雨宮処凛がゆく!

メーデー 初のDJ、楽しかった!! バナーは「反富裕」=Against the Rich

 5月4日、「自由と生存のメーデー2014 ハラスメント化する労働社会を終わらせるために」が無事に終わった。私はこの日、サウンドデモにてDJデビュー!! ゴールデンボンバーやももクロの曲に合わせて新宿の街で叫んだのは「残高ゼロ円!」「家賃滞納!」「早起き反対!」「残業反対!」「内定取り消し!」「社長がお茶くめ!」などのメーデー恒例マヌケコール。「貧乏人の貧乏人による貧乏人のための」メーデーは、「年に一度の生存確認」の場にもなっているので、いろんな人がとりあえず「ぼちぼち生きてる」ことも知れて非常に有意義だったのであった。

 さて、そんなメーデーの前から準備していることがある。

 それは「ファストフード世界同時アクション」。

 この連載の291回『「牛すき鍋定食」からの逃走という闘争』にて、私は以下のような文章を書いた。

 さて、「もう我慢できない」と思っているのは日本に住む人だけではない。

 5月なかば頃には、全世界のファストフード店で働く人々が、ある「一斉行動」を起こす予定である。まさに今、私はその日「日本でどんな連帯行動をするか」に向けての作戦会議に参加中だ。

 この時はまだ詳細を発表できなかったのだが、この原稿を書いている5月12日、厚生労働省記者クラブにて記者会見を開催。今、全貌を明らかにしたい。

 5月15日、世界35カ国以上の国で、「ファストフード労働者に公正な賃金を」求める一斉アクションが行なわれるのである。

 このアクションの呼びかけは、アメリカの「全米サービス業状業員組合(通称SEIU)彼らは昨年、全米100都市以上でファストフード労働者によるストライキを敢行。全米で「時給15ドル」を要求し、この行動は実際に「10ドルを超える州最低賃金導入」などをもたらした。

 ファストフード労働の賃金の低さは、世界共通の現象である。一方で、マクドナルドなどの多国籍企業は多額の利益を得ているという事実がある。

サウンドカーから見たデモ隊の様子。初めての光景!

 たとえば今回のアクションのため、実行委員会メンバーの一人が全国のマクドナルドの時給を調べたのだが、多くの都道府県で最低賃金と同額の時給で求人が行なわれていた。北海道・734円。栃木県・718円。東京・870円など。

 ちなみに「ファストフード」というと、「学生など親元で暮らす若い人が働いている」というイメージが強いかもしれない。一昔前はそうだったかもしれないが、今はその収入だけで自立生活を営む人や家族を養う人、シングルマザーなど様々だ。アメリカのマクドナルド従業員も、平均年齢は35歳、55%はフルタイムで働き、平均すると家庭の総収入の半分を得ているという。

 そんな現実がある一方で、現在日本マクドナルドホールディングス会長兼社長、日本マクドナルド(事業会社)会長である原田泳幸氏の報酬は3億4900万円。単純計算でも、現場の労働者と経営陣の「格差」は、200〜300倍。多国籍企業であるファストフードは、「1%VS99%」の象徴とも言えるのだ。

 そんな現実に憤った人々が15日、世界35カ国以上で立ち上がる。アメリカやイタリア、ドイツ、そしてアジアではフィリピンや韓国、中国、タイなども参加を表明し、一斉に「賃金引き上げ」を求める行動を起こすのだ。

 はからずも日本では、「すき家」での労働が過酷すぎてアルバイトが次々と逃亡。100以上の店舗で一時休業や時間帯休業が起きたという「日本版ファストフード残酷物語」のような現実がある。

5月10日、「安倍ダメデモ」にて。

 ファストフード労働は、非正規雇用や不安定雇用、低賃金といった、今の日本に巣くうあらゆる「雇用の劣化」の象徴とも言える。12日の記者会見では、某ファストフード店で働いていた女性も発言。4年間働いて、時給が60円しか上がらなかった現実を語ってくれた。800円から860円への微々たる「昇給」だ。これに憤る回路すらないほどに、この国の人々は「低賃金」に慣らされている気がする。こんな現実には、もっとちゃんと怒っていいのだ。だって、世界中の同じような境遇の人は怒っている。

 15日の世界統一スローガンは、「Fair Pay. Respect. For All Fast Food Workers.」(ファストフード労働者の権利を尊重し公正な賃金を!)

 それに加えて日本独自のスローガンは、「時給1500円にしてよ!」だ。アメリカが15ドルを求めるのだから、日本だってそれくらいは求めたい。

 「1500円なんて、高い」と思ったアナタ。時給1500円で、「フルタイム労働者の所定内労働時間1860時間」働くと、年収は279万円。時給1500円でも、年収300万円にすら届かないのだ。時給1500円は、突拍子もない「要求」だろうか。私にはとてもそうは思えない。

 ということで、上層部だけがものすごい高収入を得て、現場で働く人は低賃金で使い捨てられているというような現実は、何も日本だけのことではない。ファストフードチェーンをはじめとする多国籍企業が莫大な利益を得て、多くの人が中流からこぼれ落ちるような構図は今や世界共通の光景だ。このような現実を変えていくには、「貧乏人世界連帯」が必要不可欠だ。だからこそ、呼びかけたい。万国の貧乏人よ! この日はサボって渋谷に集おう! !

 2014年5月15日13時、渋谷センター街入り口に集合、ということしか今は言えない。

 ただ、センター街の突き当たりには、マクドナルドがある、とだけは言っておこう。

 東京まで行けない、という方も大丈夫。それぞれの地域で、なんらかのアクションを起こしてほしい。ファストフード世界同時アクションは、「誰でも参加OK」なのだ。

 詳しくは、こちらのサイトで。

 んじゃ、15日13時、渋谷センター街入り口で待ってます☆

 ダンス好きな人とかもぜひ!!

5月12日、ファストフード世界同時アクション記者会見にて。

 

  

※コメントは承認制です。
第294回 5月15日、ファストフード世界同時アクション!! の巻」 に4件のコメント

  1. magazine9 より:

    ファストフード世界アクションについては、毎日新聞などでも取り上げられています。ツイッターフェイスブックなども要チェック! 懐の寂しいときには助かる存在、でもあるファストフードですが、それが労働者の生活を踏みつけにして成り立つものであるとしたら…。今は違う職種に就いている人も、いつ「自分ごと」になるかわからない問題です。

  2. KR より:

    埼玉県の最低賃金は785円です。いまこれで働いています。会社はRICHOというところです。
    低賃金で過酷な奴隷労働をさせられても、不平不満を口にするものはほとんどいません。
    服従することに慣れきってしまっている感じです。つまり貧乏にも慣れきってしまっている。
    みんなフツーではないのです。なにかを要求するということが、異常なことであるかのごとく思われているのです。
    街頭で現実を訴えていくのも、それなりにいいことでしょうが、もっと労働の現場でひとりからでもいいから不服従の行動をとらなくてはいけないと思う。あまりにもいいなりになりすぎている。そこをとばしての街頭アクションは資本にとって痛くも痒くもない。私はひとりで逆らっていますが、みんなに嫌われています。

  3. ピースメーカー より:

    >時給1500円は、突拍子もない「要求」だろうか。私にはとてもそうは思えない。

    確かにその通りだと思います。
    給与体系を今までのままで据え置く代わりに、年金などの社会保障制度を充実させる。 あるいは社会保障制度を縮小させる代わりに、低所得者層でも安心して老後を暮せる程度の給与を保証させるかのいずれかぐらいは進めてもらわないと、日本の社会不安は増大する一方でしょう。
    いわゆるリベラルとか護憲とかの人々も、憲法や原発などの問題ばかりでなく、一般的な日本国民の大半に当てはまる「労働問題」にもっと心血を注いで頂ければ、支持が集まり、政治的権限も増大していくと思うのですが…。

  4. 多賀恭一 より:

    ファストフード労働者の一番大きな集団が
    日本では自民党に投票し、
    アメリカでは共和党に投票し、
    自分で自分の首を絞めているのだが・・・。

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雨宮処凛

あまみや・かりん: 1975年北海道生まれ。作家・活動家。2000年に自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版)でデビュー。若者の「生きづらさ」などについての著作を発表する一方、イラクや北朝鮮への渡航を重ねる。現在は新自由主義のもと、不安定さを強いられる人々「プレカリアート」問題に取り組み、取材、執筆、運動中。『反撃カルチャープレカリアートの豊かな世界』(角川文芸出版)、『雨宮処凛の「生存革命」日記』(集英社)、『プレカリアートの憂鬱』(講談社)など、著書多数。2007年に『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)を受賞。「反貧困ネットワーク」副代表、「週刊金曜日」編集委員、、フリーター全般労働組合組合員、「こわれ者の祭典」名誉会長、09年末より厚生労働省ナショナルミニマム研究会委員。オフィシャルブログ「雨宮日記」

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