沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊

 会員制市民ネット「デモクラTV」では「沖縄タイムス・新沖縄通信」という1時間番組を毎月最終月曜日午後8時からオンエアしています(以降はアーカイブでいつでも視聴可能です)。これは「沖縄タイムス」と「デモクラTV」の共同企画で、毎月の沖縄での出来事や、沖縄基地問題などを分かりやすく解説する番組です。さらに「別冊」として、テーマごとに短くまとめた30分間の解説番組を10本制作しました。このコーナーでは、その「別冊」を解説とともにご紹介していきます。

(第6回)

「沖縄振興予算」というまやかし

 毎年、予算編成時期になると、マスコミで「沖縄振興予算」という言葉が大きく報じられます。その額が前年度に比べて増えたか減ったかどうかに注目が集まります。特に政府の沖縄に対する「姿勢」とからめて、現在のように新基地をめぐって対立している場合には、どのくらい減ったかが着目されます。本来はそのような性格の予算ではないにもかかわらずです。
 その報道に付随して「沖縄は他の都道府県より3000億も多くの『振興予算』をもらっている、基地がなくなったら沖縄経済に大打撃で立ちゆかなくなる。沖縄の基幹産業は『米軍基地』だ」などという声が、必ずといっていいほど聞かれます。いまだに多くの国民がそう思っていることはとても残念です。どれも大きな誤解だからです。
 そもそも「沖縄振興予算」という言葉があることが誤解を招いている面もあります。
 他の都道府県は各省庁で予算がつけられているのに対し、沖縄は「沖縄振興特別措置法」によって予算が一本化されているためです。なぜそういうことになっているか。沖縄の戦後史が関係します。
 戦後、日本がようやく占領を脱した後も、沖縄だけは20年間米軍の統治下に置かれたままでしたので、沖縄以外の都道府県が各省庁に要求して地域インフラの整備や教育、福祉、経済振興を図ってきたような経験がありません。そこで復帰にあたり、特別法を設置して沖縄開発庁(現内閣府)が、沖縄県と調整しながら各省庁に予算確保を要求する方式にしました。そのため、沖縄「振興予算」として一括して予算額が明示されるようになりました。そういう歴史的経緯があるため、特殊な計上の仕組みになっているのです。
 他の多くの自治体もとりまとめようと思えば可能です。大事なことは、沖縄だけが通常予算にプラスしてもらっているお金ではないということです。他の都道府県が受け取っている「国庫支出金」と、ほぼ同義のお金と考えれば間違いありません。
 国から支払われるお金を県民一人あたりに換算すると、大震災後に特別に復興資金が注入されている岩手、宮城、福島を除いて、沖縄は6位(2013年度)です。制度の違いが大きく複雑なため、簡単に検証しにくい面もありますが、国から沖縄に入っているお金は、決して少なくはないけれども、巷で言われているほど極端に多い訳でもない、ましてやトップではありません。
 だから「国から多くのお金をもらっているから基地は我慢しろ」という理屈は成り立ちません。しかし、予算制度に政府の思惑が入り込むことによって複雑化している面があります。政治的に利用されやすいため、誤解を受けやすいといえますが、少なくとも普通の自治体以上に優遇されているということはないのです。
 沖縄経済で基地関連が及ぼす経済効果は、復帰時に15%あったのですが、現在では5%程度です。基地にからむ自治体向けの交付金などもありますが、それを含めても6%程度にしかなりません。これで、基地がないと成り立たないと言えるのでしょうか。
 米軍は最近、ホームページ上で「米軍基地の土地収入で県民が潤っている」と主張しています。基地を安定維持するために、政府が土地代を高く誘導してきました。ただ、人の土地を使っているので(それもそもそも奪った土地)、地代を払うのは当たり前のことと言えるのではないでしょうか。政府の意図があり、値上がりが続いていることに、問題がないとはいえませんが。
 返還された基地跡地は活用され、基地が存在していたころと比べて何倍もの雇用と経済効果を生んでいます。
 那覇市の新都心地区、小禄金城地区、北谷町の桑江・北前地区などが代表的な場所でしょう。これら3地区の返還後の直接経済効果は2459億円、返還前は89億円でしたので28倍。働く人の数は返還前に米軍基地で働いていた人が327人で、返還後は2万3564人で、72倍にのぼります。もはや基地は経済の阻害要因というのはそういう事実に基づいています。データに基づいた議論が大事だと思います。

(宮城栄作/沖縄タイムス東京支社編集部長)

 

  

※コメントは承認制です。
沖縄のことをもっと知ろう「沖縄タイムス・新沖縄通信 別冊」第6回」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    美しい海などの自然が豊かで、観光資源に恵まれた沖縄には、いま国内外から多くの観光客が訪れています。基地返還によって、跡地での商業・業務施設、住宅、公共施設等の立地が進めば、返還前よりも経済効果は増加するとも言われています。いったい「沖縄は基地で経済が成り立っている」というイメージを浸透させることで、得してきたのは誰なのでしょうか。

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