この人に聞きたい

かけがえのないあなたの命は、
あなたにしか守れません

肥田 講演会などでみなさんが、私に必ず聞くのは何を食べたらいいのか? ということですが、明らかに大量の放射線を浴びているもの、測ったところベクレル数が高いもの、これは食べない方がいい。だけれども一般的に、じゃがいもとさつまいもとどちらが、いいか、というのはまったくありません。大事なのは、食べ方です。ゆっくり食べる。楽しんで食べる。これが大事です。

 敵に襲われない安全な場所でゆっくりと食べる。これは大昔からの人間の楽しみです。食事は、心身を癒す大事な時間です。あんまり楽しいことのない今の中にあって、本当に貴重なことです。夫婦二人がせっかく揃ったのに、食卓で喧嘩をするというのは、一番悪い行為です。せめて1時間は、楽しく語らいながらゆったりと食事の時間を過ごす、それをおやりなさい。

編集部 よくわかりました。しかしどうしても気になるのは、今も線量の高い地域で生活を続けている子どもたちのことです。この先、子どもたちにどのような影響がもたらされるのか、とても心配です。

肥田 私は今回の事故が起こった後、早い時期から、政府や各政党や委員会に対して、小中学生の集団疎開をさせるように進言してきました。戦時中のように強制力をもってやる。これは国にしかできないことです。広島原爆を体験した一人の被爆医師として、政府だけでなく各省や各政党に何度も申し入れをしましたし、実際に会って話をした方もいます。実際にある役所においては乗り気になった担当の方もいました。しかし最終的にはどこも「子どもの集団疎開をさせるべき」という結論には至らなかったのです。
 結局は内部被曝の怖さを誰もわかっていないから、こういうことになるのです。これから出てくる慢性的な被曝症状、病名のつけようのない様々な疾患について、甘くみているんだと思います。しかし私のような一人の医者が、いくら声をあげても国の方針を動かすことは無理です。

 せめて、子どもたちの健康が心配で、不安で毎日イライラしながら生活を送っている親御さんたちの苦しみを取り除いてあげたい。だから若いお母さんたちにはまず「被曝をしたと覚悟をしなさい」と語っています。これから広島、長崎で起こったことと同じことが起こるかもしれない。しかし何が起こっても驚いたり慌てたりしてはいけません。あなたや子どもの健康を守れるのは、あなた自身しかいません。医者だってあてにはなりません。世界中探しても、あなたの細胞はあなただけしか持っていないものです。大事なかけがえのない命なのだから、他人任せにはしない。一番大事なことは、自分自身の価値に目覚めること。強い意志を持って乗り越えてください。そのように話しています。

編集部 覚悟を決めて腹をくくりつつ、未来に向けて生きていく、ということですね。

肥田 今の日本では内部被曝から逃げることはもうできないのですから、せめて未来の子どもたちのために、放射能の心配のない日本を残していけるよう、みんなで努力しましょうよ。原発は事故が起きなくても動いているだけで、放射能汚染はあります。処理のできない核のゴミもたまる一方です。だから原発は全部停めないと、廃炉にしないと終わりにはなりません。自分たちが汚してしまったこの日本を、きれいにして未来の子どもたちに渡すために、残りの人生を費やす。そんなふうに1億2千万人の日本人みんなが、この問題に向き合わなければならない、そう思っています。

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(構成/塚田壽子)

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