おしどりマコ&ケンの「脱ってみる?」

 いろいろ動いてますのに、ご報告が遅れて申し訳ない、と最近いつも謝りから入る私ですが、できる限り書いていきます! 今、移動中なので、酔ってきたけれど、頑張っちゃう。

 DAYS JAPANで、肥田舜太郎先生のインタビューなどの記事や、健康への影響についての記事を書きました(今号のDAYS JAPANは、NHKのETVチームが事故直後のヨウ素の内部被曝についても言及しているのでぜひご覧になってね! ちなみにETVチームがその番組を作るとき「脱ってみる?」も参考にしましたよ、と言ってくださいました☆)。そして、お医者さまがたにもアンケートを取ったりお話を伺ったりしたのですが、心臓疾患、皮膚疾患の患者さんが多い、ということを耳にしました。大人の手足口病や帯状疱疹が流行ったり、原因不明のアレルギーや蕁麻疹、発疹なども多かった、とのこと。なんでかなー? 放射性物質? とおっしゃるお医者さまもいらっしゃいました。

 ところで、植物の奇形の写真を私に送ってくださる方も多いのだけれど、その中のお一人が、「リン酸トリス」という物質が土壌中にあるようです、と教えてくださいました。わ、初耳と思いながら、調べてみると。

 植物の奇形は福島原発事故前からもあって、そこの土壌を調べると「リン酸トリス」が多く含まれている、というものでした。

 そして、ふと気付きました。原子炉から放出されるのは、放射性物質だけかしら? 化学物質もあるんじゃないの? 

 すると、九州電力では原子炉のタービン制御油にリン酸トリスを使用しているようです。

 といいますか、給水処理剤にヒドラジンを、原子炉反応抑制剤にホウ酸化合物など、やっぱり有害化学物質をたくさん使っているのねぇ。

 ん? それにベンゼンは白血病のリスクファクターになるし、スチレンも発がん性があるといわれているよねぇ?

 原発事故でいったい、どれくらいの有害化学物質が環境中に放出されたのかしら? 放射性物質だけしか取り上げられていないけれど、有害化学物質と放射性物質を交絡因子とした調査ってあるのかな?

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 PRTR関連で環境省に電話取材しました。

※PRTR:Pollutant Release and Transfer Register/ 化学物質排出移動量届出制度。有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する仕組み。

 長くなるので電話取材の全文はこちら、要点だけを抜きます。
――平成23年度のデータは平成25年度公表ということですが、それで各事業者からの環境省への提出、というのは大体何月ぐらいに行われるのでしょうか。

環境省「えっと、その前年度の届け出、まあ今年度ですと、届け出は始まってますが、平成23年の4月から平成24年度の3月迄の排出に関しまして、今年の平成24年の4月から6月の30日迄、今年の6月30日は土曜日にあたりますので、7月2日迄に届け出ると、それでその届けたデータを、平成24年度末、ですから平成25年度のまあ、2月か3月ぐらいに公表する、ということになっております」

――すいません、確認致します。平成23年度分を、4月から6月30日迄に提出する、ということなんですね。

 例えば、事故処理で今ヒドラジンやホウ酸などを使っておりまして、それはPRTR法に定められてる物質なんですが、それが6月末までの報告に環境省に上がって来る、ということでしょうか。

 九州電力などのPRTR制度の調査実績を見ますと、通常の原子炉の運営上でリン酸トリスなどの化学物質を使ってまして、これも全部もし事故で外に出ている可能性があれば、東京電力の自己申告で環境省に上がってくるという事なんでしょうか。

環境省「あの、東日本大震災のところの、要は22年度のデータとしては上がってきてるんですけども、今年度のデータというところは多分立ち入りが出来ないので、データとして揃えられる数値とか調べられるかどうかっていうところだと、ちょっとそこは難しいので、原子力発電所の届け出は無いのであれなんですけれども、関連のところに関しましては、いわゆる立ち入り禁止区域ですね、あれに関しましては特例として、届け出、それが解除されるまでは出来ないので、そこに関しましてはあくまでも推計、若くは手元にあるデータで出して頂く、という形になります。ですので、そこに関しましては非常に難しいかなという風に感じております」

(原発事故なので、警戒区域は調査できないってこと?)

――では、東京電力の自己申告がありその後、これで調査ができるところがするという形なんですね。

環境省「ただそのホウ酸とかその辺に関しましては、その業としてというところの、あくまでもPRTRというのは製造業とかいわゆる業としての生産活動、その中でのアレになりますので、今回みたいな所の経緯に関しまして、どうするか、というところはですね、非常に難しいかなと思います。

 ちょっと今、私の方でお答えするのはちょっと、過去のその、事例に照らし合わして一応確認はしてみますが、今の段階でそういった形に必ず出すか、といったところはちょっと難しいかなと、思います」

(そんで放射性物質はこの条文では扱えない、とおっしゃるので、いや、化学物質に関してです、と重ねて聞いてみました)

環境省「はい、化学物質に関しましては、あてはまるものに関してはやっていく、という事で、ただその、測定できる様な形のものでないと非常に難しいので、例えばですね、測定が出来ないようなもの、まあそれも一応国の方で、測定方法を開発して出せるように努力を日々しております。

 例えばですね、廃棄物に関しましては、今、一般廃棄物に関しましては推計というのはあくまでも、政令で定められたものだけでありますが、他の物質とか出てるとかいうところの中でどういった形の物が対象になっているかとか、出てるというのは今その環境省とかの中で研究をして、測定できるような方法を今考案中というような状況でございます。

 それも、火力発電所等、まあ原子力発電所等に関しましてもまあそういったところのアレがある、というところであれば今後そういった形で対策は練っていかなければならないと思いますが、なにぶんその、健康に被害を与える物質がどのくらい出ているかというところが今のところデータとしてまだないという状況なので、何時というところの計画として、というところのものがあるかというと、今後のところの中で検討していかなければならないかな、という感じでありますが、今じゃあその計画があるかというと、それはちょっと今のところありません」

(なんか長々とご説明してくださったけれど、結局…)

――取り敢えず、放射性物質ではなく、化学物質に対する対策は今のところ検討中という事でよろしいでしょうか。

環境省「はい」

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 むむ、では東京電力の会見で聞いてみましょう、全文はこちら。化学物質に関するところだけ、ピックアップします。
――放射性物質ではなく化学物質についてですが。福島第一原発の事故により、どれぐらいの量の化学物質を環境中に放出したか、東京電力では把握されているのでしょうか?

 PRTR法、化学物質排出把握管理促進法では、平成23年度の環境中の化学物質の排出量を事業者が平成24年度の4月から6月末までに提出、提出、届け出をする事になっておりますが、何かその用意はされているのでしょうか?

東京電力松本氏「化学物質の放出量に関しましては、現在、福島第一の事故の状況でどういった法律が適用されるかについては確認させて下さい。

 いわゆる通常の事故でない場合の手続きが基本的に想定されている上で、法律手続きも決まっていると思いますので、今回のような事故が起こっている場合に、どういった法律が適用されている状況なのかについてはちょっと確認します」

――ではPRTR法ではなく、環境中に放出した化学物質の量は把握されているんでしょうか?

東京電力松本氏「評価しておりませんが、いわゆる環境に影響がある程度の物質は、事故の対応にあたっては使っておりません。あの以前、ヒドラジンが問題になりましたけれども、ヒドラジンもいわゆる化学物質の規制のかかる濃度以下の状況で使っておりますので、当然それほど濃いものを使っているわけではございません。

 それから、あと水処理設備関係で化学薬品を使っておりますけども、それもあの、手続きとしてはやっているところです。

 ただ、質問の趣旨にあったような、元々発電所の中にあったような化学物質が、今回の事故で管理ができてない状況になっておりますので、それがまあ、今の時点でどういうふうな法律上の適用がされるかについてはちょっと確認させて下さい」

――ありがとうございます。例えばアスベストや、タービン制御油などにリン酸トリスなどは使用されていたのでしょうか?

東京電力松本氏「アスベストは発電所の中では使っています。ただ、今まで建物の解体等で問題になっている吹付け型のアスベストではありません。

 いわゆる保温材の、なんと言いますか、成型加工をしたものの中に金属容器の中に入れる形で使ったり、弁ですとかポンプのフランジの所にパッキンという形で使っておりますので、今回は建屋の爆発がありましたけれども、こういった吹付け型のアスベストが飛散したものはなかったと思っております」

――あの、ではタービン制御油のリン酸トリスの件は。

東京電力松本氏「添加物についてはちょっと確認します。こちらはいわゆるあの、石油会社さんからタービン潤滑油という形で購入したものをそのまま使っておりますので、その成分を確認させて下さい」

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 この日のぶら下がりで松本さんに重ねて聞いてみました。

――東京電力では、福島第一原発事故で環境中に放出された化学物質の評価は何かしらされているのでしょうか?

松本さん「いえ、今のところやっておりません」
――爆発の影響で、リン酸トリスなどが土壌に沈着している可能性はありますか?

松本さん「土壌ですか? うーん、津波で流されておりますので、海水中には出ているかとは思われますが、土壌にはどうでしょうか。沿岸部の土壌には可能性はあるとは思いますが」

 とのことでした。

 また津波? 絶対、爆発の影響っておっしゃりたくない感があるんですよね。津波で出るなら、爆発とともに出た放射性物質とともに何かしら化学物質も放出されていると思いますけど?

 どんなものがどれだけ放出された可能性があるのか、これも気になってきました。調べていきます。

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 しかし、放射性物質と、発がん性やその他いろいろ有害な化学物質のコンボって最凶なのではないかしら? そういう多因子性の疾患の研究ってないのかしら? と思っていたら、スイスのバーゼル大学の元医学部教授のフェルネックス博士が来日しておられるということで、聞いてみました。

 WHOと共同作業をしておられたり、「チェルノブイリ・ベラルーシの子供たち」というNPOを立ち上げたりされた方ですので。

――放射性物質と化学物質を関係するファクターとした、健康への影響の研究などはありますか? チェルノブイリでも、その他でも?

フェルネックス博士「それは大変重要な、そして難しい質問だ。私は今のところ知らない。が、重要な問題だと思う。とくに事故後は」

 …やっぱりねぇ。あ、私はカタコトの英語で質疑しましたので、このやりとりはおよその要旨ということで!

来日中のフェルネックス博士を直撃!(写真提供 上田道夫)

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 東京農工大の先生に、「どなたか環境中の化学物質の研究されてる方いらっしゃいませんかねぇ?」とお聞きすると、「あ、簡単な実験方法ありますよ、化学物質は水に溶けるものと油に溶けるものとがあって、こうやって抽出して、こうして餌に混ぜて、ここから虫の卵買って、10日間くらいで死亡率見るの! 参照群や、対比がうまく出るような予備実験をして…」などなど、詳しく教えてくださいました。

 どなたもやってくださらなかったら、やっちゃおうかなぁ。

 データを集めて論文を書くだけでなく、実験まで始めてしまいそうになる予感です! どこに向かっているんでしょう、私!? 答えは、せーの、

「未来!」(Byケンパル)

【今週の針金】
もんじゅ君ですねん!あっ間違えた、もんじゅ君ですだよ!

 

  

※コメントは承認制です。
第42回 原発事故で化学物質はどうなったの? の件。」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    相変わらず、というより前にもまして全国を飛び回り中のおふたり。
    マコさん、取材や調査にとどまらず、ついに「実験」まで!?
    放射性物質も化学物質も、原発事故が人や環境にもたらす影響については、とにかくまだまだ「わからないこと」だらけなのだと、改めて痛感させられます。

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おしどり

おしどり:マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2003年結成、芸歴は2005年から。ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。アコーディオン流しを経て芸人に。ブログ:http://oshidori.laff.jp/ twitter:マコ:@makomelo ケン:@oshidori_ken その他、news logでもコラムを連載中。

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