2012年憲法どうなる?どうする?

平和国家としての国是でもあった武器輸出三原則が、国会での議論さえないままに昨年末に緩和されました。憲法審査会も動き出していますが、どのような議論がされているのかあまり聞こえてきません。国民の関心が震災や原発問題に集中している間に、国のあり方そのものがなし崩し的に変えられようとしているのでは、という危機感があります。このコーナーは、憲法改正や安全保障に関する5つの質問について、様々な分野の専門家にお聞きしています。

井口秀作(いぐち・しゅうさく) 1964年生まれ。一橋大学大学院博士課程満期退学。現在、大東文化大学大学院法務研究科教授。専攻は憲法学。フランスの国民投票制度を研究。著書に『いまなぜ憲法改正国民投票法なのか』(蒼天社出版)など。主な論文として、「国民投票法案」に浮上した新たな問題点『世界』/「国民投票法案」の批判的検討『法律時報』/憲法改正国民投票法案をめぐって『法学セミナー』など。

Answer

今回の始動は、今年4月に発表される自民党憲法草案への政治的譲歩。しかし大連立的な動きがあれば、審査会で改憲に関する具体的な議論がなされ、正式な憲法改正原案が国会提出される可能性が出てくるかもしれません。

 この始動は、多分に政治的な動きによるものだと私は考えています。(審査会の設置を定めた)憲法改正の手続き法である国民投票法は、2007年5月に公布され2010年5月に施行されましたが、国民の広い支持があってどうしてもこの時点でつくらなくてはいけないという法律ではもともとなかった。だからこそ、審査会がこれだけ放りっぱなしにされていたわけです。それがこの会期末に、しかも他に重要課題が山積みの状況でわざわざ始動されたというのは、民主党政権の自民党に対する「妥協」のポーズだと思います。

 つまり、自民党は2012年4月に新憲法草案を発表すると言っています。審査会始動は、そのための土俵づくりだったということ。民主党政権が今、いろんな面で弱ってきていて、どこかで自民党と政治的な妥協をしなきゃいけない。それでこのタイミングで土俵に乗らざるを得なくなった、「妥協してますよ」とアピールするために、「審査会」という舞台装置がどうしても必要だったということではないでしょうか。
 実際年末に開かれた審査会で何が話し合われていたかというと、衆参いずれも、中山太郎さんなど国民投票法の制定にかかわった人たちを呼んで、いわば「昔話」を聞くというだけの内容で、改憲案についてなどの具体的な議論はまったくありませんでした。一方で、具体的な議論は、一院制議連や96条改正議連など、審査会の外側の議連のほうで進められているのです。

 この自民党の新憲法草案というのは、2005年にも自民党が作成した草案の「バージョン2」みたいなもの。当時の安倍政権がせめてあと2期続いていれば、その最後のほうで、自民党と民主党の共同作業で憲法改正原案が華々しく国会に提出され、今ごろはもう国民投票が終わっている、というシミュレーションだったのではないでしょうか。実際には安倍内閣の支持率が低下して政権が弱体化し、自民党と民主党の対立が際立ったことで、審査会も動かなくなって、そのままになったわけですが…。それを今、再スタートさせようとしているのだと思います。おそらくはその後、民主党も「憲法提言」みたいなものを再び出して、それらに基づいて審査会で議論がなされ、最終的には審査会案が改憲原案になるのではないでしょうか。

 ただ、2005年と決定的に違うのは、今はすでに国民投票法がありますから、投票権者の年齢の問題(20歳から18歳に引き下げる)などいくつか課題はあるけれど、動かそうと思えば動かせる体制がある。実際に審査会で憲法改正原案をまとめそれを国会に提出することも可能なわけです。改正案は国会に一度提出されれば、自動的に廃案になることはありません。
 次の総選挙で民主党が負け、自民党が公明党と手を結んで衆参両院で過半数を取るというようなことになれば、それが審査会での論議をある程度進めることになる可能性は高いと思います。

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