2012年憲法どうなる?どうする?

辻元清美(つじもと・きよみ) 1960年生まれ。早稲田大学在学中の83年に「ピースボート」を設立し、民間外交を展開。96年の衆議院選挙に社民党から立候補し初当選。NPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。2002年に議員辞職後、2005年の衆議院選挙で比例代表近畿ブロックにて当選。社民党女性青年委員長、政審会長代理に就任。2009年、衆議院議員総選挙において大阪10区(高槻・島本)から当選。社民党国会対策委員長に就任。国土交通副大臣に就任。2010年5月、国土交通副大臣を辞任。7月に社民党を離党。9月に民主党入党。国土交通副大臣内閣総理大臣補佐官(災害ボランティア活動担当)などを歴任。

Answer

審査会の始動は、政治的な力関係の変化によるもの。動き出してしまった以上は、メンバーの1人として、「改憲ありき」ではない立憲主義に基づいた議論を進めていきたいと考えています。

 私は2005年に「日本国憲法に関する調査特別委員会」が設置されたときにも、委員として参加していました。そこで行われたいわゆる国民投票法(日本国憲法の改正手続に関する法律)案についての審議の中で、「国民投票のやり方を決める法律の中に、改憲原案をつくるメカニズムが内蔵されているのはおかしい」と、憲法審査会の設置に反対し続けていたので、その後国民投票法が強行採決され、今回憲法審査会が立ち上がってしまったことについては、非常に残念だと思っています。

 そして、国民投票法が成立してから4年が経ったこのタイミングで審査会が始動した理由は、衆参ねじれ国会の国会運営上においての、自民党への配慮だと思います。

 政治というのは、政党や政治家の力関係や位置関係によって、急に動き出したり動かなくなったりするものです。2009年の政権交代のとき、私は社民党にいたけれども、党内でかなり強く連立政権参画を主張しました。連立政権の中心になる民主党には右から左までいろんな人がいて、自民党と同じように改憲を主張する人も少なくない。だからこそ社民党が政権の中でキャスティングボートを握って、政権全体を護憲リベラルの方向へ持って行かなくてはならないと思ったからです。

 しかし一昨年の5月、普天間基地移設の問題で、社民党は結局政権を離脱してしまいます。私自身は、普天間の問題だけではなく、憲法改正や武器輸出三原則の問題などに関しても、もうちょっと踏ん張って政権内にいたほうが絶対に「歯止め」になれるはずだと思っていました。それで、1人でもやはり歯止めになりたい、政権内で政策を実行する立場を選びたいと思って社民党を離れ、のちに東日本大震災で総理補佐官を務めた経験などから、民主党に入ることになりました。

 その後、昨年夏の参院選で自公が議席数を伸ばし、いわゆる「ねじれ国会」状態になりました。結果として今は、例えば復興関連の予算案を1本通すにしても、自公の——特に自民党の賛成がないと通らないという状況になっています。そうすると、与党もやはり自民党の顔色をうかがう、ある程度の要求は呑むようになってきますよね。憲法審査会の始動についても、自民党から「立ち上げろ」という無言の圧力があったということ。さらに、それによって民主党の中の改憲派に近い人たちが勢いづいて、党内で「立ち上げろ」という声をあげ始めたということです。

 その中で、私はこうして立ち上がってしまった以上は今度は自分が中に入って頑張るしかないなということで、自分から希望して憲法審査会のメンバーになりました。そこで最初に発言したのは、憲法は国会議員や為政者こそが守るべき、国民から突きつけられているルールなんだという共通認識を持ちましょうということ。というのは、憲法を「国民が守らなくてはならない最大のルール」だと勘違いしている国会議員がたくさんいるからです。自民党が2005年に出した「新憲法草案」にも「国民に守らせるルール」としての面が強く見えますが、そんなものはとても先進国の憲法とはいえないし、国際的に見ても恥ずかしい話です。

 それからもう一つ、憲法改正というのは本来、国民のほうから「ここを変えたい」という声が数多く出てきて、「これは変えざるを得ない」ということになったときに、国会がそれを受け止めて初めて議論される筋のものだ、という話もしました。憲法9条だって、むしろ変えてほしくないという声が圧倒的多数なのに、それを政府の側から変えようとするのは、本来の憲法改正という行為にはなじまないと思うのです。

 私は、2005年の調査特別委員会だけでなく、その前のもともとの衆院憲法調査会にも委員として参加していて、その中でも、憲法とは何か、国によってどういう位置づけであるべきかという根本のところを主に議論してきました。今回の憲法審査会でも、そうした議論の過程や歴史を踏まえた上で、「改憲ありき」の浮ついた議論ではない、そもそも憲法とは何かということに立脚した、落ち着いた議論を進めていきたいと考えています。

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