カエルの公式

 こんにちは! すっかり、ご無沙汰してしまいました…。

 実は、6月23日から約3ヵ月間、育児休暇を兼ねた「サバティカル休暇」をいただいていました。今回は、その「サバティカル休暇」についてご紹介するとともに、仕事から離れて感じたこと、活動を振り返る重要性について書こうと思います。

サバティカル休暇とは?

 サバティカル休暇とは、研修休暇とも呼ばれる長期休暇で、ワークライフバランスを重視しようとする欧米などでは広く普及している制度です。一般的には、ある一定期間勤務した従業員などを対象に、更なる専門性を極めてもらうため長期有給休暇を与え、従業員のキャリア創造の一端を担う仕組みとされます。

 グリーンピースも、世界的にこのサバティカル制度を採用していて、7年以上勤務した職員は3ヵ月間のサバティカルを取得することができます。取得には、サバティカル中の経験が今後の仕事、個人のスキルアップ、そして社会意識の向上に寄与すること等を条件としています。
 このサバティカル制度を利用して、大学に戻って勉強をしたり、ジェンダー問題について知見を広めたいとヨーロッパを訪れたり、植林活動に参加して環境保護活動に従事したりする人もいます。

 NGOでサバティカル“休暇”なんて贅沢だというご意見もあるかもしれません。私はむしろ社会問題を扱うNGOだからこそ、普段の仕事を通じて直接関わることがない社会問題に直接触れたり、多様な人間模様を肌で感じたりする機会が必要だと思っています。

サバティカルで、育児休暇を取得

 私は、グリーンピースに勤務して13年になりますが、今回初めてサバティカル制度を利用しました。
 事務局長という立場であるがゆえに、3ヵ月も事務所を留守にするサバティカル制度の活用は正直ためらいました。しかし、6月に2人目の子供が誕生したこともあり、育児にもっと積極的に参加してみることと、これまで犠牲にしがちだった家族との時間を増やそうと考え、今年の初めに育児休暇をサバティカルとして取得することを決めました。

 男性の育児について、日本でわずか2.63%の男性育休取得率(2011年度)が、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では約80%、約90%だということを聞いて、何がその違いを生み出すのだろうと興味を持ったことも休暇取得を後押ししました。

やっぱり珍しい、男性の育児休暇

 このサバティカル期間中に、隣人の立ち話会や長男の学校の授業参観やPTAにも参加することが多くありました。そこで「3ヵ月の育児休暇をいただいていて…」と説明すると、予想していたとはいえ「えー! そんなにですか!?」という会話になります。

 ある女性は、子育て中にお連れ合いの仕事が忙しくて大変な思いをしたことを語ってくれましたし、ある人は私が実は失業しているのではないかと疑っていたこともあります(笑)。男性が育児に関わることが奨励されてきて久しいとは思いますが、少なくとも私の周囲で育児休暇の事例を聞くことは皆無でした…。

振り返る重要性

 今回、3ヵ月間にわたって育児や野菜作り、PTAなどの地域の行事参加、ダム建設現場の視察など、これまで力をいれていなかったことに積極的に関わってみて、いろいろな考えの方々に日々出会いました。その中で、改めて自分の意見や考え方、生き方などが社会の中で「マイノリティー」だとも気づかされました。

 社会問題を扱っていると、問題意識を持つ人たちのグループが出来上がっていきます。その中で活動を続けていると、どうしても問題を共有している人たちだけへの情報発信になってしまいがちです。そういう時には、少しでも一度離れたところから自分たちの活動を振り返ることも重要なのだと思います。また、時に活動から少し離れてみることは、「燃え尽き症候群」に陥ってしまうことを防ぐのにも有効な仕組みだと思います。

多様な働き方を認めることは、
フェアな社会をつくることにつながる

 育児だけではなく、今後は介護などさまざまな理由で仕事と「何か」を両立しなければならない人たちが多くなると思いますが、現実はそういう生き方をしなければいけない人には冷たい社会かもしれません。

 そして、男性は仕事だけしていればよいという風潮がまだまだ残りますが、子育てや介護などに積極的に参加することこそが、社会的に弱い立場にある人たちのことを親身になって考えられるフェアな人間を育て、それがフェアな企業、そしてフェアな社会を創造していくのだと信じています。

 

  

※コメントは承認制です。
第42回 3ヵ月間休んでみて、
変わったこと。
」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    佐藤さんが北欧諸国との差に興味をもったという男性育児休暇取得率ですが、2011年度の2.63%は実は過去最高の数字。2013年度は2.03%で、それでも過去2番目の高さだと報道されていました。「女性の社会進出を」という政治家の男性にこそ、率先して育児や介護休暇をとってほしいもの。その経験が社会を見る目や仕事にも生かされていくはず。「家庭か仕事か」という選択ではなく、すべてを含めたのがライフ(人生)ではないかと思うのですが、どうなのでしょうか。

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佐藤潤一

佐藤潤一(さとうじゅんいち): グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato

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