、事故などによる変死体や、その疑いがある死因不明の死体について、身元や死因などを特定するために行う。医師法でも、死体が見つかるまでの24時間以内に医師の診断を受けていない死体は、検視することが義務付けられている。<中略>

昨年の1万8115体のうち、65歳以上の高齢者が1万1025体と約60%、うち独居老人が約17%の1885人だった。ほとんどが、近親者に見守られることなく死亡したケースだ。

昨年9月、1 年半にわたって家賃を滞納した80代の男性の遺体を、不動産業者が男性宅で発見した。遺体がすでに白骨化しており、DNA鑑定で身元を確認した。<後略>
今週の淋しいその2

  これは東京都内だけのデータです。日本全国では、どのくらいの数になるのかは分かりません。
  しかし、切ない話です。こうして人知れず死んでいく老人たちがあとを絶ちません。つまり、行政の手が、まるでこの人たちに届いていないのです。
  こんな状況を作り出しておきながら、なにが「小さい政府」なんだ、バカタレっ!と、私はつい声を荒げたくなります。

  「少子化対策」などと、政府は盛んに声を上げています。それはもちろん必要でしょう。しかし、その前に行政や政府が作らなければならないはずのセイフティ・ネット(弱者救済のための安全対策)の整備はおざなりにされたままです。ずさんなネットから零れ落ちた人々、もっとも弱い立場の独居老人たちが、ひっそりと死んでいく---。

  小泉首相や竹中大臣お得意の「市場原理主義」に偏った冷酷非情な「小さな政府」が、一握りの「勝ち組」と圧倒的多数の「負け組」を作り出し、その「格差社会」の中で敗れ「下流社会」へと流された人たちが、このような独居老人となって見捨てられる。
  この仕組みこそが、「小泉流小さい政府論」なのです。
  今回のライブドア事件で、その市場原理主義のいい加減さがあらわになりました。たった一人のホリエモンの裏側で、一体何人の「負け組」が生み出されたことでしょう。それを煽った自民党に、そして小泉・竹中コンビに、どれほど大きな責任があるのか、じっくり考えて欲しいのです。

  小泉サン、かつてなんとも評価し難い歌をつくって得意げに披露したことがあります。

  柔肌の熱き血潮を断ち切りて仕事ひとすじわれは非情か

  これはもちろん、かの与謝野晶子の

  柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君

  という歌の下手なもじりでしょう。しかし、自ら非情、などと気取りながら、首相としての職責をまるで果たしていない。非情のままに、見守る者もなく死んでいく多くの高齢者たちには、思いが至らない。
  浮かれている場合じゃないと思うのですが、この人にはそんな自覚もないのでしょうね。

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