「希望のエリア」のあきらめない人々

2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。

第13回

8月15日の「平和宣言」

 国会前希望のエリアでは、毎年8月15日に合わせて独自に平和宣言を読み上げています。今年も参加者の皆さんと一緒にこの宣言を発表しました。「命を守ろう! 子どもを守ろう!」の願いを込めて、残暑の厳しい国会前で、今週も参加者の皆さんは声をあげられています。まさに平和を繋ぐ希望、そのものだと思います。

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希望のエリア平和宣言

 また8月がやってきました。あの戦争から71回目の敗戦の夏です。
 私たちは、広島、長崎、沖縄はもちろん、あの戦争により亡くなられた全ての方々の事を決して忘れずに、命と平和のバトンを次の世代へ繋げていく責務があります。
 人は人と繋がり、愛し合い、より良く暮らすために毎日を生きています。家族や友人と語らい、食事をし、笑ったり喜んだり落ち込んだり怒ったりしながら過ごす毎日にこそ、本当の幸福があるべきです。そのためには、憲法前文にあるように恐怖と欠乏がない平和な社会であることが欠かせません。
 私達は平和に生きる権利を持ち、平和の内に生まれ、平和の内に人生を全うする権利を持っています。そして平和を創り、平和と命を守るための道具は、武器ではなく、私たち人間の小さくても大きな一人ひとりの願い、そして力だと確信しています。
 二度の原爆をはじめとする各地の空襲の被害、沖縄での地上戦による日本の民間人の犠牲者は50万とも100万とも言われています。そして徴兵によって集められた軍人・兵士の犠牲者は200万人以上にものぼります。この数字に示される一人ひとりにはかけがえのない人生があり、夢や希望もあったはずです。戦争は、その夢や希望を根こそぎ残酷な形で奪いました。
 日本は、戦争の大きな反省の立場から平和憲法を制定し守る努力をしてきました。この日本国憲法こそが私たちの不戦・平和の誓いそのものです。
 そしてこの平和憲法は、国内外にあまたの犠牲を出した敗戦国日本だからこそ真摯に守り、世界にその意義を広めていく責務があると考えます。
 しかし、安倍総理は平和を望むたくさんの国民の声を無視し、大切なこの不戦の誓いを捻じ曲げ、捨て去ろうとしています。
 沖縄では基地を拡大し、辺野古や高江のヘリパッドなど戦争の準備を着々と進めています。核兵器のもととなる原発をまたもや再稼働させてしまいました。核兵器や武器も世界に輸出しようとしています。どれも命を脅かすとんでもない暴挙です。
 原発も、核兵器も、基地も、武器も全て人権を蔑ろにし、人間の命を傷つけるものです。命を大切に出来ないものは、日本にも世界にも必要ありません。そして命を大切に出来ない国のリーダーも、もう必要ありません。
 福島では未だに10万人以上の方々が自宅に帰る事が出来ていません。ふるさとから引き裂かれ悲しい思いをする人々をもう作ってはなりません。
 希望のエリアでは毎週のように「命を守ろう! 子どもを守ろう!」とたくさんの同じ思いの人たちが暑い夏も寒い冬もここで声をあげてきました。全国各地の方々と連帯してこの声はどんどん大きく広がっています。そしてこの声は国会の中へもとどろき、市民の力で政治そのものを変えようという大きな流れが出来ました。
 安倍総理はこの声をしっかりと受け止め、未来を担う子どもたちが二度と放射能や戦争の脅威に曝される事のないよう、リーダーとして真剣にこれら命の問題と向き合ってください。嘘で塗り固め、誤魔化し、原発事故が終わってしまったこと、なかったことにしてしまわないでください。
 私たちは、全ての人が平和のうちに暮らせる事を願って、ひとたび事故が起きると計り知れない被害をもたらす原発の即時廃炉を求めます。同じく計り知れない被害、惨劇を全ての人々にもたらす戦争に繋がる一切を否定します。
 私達の崇高の目的である平和に生きる権利を、高く掲げている日本国憲法が時の為政者によって都合よく変えられてしまうことのないよう、大切に守りたいと思います。
 戦争も、原発もなくすために、ここで何度でも何度でも声をあげ続けることを誓い、これを希望のエリア平和宣言とします。

2016年8月
金曜日国会前「希望のエリア」一同


 

  

※コメントは承認制です。
第13回 8月15日の「平和宣言」」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    多くの犠牲を払って終戦を迎え、もう二度と戦争はしたくないと願った人たちからのバトンを、この先もつないでいく責任が私たちにはあります。原発や沖縄の基地など、いろいろな問題も「一人ひとりの平和な暮らしを守りたい」という思いでは、共通しているのではないでしょうか。

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希望のエリア:原発に反対する官邸前抗議行動として、2012年3月から毎週金曜夜にスタート。当初は、子ども連れでも参加しやすいよう「ファミリーエリア」として国会前の歩道横に設けられたスペースだったが、その後「希望のエリア」と名称を変え、幅広い世代が参加する独自の抗議エリアとして、毎週金曜の夜に活動を続けている。

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