沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊

 会員制市民ネット「デモクラTV」では「沖縄タイムス・新沖縄通信」という1時間番組を毎月最終月曜日午後8時からオンエアしています(以降はアーカイブでいつでも視聴可能です)。これは「沖縄タイムス」と「デモクラTV」の共同企画で、毎月の沖縄での出来事や、沖縄基地問題などを分かりやすく解説する番組です。さらに「別冊」として、テーマごとに短くまとめた30分間の解説番組を10本制作しました。このコーナーでは、その「別冊」を解説とともにご紹介していきます。

(第3回)

辺野古はなぜ「新基地」なのか

 辺野古基地のことを、政府は米軍普天間飛行場の「代替施設」といいますが、計画されているのは単なる替わりの施設とは到底言えません。県民の多くが「新基地」と呼び、反対しています。
 なぜ「新基地」なのか。1800メートルの滑走路が2本に増え、弾薬搭載エリアや270メートル以上の艦船が接岸できる岸壁、タンカーが係留できる貯油施設など、今の普天間にはない機能が幾重にも付加される計画だからです。
 1996年の普天間返還合意の当時は、300~500メートルのヘリポートを、それも既存の施設内に造ると検討されていたのが、いつのまにか海上を埋め立てる基地に変わり、規模も拡大、新機能も集約し、強化された巨大な新基地に膨れあがってしまいました。
 日米交渉の過程で、米側は1960年代に米軍が考えていた辺野古での新基地計画の図面を持ち出してきたそうです。当時の防衛官僚は、巨大な基地の図面に不可能だと一蹴したといいます。しかし、その後、実質的には米軍側が考えていたような巨大な基地と変貌してしまったのです。それも国民の税金を投入して造ろうとしています。米側の要望に唯々諾々と従ってしまう日本。そのおかしさを考えます。
 沖縄の多くの県民は、新たな基地の建設に反対です。それは、「保守県政」であってもそうでした。1999年に受け入れを表明した稲嶺県政も、「15年使用期限」「軍民共用」などとかなり高いハードルを設定しました。政府もその条件を閣議決定していましたが、その後、日米政府の中で十分に考慮されることもなく、結局、現在の計画に決まる際には、条件を反故にしています。あの約束はいったいどこへ消えたのでしょう。
 その後の仲井真知事は2013年に、辺野古新基地の埋め立てを承認してしまいますが、もともとは、普天間の県外移設を主張して2期目の当選を果たしたのです。仲井真知事の「埋め立て承認」は約束違反と言わなければなりません。
 現在の翁長知事ももとは自民党の出身ですが、新基地反対の一点で、革新側にウィングを広げ、保守勢力、経済界の一部を取り込んで、圧倒的な票差で知事になりました。やはり沖縄では新基地「ノー」というのが、ずっと示された民意なのです。
 新基地は海兵隊が使う基地です。その海兵隊の「抑止力」については、多く日米の専門家が疑問を呈しています。世界的な米軍再編で、基幹の主力歩兵部隊は海外に移転することが決まっており、沖縄に残る実働部隊は2000人程度で、あとは司令部要員などになります。
 残る実働部隊は、災害復旧、人道支援、米国人の保護などを出動目的に訓練をしています。したがって、到底抑止力になんかならない部隊なのです。そのために、多額の税金を投入する? おかしいと思いませんか。
 抑止力の議論になると思考が停止してしまいがちですが、実態論を踏まえて考えないと、議論はおかしくなります。
 「軍事的には沖縄でなくてもいい」と、森本敏元防衛大臣も言っているように、普天間飛行場は沖縄でなくてもいいし、もしかすると日本国内になくてもいいのかもしれません。それをなぜ沖縄に押し込めておこうとするのでしょうか、はなはだ疑問です。
 安全保障環境が厳しさをましていると、危機感ばかりあおられます。安全保障環境を改善する別の道を、冷静に考えることも大事でしょう。今の方向で、軍拡に進めばどうなるか。少し考えてみれば、別の選択があることがすぐに分かるはずです。新基地問題を起点に考えてみましょう、日本の将来を。

(宮城栄作/沖縄タイムス東京支社編集部長)

 

  

※コメントは承認制です。
沖縄のことをもっと知ろう「沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊」第3回」 に3件のコメント

  1. magazine9 より:

    辺野古が、「新基地」だと言われるのは、普天間飛行場より規模も拡大するから。このことはあまり知られていないのかもしれません。辺野古基地ができたほうが米軍にメリットがある。これでは、誰のための移転なのか分かりません。これが「負担軽減」なのだと決めるのは、国や米軍ではありません。県民が本当に望んでいることに耳を傾けなければ、基地負担が減ったとは決して言えないのではないでしょうか。

  2. ケツァルコアトル・テスカトリポカ より:

     辺野古基地予定地(205ha)の面積は普天間基地(480ha)の半分以下と伺っております。面積では差引き基地の減少となり、沖縄の負担軽減に繋がると思えそうなのですが、辺野古基地による「基地機能強化」は基地面積減少効果以上の負担増を発生させるのでしょうか。
    それが高コスト基地設置による地元負担増なのか低質な米兵割合増加による犯罪の懸念なのか簡潔な説明がないとなかなか国民の理解は得られないと思います。北方領土が戦後70年でやっとロシアと交渉できるレベルまで来たことを考えれば曲がりなりにも少しずつ基地返還を実現した沖縄は頑張っている方だと思います。武力で奪われた領土を武力以外の手段で取り返すのは非常に難しいということですね。高江の方も中途半端なデモはやめて完全武装の「国土回復義勇軍」を結成し、基地突入、奪還を試みては如何でしょうか。西方の大国から「水面下」で大いに支援を受けられ、一気に目的を達成できるかと思います。

  3. 樋口 隆史 より:

    いや、オキナワに作ることはないです。東京湾を埋め立てて、そこに基地を持ってくればいい。東京は福島原発といい、ヤバいものは何でも遠くに置こうとする。ダメですよ、それ。もともと東京を守ってもらうための代物でしょ?だったら、東京に作らなきゃ。いろいろ困るって?守ってもらうんだから文句言わない。それに、すぐ近くだからミサイル飛んできてもたたき落とせる確率上がるし、テロが起きてもすぐプロが制圧の手伝いをしてくれる。最高じゃないですか。東京の美観だとか自然だとか言うけど、オキナワの人たちのことはどうでもいいんですか?フクシマの人たちを見捨てているように。アタマ来てます。本当に。もっとオキナワを大切にして欲しいです。

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