沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊

「沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊」
が始まります。

 会員制市民ネット「デモクラTV」では「沖縄タイムス・新沖縄通信」という1時間番組を毎月最終月曜日午後8時からオンエアしています(以降はアーカイブでいつでも視聴可能です)。これは「沖縄タイムス」と「デモクラTV」の共同企画で、毎月の沖縄での出来事や、沖縄基地問題などを分かりやすく解説する番組です。さらに「別冊」として、テーマごとに短くまとめた30分間の解説番組を10本制作しました。このコーナーでは、その「別冊」を解説とともにご紹介していきます。

 辺野古の新米軍基地建設を中心に、沖縄が抱える様々な問題はここ数年、ようやく注目を集めるようになりました。しかし、多くの県民が長年、これは「沖縄の問題」ではなく「日本全体の問題」だと訴えてきましたが、県外の関心の薄さは心理的な壁をなかなか越えられてはいません。まだ、大多数の国民の関心事になってはいないのです。
 深刻なのは、悪質なデマがネット空間や、一定の影響力のある人たちによって意図的に流される状況があることです。あたかも、問題が問題でないような言説、あるいは沖縄側に問題があるような情報操作。現実を直視するのをまだためらっている人たちを、心理的に問題から遠ざけ、さらにひどいことに「嫌沖」ムードさえ広めています。
 そこでこの「新沖縄通信・別冊」では、それらの悪意ある「伝説」に絡め取られないように、沖縄側の主張や多くの県民の思いを正しく理解し、考えるための情報を提供します。
 データの見方や分析の視点を、グラフィックを多用して説明します。沖縄と日本の関係、あるいは日本のこれからを展望する主権者としての立ち位置を見定める資料として活用していただければと思います。
 それでは、各回のテーマを挙げていきましょう。まず1回目です。

(第1回)

沖縄の基地負担

 「国土面積の0.6%しかない沖縄に、在日米軍専用施設の74%が集中している」。過重な基地負担を、こう表現します。日本国内には米軍専用施設が306平方キロあり、そのうち沖縄県内には226平方キロもが偏在しているのです。
 しかも基地は沖縄本島に集中しており、本島の面積の18%を占めるほど広いのです。東京23区の約36%程度、大阪市以上の広さです。
 土地だけではありません。米軍が訓練する広大な空域、海域が本島周辺に張り巡らされています。演習時には船舶の航路や飛行空路が制限され、産業面でも影響が出ています。首都圏でも横田基地の管制空域があり、航空機の運航に影響があるのと同じです。戦後、71年も経つのに、米軍優先の区域が地上、海上、上空にもあるというのが日本の現状です。
 最近、在日米軍が「沖縄の米軍専用施設は38%」と、それほど大きくはないとの認識を示しました。また「沖縄の基地負担は23%」という数値も流布されていますが、だまされてはいけません。
 米側が示したのは専用施設の数を単純に比較しただけ。本土の52施設に対し、沖縄は33施設だから、というのです。ちょっと待ってください。米軍自体も言っていますが、基地は広大なものからごく小さなものまで規模はさまざまです。その大小に関係なく施設数で比較するのはフェアでしょうか?
 例えば、嘉手納町にある極東最大の空軍基地・嘉手納基地は、嘉手納町の面積の82%を占めます。基地と運用に一体不可分の弾薬庫を含めた面積は、県外にある三沢・横田・厚木・横須賀・岩国・佐世保の主要基地がすっぽり収まるほどの広さです。それを施設数で比べると、本土6:沖縄1となるわけです。百歩譲って、沖縄が38%の負担だとしても、0.6%の面積しかない沖縄には過重負担であることは間違いないでしょう。
 さらに「23%」はどうでしょう。このカラクリは、日米地位協定で定める自衛隊と米軍の共用施設(主に自衛隊基地を一時使用)を含めて計算しています。共用はあくまで米軍の一時使用です。沖縄のように、年中そこで訓練しているわけではありません。負担を考えるとき、この比較はやはりフェアではありません。
 都合のいい数字をつまみ食いするのは自由ですが、比較の際には、対象の妥当性が大事で、それが評価するときの基本的ルールでしょう。意図的な誘導にはくれぐれもご注意ください。
 こう見てくると、やはり沖縄は過重負担を強いられていると、ご理解いただけるのではないでしょうか。

(宮城栄作/沖縄タイムス東京支社編集部長)

 

  

※コメントは承認制です。
沖縄のことをもっと知ろう「沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊」第1回」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    今週から始まった、この新企画では沖縄が抱える問題や誤解を受けがちなことについて、できるだけ具体的に伝えていきます。なかなか県外には伝わってこない沖縄のこと。私たちの国の問題としていっしょに考えていきましょう。

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