時々お散歩日記

 日曜日(6日)、前日までの雨がようやく上がった府中市の中央公園。「府中平和まつり」という催しが開かれるというので、散歩がてらに出かけてみた。広い公園の半分ぐらいを使って、にぎやかに「おまつり」が行われていた(文末の写真参照)。
 予想していたよりも、参加者も出し物も多い、かなり盛大な「市民のおまつり」になっていた。
 フリーマーケット、さまざまな屋台、そしてテントのブース、ステージでは沖縄音楽やエイサー、ビートルズ、歌声隊の合唱、ロックからフォークソングまで…。
 知り合いがラーメン屋さんをやっていた。これがなかなか美味。しかも400円は安い! この日の僕の昼飯は400円ラーメン。
 ぶらぶらと会場を見て回っていると、僕の行きつけの沖縄料理店のおやじさんが屋台を出しているのを見つけた。このおやじさん、沖縄出身。でもなぜかこの日は、おでんを売っていた。
 「沖縄料理はもう売り切れだよ。おでん、残り物だけど、よかったらどう?」
 おやじさん、たっぷりのおでんをよそってくれた。代金を払おうとすると、「いいよいいよ、残り物なんだから」。しっかり味の染みたおでんを、無料で味わわせてもらった。
 で、その日の夕方、つい僕は、このおやじさんの店に飲みに出かけてしまったのだった…(笑)。

 会場には、ほんとうにさまざまな展示が並んでいた。

原発再稼働絶対反対、
福島の子どもたちを守ろう、
広島長崎の原爆被害の実態展示、
憲法改悪を許すな、
集団的自衛権行使容認阻止、
沖縄米軍基地返還、
沖縄高江ヘリパッド建設反対、
オスプレイの即時撤去を、
日の丸君が代処分問題、
子どもと教科書を考える、
TPP交渉反対、
消費増税反対、
高齢者福祉切り捨てに抗議、
生活保護費の切り下げ反対、
労働者の権利を守ろう、府中派遣村、
ヘイトスピーチを許すな、
朝鮮学校支援、
生協運動、
原発コミックの立ち読みコーナー、
フクシマ復興支援マッサージコーナー、
府中駅前に公衆トイレを…なんていうのもあったな。

 ひとつひとつ、ほんとうに大事な問題ばかりだ。みんな、まじめにそれぞれの問題に取り組んでいる。
 この「平和まつり」、僕は昨年もちょっとだけ覗いたけれど、今回のほうが、参加者も展示物もずっと多い。写真で見られるとおりだ。それだけ、取り組まざるを得ない問題が増えてしまったということだろう。
 つまり、安倍政権になってからの急激な右旋回と、財界べったりの経済政策、原発再稼働への超前傾姿勢…などがあまりに露骨になってきて、みんながもう黙っていられなくなった、そういうことではないか。小さな催しにも、そんな空気が如実にあらわれている。
 催し物や展示を見ても、安倍政権になってから悪化の一途を辿っている事態への対応が多い。その意味でも、安倍というのは近来稀に見る極右政治家と言うしかない。

 それにしても、最近の政府首脳の言葉の軽さやデタラメさ、そしてウソは、もはや常軌を逸しているとしか言いようがない。
 例えば、菅義偉官房長官。とめどなく続く福島原発の汚染水漏れについて、記者会見で「これでも安倍首相の言うように、コントロールされているんですか?」と質問されると、シラーっとした顔でこう言い放った。
 「全体としてはコントロールされていると考えています」
 それを見ていて、僕は開いた口がふさがらなかった。これが冗談ではなく、官房長官が公式の場で述べた言葉なんだ!
 「じゃあ、局所的にはコントロール不能の場所もあるってことですね?」と突っ込む記者がなぜいなかったのだろう。
 「綸言汗の如し」という。一度、口から発してしまった言葉は、流れ出た汗のようにもう引っ込めることはできない、という意味だ。菅官房長官は、安倍が世界中が見ている場で口走った「Under Control」を、必死になって守ろうとしているわけだ。番頭さんは、つらい。

 自民党が一度約束したことを平気で破るのは、あまりに当たり前になっているので国民もそれに慣れっこになってしまっているのか、なぜか安倍内閣の支持率は高止まりしたままだ。
 だが、こんな“異常現象”が長続きするわけはないと僕は思う。多分、消費増税がもたらす景気悪化とTPP(環太平洋連携協定)による外圧の重さで、早晩、日本は混乱に陥るだろう。
 あまり問題にされていないが、TPPでは農業分野もさることながら、知的財産権や医療・保険分野、多国籍企業のISD条項による訴訟乱用など、実際は庶民を狙い撃ちする危険な条項がたっぷり含まれているのだ。それらが実行されれば、大打撃を受けるのはいったい誰か…?
 さらに、いまだに国民の7~8割が反対している原発再稼働の強行、解釈改憲や国防軍、集団的自衛権行使など、危ない項目が目白押し。これで安倍政権が長続きするとは、僕にはとうてい思えないのだ。

 しかし、さすがに農業関係者のみならず、誰もが呆れただろう。各紙が一斉に報じた「TPP交渉での聖域見直し」のことだ。東京新聞(10月8日付)はこう報じた。

 安倍晋三首相は八日、バリ島で環太平洋連携協定(TPP)交渉の首脳会合に臨む。首相は年内妥結に向けた「大筋合意」に意欲を見せるが、政府・自民党は自分たちが関税を撤廃させない「聖域」としたコメや乳製品など重要五品目で、唐突に譲歩する姿勢を見せ始めた。撤廃となれば政府方針の大転換で、明らかな公約違反だが、首相は国民に説明しないまま突き進もうとしている。(略)

 こんな大ウソも珍しい。記事も「明らかな公約違反」と書いている。
 TPP交渉参加反対の議員を多く抱えていた自民党は、2012年の衆院選公約では「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加には反対」と言い、2013年の参院選ではその公約を「日本農業を守るために、コメ・麦・牛肉豚肉・乳製品・砂糖の5分野を『聖域』とし、これは絶対に守り抜く」とトーンダウン。
 そして今度は、西川公也自民党TPP対策委員長が「重要5項目を関税撤廃の例外から抜けるか抜けないか、検討はさせてもらわなければならない」と、まったく逆方向の見解を示したのだ。訳の分からない言い回しだが、要するに、これら農業分野を関税撤廃の例外扱いにはしない、と言ったも同然だ。自民党の対策委員長の公的発言だ。
 これを「ウソ」と言わずして何と言う?
 しかも、これに関する石破茂自民党幹事長の言い訳も凄い。朝日新聞(8日付)。

(略)自民党の石破茂幹事長の7日の説明は、「二枚舌作戦」を思わせた。石破氏は、選挙公約で「聖域」とうたった5項目については「関税を撤廃するとは全く言っていない」としながらも、「細目の中で検討するものがあれば検討する」と語った。(略)

 いやはや…。朝日新聞に“二枚舌”と揶揄された石破幹事長。“二枚舌”って“ウソつき”って意味なんだよ、石破さん。
 記者団への石破幹事長の答弁の映像を見たが、例の上目遣いがもっと極端になり、フラフラと目が踊っている。苦しい言い訳であることが、映像からも分かる。
 そして、農業関係者は「激怒」とか「困惑」などと報じられているが、言葉は悪いけれど、僕は「何をいまさら」と思う。
 アメリカが主導する交渉ごとで、自民党がNO!と言ったことなどあったか。分かっていながら、選挙で自民党を応援した「農業関係者」は、いったいどう考えていたのだろう?

 原発事故汚染水問題だって同じことだ。
 ようやく茂木敏充経産相が「東電福島第二原発(4基)は廃炉の方向性」とか、塩崎恭久自民党政調会長代理が「東電の分社化も検討」などと言い出したが、これも「何をいまさら」である。
 茂木経産相の発言は、福島第二の廃炉と引き換えに、同じ東電の柏崎刈羽原発の再稼働を目論んでのことがみえみえだし、塩崎氏の分社化論には「その前に、まず東電の破綻処理が先だろう」と返せば足りる。
 しかも、そんな政府の動きに歩調を合わせるかのように、東芝は原発輸出に狂奔する。朝日新聞(6日付)が伝えている。

 東芝は、英国で原発の新設を進めるフランス、スペインの合弁会社を買収する方向で最終調整に入った。子会社の米原発メーカー大手のウェスティングハウス(WH)によるもので、買収額は少なくとも100億円を上回る見通し。(略)
 東芝は、WH社を含めて原発建設でシェア約3割を占める世界首位。東芝は原発の建設や保守点検といった原子力関連事業の売上高が13年3月期で約5千億円と、連結売上高の1割弱を占める。(略)

 この会社が、原発事業にどっぷりとのめりこんで、身動きが取れなくなり始めている様子が分かる。なぜこうなったか。
 その理由のひとつが、日本の原発メーカーが、製造物責任法(PL法)の適用を免れているからだ。自社で造った原発が事故を起こしても、その責任も賠償も負わなくていいのだ。
 製品が事故や被害をもたらしたときに、それを製造した会社が賠償責任を負う。それがPL法だ。考えてみれば当然の義務だ。だがなぜか、これが原発メーカーには適用されていない。
 日本の初期の原発建設には米大手原発メーカー(WH社やGE社)が大きく関わった。それら米メーカーへ責任が及ばないように配慮した結果だと言われている。ここでも、アメリカの顔色を伺う当時の自民党政権の問題点が浮き上がる。
 東芝に海外の原発会社を買収する金があるのなら、そして企業倫理に照らして原発事故被災者に多少の痛みを感じるなら、その金を原発事故被災者救済に拠金するくらいの倫理観があってもおかしくない。
 いや、そんな企業の良識を求める僕がおかしい…のかもしれない。
 僕は、東芝製品をもう買わないことにした。

 青空がさわやかな日曜日のおまつりだったけれど、いろいろと考えさせられることの多いおまつりでもあったのだ。

 

  

※コメントは承認制です。
154 「市民のおまつり」を歩きながら…」 に4件のコメント

  1. 花田花美 より:

    TPPのことを考えると気が重くなります。
    小泉改革の痛み以上の痛みが出るのだろうか?
    消費税も・・。
    やるなら選挙の前にはっきりやると言うべきです。やり方が汚いです。
    思えば、選挙前はテレビでアホノミクス絶賛の大合唱であった・・・
    あれを見て、自分の商売のことを考えて、自民党に入れた人もいたかもしれない。
    ひどい話だ・・・
    報道の中立性はあるのだろうか?
    報道の中立性をちゃんとしろ!とクレームをつける、うるさい市民にならないといけないのだろうか?
    シビリアンコントロールを目指して。

  2. ピースメーカー より:

    「アホノミクス」って揶揄は、なんだかなあ……。
    ところで先月、ウチの職場に商社勤務のお客さんが来まして、私とTPPの事で話題になり、脱原発でエネルギー戦略を考えるならば、TPPでアメリカやカナダからシェールガスを格安で買えれば、ロシアの天然ガス購入にも有利に働き、脱原発でも安定したエネルギー資源供給が可能なのに、何で脱原発派のほとんどが反TPPなのか、訳が分からんと言ってました。
    脱原発派の人で、誰かこの疑問に答えられる方はいらっしゃるのでしょうか?

  3. 鳴井 勝敏 より:

    「市民のまつり」に高齢者の参加者は多かったのでしょうか。安倍氏と年代が前後する人達だ。事の分別を付けられる人達だ。だから解説、評論はする。だが、「沈黙する善良な市民」と化し、観客民主主義の主たる構成員になっている様な気がしてならない。組織から解放され、時間も充分な筈だ。しかし、疲れ果て半径数メートルの範囲内のことしか考えられない、と言うことだろうか。「安倍というのは近来稀に見る極右政治家と言うしかない。」「最近の政府首脳の言葉の軽さやデタラメさ、そしてウソは、もはや常軌を逸しているとしかいいようがない。」こら等を支えているのは65才以上がが四人に一人と言われる人達の「沈黙する善良な市民」である様な気がしてならない。長寿社会の進行はこの傾向を一段と強めることに違いない。繁殖力が強いからだ。しかし、若者に伝染することだけは防ぎたい。

  4. アンコウ より:

    ピースメーカーさん、
    それは問題の設定がヘンではありませんか?
    脱原発だからTPPに反対している人もいるかもしれません。でも、普通は、あんな事故があったのに原発推進といっている国の方向性に疑問を抱いた問題意識の高い人たちが、「脱原発」を主張するようになったわけでしょう。そして、当然そういう問題意識の中でTPPに対しても、自分の生活に直結する問題だということが分かれば、反対せざるを得なくなる。そういう道筋で、反原発と反TPPがセットなわけではないと思います。
    商社勤務の方の利害意識からすれば、訳が分からんのかもしれませんが、原発さえなくなれば、その他のことはどうなっても良いっていうわけではないでしょう? この程度の理屈でTPP賛成を主張するなんて、訳が分からん、とわたしなどは思います。

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すずき こう

すずき こう: 1945年、秋田県生まれ。早稲田大学文学部文芸科卒業後、集英社に入社。「月刊明星」「月刊PLAYBOY」を経て、「週刊プレイボーイ」「集英社文庫」「イミダス」などの編集長。1999年「集英社新書」の創刊に参加、新書編集部長を最後に退社、フリー編集者・ライターに。著書に『スクール・クライシス 少年Xたちの反乱』(角川文庫)、『目覚めたら、戦争』(コモンズ)、『沖縄へ 歩く、訊く、創る』(リベルタ出版)など。マガジン9では「お散歩日記」を連載中。ツイッター@kou_1970でも日々発信中。

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