「希望のエリア」のあきらめない人々

2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所事故が発生。事故後、国会前や首相官邸前には、多くの人たちが集まり、抗議の声をあげました。一人ひとりが自分の意思で集まり、それぞれ独自のスタイルで行う抗議行動が生まれていったのです。事故から数年が経ったいまも、毎週金曜日には脱原発を求める人々が全国各地で集まっています。国会前「希望のエリア」も、そうした「金曜行動」のひとつ。「希望のエリア」のスタッフが、そこに集まる人々の思いを連載で伝えます。

第20回

間口を広げて、
全国に元気を届ける希望のエリア

 官邸前の原発反対行動に参加した帰り道、希望のエリア脇を通ったとき、「お魚食べたい」「牛乳のみたい」「子どもを守ろう」と、女性の澄んだ声のコールが聞こえ、思わず立ち止まった。そして、「アベはやめろ」のコールにチョッピリ乗り切れていなかった私は、「あべしんぞうさん、私たちの声聞こえてますか」のフレーズには特に共感を覚えた。

 このときのコーラーが前進座女優の紫野明日香さんであることを後日知った。官邸前で激しいコールを聞いてきた直後だったので、なおさらホッと和んだことを今でもしっかり覚えている。そして、ここなら私も参加できそうだと思った。

 放射能汚染で、福島県内の釣り場が失われたことに怒り、釣り仲間と「反原発釣竿隊」を結成し、初めて希望のエリアで釣り人の立場からスピーチした。そのときの動画が1週間くらいで1,200回も再生されてビックリした。当日は、原発問題の専門家や政治家もスピーチしていたが、再生回数は私の半分くらいだった。「釣りオヤジが何しゃべるの?」と、興味をもたれたのかなと思うが、希望のエリアの敷居の低さに共感したのではないだろうか。

 今年の3月11日は、原発事故から5年目。脱原発アイドルグループの制服向上委員会が当日発売したCD「戦争と平和」のお披露目が希望のエリアで行われた。バックコーラスで参加した、福島瑞穂さん(社民党参院議員)、小池晃さん(共産党参院議員)、そして、明日香さんの路上ライブはとても心温まるものだった。

 熊本地震のときは、スピーカーが次々と被災者への励ましの言葉を述べたため、終了後、警備にあたっていた警察官が明日香さんに、「私の実家も熊本です。ありがとうございます」と声をかけた話は、希望のエリアらしいエピソードだと思う。

 毎回はじめに行われる、明日香さんとドラム隊の土肥二朗さんの時事トーク(漫談)が本当に面白く、参加者の気持ちを和ませ、「さあ、今夜もがんばるぞ」という気にさせてくれる。希望のエリアの行動は、SNSなどを通して、文字どおりに全国に「希望」を届けてくれている。

 そして、明日香さんのコールやドラム隊には各地から参加依頼が舞い込み、11月20日には埼玉県入間市の自衛隊基地拡張反対行動にも参加。初めて明日香さんのコールを聞いた参加者から「会場が盛り上がった。スゴイ人だ」と大絶賛の声が寄せられている。

 日本国憲法は、国民の自由・権利を守るために12条で国民に「不断の努力」を求めている。

 雨の日も雪の日も、毎週金曜日に政府のお膝元の国会前で実施している明日香さんたちの行動はまさに「不断の努力」であり、先の参院選や鹿児島県知事選、新潟県知事選の結果にも影響を与えているものと確信している。私も、帰宅に2時間ほどかかるが、できる限り参加し続けようと決意を新たにしている。

(国会前「希望のエリア」参加者/渓流9条の会・渡辺 政成)

 

 

  

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第20回 間口を広げて、全国に元気を届ける希望のエリア」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    「反原発」といっても、さまざまな立場がありますが、「希望のエリア」にはそうした垣根をこえて集まりやすい雰囲気があるのでしょう。毎週欠かさずに続けられている金曜行動に、「不断の努力」への決意を感じます。

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マガジン9

希望のエリア:原発に反対する官邸前抗議行動として、2012年3月から毎週金曜夜にスタート。当初は、子ども連れでも参加しやすいよう「ファミリーエリア」として国会前の歩道横に設けられたスペースだったが、その後「希望のエリア」と名称を変え、幅広い世代が参加する独自の抗議エリアとして、毎週金曜の夜に活動を続けている。

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