原発震災後の半難民生活

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 時間がどんどん過ぎ去っていきます。もはや大方の人にとって、あの原発事故ははるか昔に片のついた出来事のようです。そのことに、私は戸惑うばかりです。

 特に二〇一六年三月の原発事故関連の報道には、困惑しました。私はさまざまな紙面で、「節目」という言葉に出くわしました。私自身、ある記者から取材を受けたときにこう言われたのです。

――五年が過ぎたこの節目の時期に、なにか一言どうぞ。

 思わず、むっとしました。東北・関東地方が大量の放射能に汚染されているこの状況において、どのような「節目」がつけられるというのでしょうか? 

――いい加減なことを言うんじゃない。

そんな激しい言葉を、私は飲みくだしていました。

 五年という「節目」…… たしかに、ちょうど五年目に当たる三月一一日の前後こそ、精力的な特集がさまざまな新聞で組まれていました。ところが、あれだけ大々的に光を当てられた「原発事故」の四文字は、あっという間に紙面から消えていきました。変わり身の早さ、とでも言えばいいのでしょうか。お互いに打ち合わせたわけでもないのでしょうが、一斉に「原発事故」を特集し、一斉に踵を返していく報道の傾向に、違和感を通りこして不気味さすら感じたものでした。

 原発事故による避難者は、いまだに十万人とも十二万人とも言われています。五年半の歳月が過ぎ去った現在も、これだけの人々が、かつて住んでいた家に帰れていません。私もこの間、家族と離ればなれのまま、往ったり来たりの生活をやりくりしてきました。先行きの見えない放射能汚染の現実に対して、「節目」という口当たりのよい言葉を覆いかぶせる世の中の空気を前にすると、私は原発避難という継続中の現実がていよくスルーされたような、苦々しい気分になるのです。

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【最終回】
6章:いまだ途上にて
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  1. magazine9 より:

    2011年10月に始まったこの連載も、今回が最終回となりました。5年以上にわたる連載の月日は、そのまま原発事故避難の時間と重なります。「最終回」を迎えても、いまも多くの人たちが全国で避難生活を続けているという現実は変わっていません。一人ひとりの生活を大きく変えた原発事故。それから5年半、私たちは何かを変えることができたのでしょうか。

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