松本哉ののびのび大作戦

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 みなさん、あけましておめでとうございます! 今年もカオスな一年、いろいろと騒ぎを起こしていきましょう〜!!
前回も書いたけど、ウラジオストク作戦まで始動(?)するように、世界各地に大バカなやつらのネットワークは拡大しまくっている。まさに末恐ろしいの一言に尽きる。しかし、よくよく考えてみると、いったいどういうやつらの勢力が拡大してるのかっていうと、よくわからない。「いや〜、いよいよマヌケなやつらがのさばってきましたね〜」とか、よく言ってしまうけど、「どういうこと?」と、いまいちピンとこなかったりもする。正直言って、自分もよくわからない!!!
ただ、各地に行ったり連絡をとったりしてみると、「おお、おまえらは仲間だよな」というのは一瞬でわかるし、連帯感はそれぞれ強く感じている。香港のマヌケのひとりでアートスペースを運営する李俊峰氏などは、「これだ! これからはマヌケしかない!」と、この謎のマヌケネットワークに妙に納得していて、「東アジア圏のマヌケなやつらの拡大具合を一冊の本をまとめねば!」と、やたらと意気込んでるぐらいだ。
ということで今回は、いまアジア圏を中心に急拡大するマヌケなやつらとはいったいなんなのか、ちょっと考えてみたい!!!!

まず、大まかに共通してるのは、自分たちの場所を作っているやつらが多い。店だったりスタジオやギャラリーだったり、溜まり場だったり…。そしてさらに、ちゃんと意思表示してるやつらが多い。各地のデモなんかにも参加してるし、あまり無関心層って感じでもない。あと、ミュージシャンや芸術家も多いし、手作り品や家具作り、農業など、物作りが好きな人も多いような気がするけど、気のせいかもしれない。再開発や大規模開発は、個々のスペース作りや小さいプロジェクトの障害になるのでみんな反対してる。アメリカや中国みたいな経済優先主義の変な押し付けが自国に押し寄せてきたら、みんな「金のためにやってんじゃねーよ」「国の経済のために駆り出されてたまるか、アホ!」などと反発する。
なんだなんだ!? この謎の勢力はなんだ!?

社会運動家説

訳のわからないやつらをカテゴライズするほど難しいことはないが、まあ一応いろいろ試みてみよう。まず一つ目! とりあえず、世の中の流れに逆らってああだこうだと妙なことをやってるってことで、これは反体制運動家なんじゃないかともよく思われる。確かに、世界にはびこる金持ち中心の世の中なんてまっぴら御免だし、「そんなウンコみたいな価値観をひっくり返してやろうじゃねえの、べらんめえ、ちきしょう」ってところはあるので、それもある意味間違ってない。しかし!!! 高円寺含め、各地のマヌケなやつらを見ていると、むしろ真面目な運動家の人たちから怒られそうなやつらばかりだ。それに、運動家の人々の中には恐ろしくしち面倒くさい人も大量にいる。やたら説教してくる人とか、妙に細かいことにまでつじつまを合わせようとやたらみみっちいこと言い出したり、いろいろ大変そうだ。それに難しいことが書いてある本を一冊でも多く読んだ方が偉いという前近代的な価値観を持ってる人も多い。これはやばい! あと、各国のマヌケなやつらに共通なのは、いつもふざけたノリだけで飲んだり騒いだりしながら政府批判っぽいイベントとかデモとかに行って、真面目な社会運動家の人々に「おまえら、やるなら真面目にやれ!」と、怒られたりしてるやつらが多い。これ、示し合わせたように、完全に同じシチュエーションがどこにもある。う〜ん、このカテゴリーでいくと、我々は最落第者になる。それに、支配には絶対に屈しない意志は持ってるけど別に社会運動自体にはそんなに興味ないって人も膨大にいる。なるほど、これはひとくくりに活動家ジャンルとも言い難いな〜。

ただのマヌケ説

と、なってくると、本当にただマヌケな感じのやつらなんじゃないのか!? …という説も急浮上してくる。おお、なるほど。確かにそれは図星のような気もするけど、それもどうもしっくり来ない。どんなに面白いことやってて大バカな感じのやつでも、「えっ、世の中のこと? 政治? 社会? いやー、そういうことはよくわからないです。自分、ポリシーないんで。あ、選挙は自民党に入れました」とか堂々と言い張られてしまうと、これはこれで友達になりたくない。別に、マヌケな感じだから仲間ってわけでもないね。

おもしろ商人説

そういえば、のびのびといろんなことをやってるやつらを見てると、みんな謎のスペースを維持している。どこにいっても持続可能な謎の経営体がある。なるほど! では、一攫千金のビッグビジネスとは行かないまでも、なんとか店や事業を成り立たせてる、一風変わった起業の成功例なんじゃないか? …ところが、そううまくもいかない。確かにうまく回ってるところもたくさんあるけど、そういうところはまぐれで成り立ってたりするし、大赤字でも強引にやってるところも多い。どいつもこいつも、面白さと金儲けを天秤にかけて、面白さを取っちゃうやつらばっかりなので、これはビジネスとしては0点だ。たまに、社会的起業って感じのカテゴリーに入れられそうになることもあるけど、そんなの言語道断っていうか恐れ多い。海外のやつらなんかは犯罪スレスレのギリギリアウトっていう金の集め方してる連中もいるし、ビジネス的に見たらデタラメ商売もいいところだ。ニュービジネスモデルのネットワークではない。

地域活性化事業ネットワーク説

地域活性化!! そうそう、これこれ。これもいろんな各地域でやってることの共通点的な部分だ。地域活性化って、別に行政が金をばら撒いて施設を作ったりイベントを開催したりするだけじゃない。そこに住んでたり遊んでる人たちが、そこでいろんなことをやって盛り上げていくのが大事だ。古い街並みのところに場所を作って、大規模開発で街を潰すんじゃなくて、地域を盛り上げようってことをやってるところが多い。
ただ、地域は活性化させるものじゃなくて、活性化するもの。苦労して努力して活性化させるんじゃなくて、面白いことをやりまくって、結果的に活性化するのが自然でいい。となってくると、各地のマヌケなやつらがやってることは、活性化事業ともいえない。突如、爆音を出しまくるライブスペースとか作って住民に叩き出されたりもしているし、ヨーロッパのアナーキーなやつらなんか空きビルを勝手に占領して好き勝手な空間を作ったりしている。結果的に地域は活性化してるけど、これ別に活性化の目的を持った事業でもなんでもない。う〜ん、これも違う。

叛逆者説

「金持ちだか政治家だか知らねえが、全員ぶっ殺してやる! このやろ〜!」と、右手に棍棒、左手にでかい石を持ち、顔面には丹下左膳のような斬り傷の出で立ちで、手なずけた巨大ワニに乗って登場する、屈強な男! ちがう、これは仲間じゃない!!

自由人説

こうなってくると、もういよいよカテゴリーを決めようがなくなってくる。もうわかった。誰にも制約されたくないという究極の自由を求めている自由人に違いない! そうだ! 僕たち私たちは、何からも制約を受けずに青空の下で生きていくんだ! イマージン ゼアーズ ノーヘブン、イッツ イージー トゥードゥ〜!!!! ざまあみやがれ!
ところがどっこい、そうは問屋が卸さない。残念ながら、世の中そう簡単にはいかないのだ! みんなが自由な生き方なんかできるわけないし、そもそも全員が自由に生きてるハッピーなコミュニティなんてハードルが高すぎて気持ち悪い。各地のマヌケスポットに集まる人の中には、典型的な会社員で過酷な労働で日々大変だけど、それだけの人生なんかやってらんないってことで、隙を見て面白い企てに関わってたりする人も多い。一方、場所作りをしてる人も、資金を得るために行政や財団をうまく説得するよう苦労してたり、店やってる人も夜中に人知れず帳簿と電卓を睨みながら渋い顔をしてたりもする。自由でもなんでもねえじゃねえか、どうしてくれるんだおい! ただ、みんな面白いことをやるために意外と努力してたりする。

う〜ん、世界マヌケ革命、なかなか奥が深くなってきた! 予想通り、言われがちなジャンル全てに当てはまらない!!!! 強いて言うなら、「自分の意思で勝手にやるよっていうポリシーを持ってる、各界で肩身の狭い思いをしがちだけどケロッとしてアホなことばかりやってる、たまには苦労もするけど、なかなか人の言うことを聞かない、反骨精神豊かでいいかげんなやつら」…って感じ? あれ? 漠然としすぎて新ジャンルになってねえじゃねえか!!!!
ただ、どこの世界に行っても必ずいるこういう人々。何があっても懲りずに、うまいことやってニコニコしながら面白いことをやっている、とんでもないやつら。そう、実はジャンル分け不能なところが最大の強み。しかも、各地域、各場所によって全く予想だにできない違うことをやってるので、みんなで団結して仲良くすることも不可能だし、ましてや国際組織なんかもできるわけがない。ただ、マヌケなやつらの嗅覚のみで異常な広がりを見せている。そして、ノリはそれぞれ違うけど確実につながっていて、お互い助け合ったり利用しあったりし始めている。う〜ん、いいねこれは! どうやっても収拾つかない。
2015年、どの国を見渡しても史上最低の支配者ばかり。押し寄せる凶悪な支配者の波をかき分けるケロッとした大バカの路線で、軽く乗り切っていきましょう〜!! 今年もよろしくー!

 

  

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第85回新ジャンル創出か!?
〜反骨精神旺盛なケロッとしたマヌケな人々〜
」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    2015年の年明けにふさわしい、景気の良いコラム、到着です! なるほど、全国各地、世界各国に「おお、おまえらは仲間だよな」という友達、ネットワークがあれば、これほど楽しくて心強いものはありません。今のような政治的・社会的状況下にあっては尚更。希望を捨てずにのびのび生きていくためにも、今年も松本さんのコラムに注目です。

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まつもと はじめ:「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

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