雨宮処凛がゆく!

適当な写真がないのでまたまたインドの写真を。
インドの知らないオッサンと。

 今年もまた「プレカリアートメーデー」が来る。プレカリアートとは、不安定なプロレタリアートという造語。ユーロメーデーなどで広く使われているこの言葉が、日本のメーデーで初めて使われたのが去年。プレカリアートとは、フリーターや派遣、請負などの働き方をする人や失業者、ニートなども含まれる「不安定さをしいられる人」だ。去年のプレカリアートメーデーに行かなければ、絶対に今、若者の雇用、労働問題の取材、運動などしていないと断言できる。それほどに私の人生を変えた集会とデモがまた行われるのだ。
 日時は4月30日。私も賛同人に名をつらね、会議などにも参加させてもらっている。第1部は「宣言集会」、第2部は「歌舞伎町周回サウンドデモ」、そして第3部は「プレカリアート交流会」! 私は3部で司会を担当する。チラシに踊る言葉は「生きることはよい。生存を貶めるな! /低賃金・長時間労働を撤廃しろ。まともに暮らせる賃金と保障を! /社会的排除と選別を許すな。やられたままでは黙っていないぞ! /殺すことはない。戦争の廃絶を! /メーデーを抗議と連帯と反攻の日に! 」。

本文と一切関係ありません。
インドの映画祭のオープニングパーティー。

 ヤバい。書きながら、だんだんテンションが上がってきた。なぜ、私がこのような問題にかかわるのかとよく聞かれる。それは様々な場所で書いたが、自分が追いかけてきた自殺、生きづらさの根が、日本で「働くこと」が崩壊したこと、そして生きることの条件が厳しくなり、何があっても「自己責任」で切り捨てられる空気が蔓延していることが多くの人の心に影を落としているのではないかと思うからだ。それどころか、「生きるに値しない」人間は一刻も早く死んでくれというメッセージをこの国は放ち続けている。
 また、自分自身がフリーターだったという経緯も大きい。19歳から24歳までフリーターだった私は、25歳で1冊目の本を出して脱フリーターした。しかし、そのことにずっと罪悪感があった。周りの人達の多くは今もフリーターのままだからだ。フリーターだったらまだいい。自殺したり、ひきこもっている人も少なくない。しかし、それは決して本人の責任だけではない。社会が、企業が、グローバル化した経済が求めたものこそが取り替え可能な低賃金労働者ではないか。必要とされたから増えたのに、なってみると「だらしない」などと説教される立場なんて、フリーター以外に存在するだろうか。

ブランドなんか、いらない/ナオミ・クライン、はまの出版
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 反グローバル化運動のバイブルと言われる『ブランドなんか、いらない』(ナオミ・クライン、はまの出版)という本を知っているだろうか。彼女はこの本で、多国籍企業が世界をどれほどいびつにしているかを指摘し、こう書く。「この怒りは個人の怒りを超えている。たとえ自分が運良く仕事を見つけ、一度もレイオフされなかったとしても、誰もがいまの状況をよく知っている。子供や親、友人が不幸な立場に追いやられているからだ」。
 ある世代以下にとってフリーター問題とは、自分がどんなに運良く脱フリーターしたとしても、そんな個人の幸福ではどうにもならないほどの理不尽さを持って迫ってくるのではないのか。 「道ばたで寝ている人は、私たちの時代のもっとも力強い経済イメージだった。これは、集団の意識に焼きつけられた、悪びれもせず人間より利益を優先する経済のメタファーである。/このメッセージを、90年代前半の不況時に就業年齢に達した人々は確実に受け取った」(同書)。
 
この本は、27言語に翻訳された世界的なベストセラーである。貧しい国の工場でブランド製品を作り、工場上の鍵のかかった寮に住み、火事になると焼け死ぬことを約束された少女たち。世界中のプレカリアートは、望んでもいないのにより賃金の安い国の労働者と常に競争させられる。そうして日本でも根付いた派遣、請負という働き方。そんな現場で、若者の労災事故死や過労死、過労自殺が相次いでいる。
 どのケースを見ても、明らかに正社員と非正社員という身分制度のような壁に阻まれ、派遣、請負という弱い立場ゆえ、教育も安全対策もないまま危険な業務を任されたりしたことから死という最悪の事態に繋がっている。あるケースでは、正社員と非正社員という立場の違いによって安全対策に天と地ほどの違いがあった。例えば高所での作業の際、正社員には転落防止の柵があるが、非正社員はない、という具合だ。
 今、多くの若者が当り前にそんな環境の中で働かされている。いつから、正社員と非正社員で「命の重さ」までもが選別されることになったのか。時代は確実に逆戻りしている。このことに、現場で働く多くの若者は気づき始め、そして怒り始めている。「自由と生存のメーデー」も、そんな若者たちが立ち上がったことが大きなきっかけだろう。

インドでカレーを食べる。嬉しそうだな・・・。
よっぽどうまかったんだろうな・・・。

 さて、このあたりで反撃を開始しよう。4月30日、午後1時、大久保区民センター4階ホールで待っている。
「自由と生存のメーデー07」公式サイト
http://mayday2007.nobody.jp/

 

  

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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