女性が動けば変わる!

福島第一原発事故が起きた2011年の冬、ごく普通の主婦や会社員、若者たちが寒い街頭に立ち、「原発都民投票」の署名を集めていました。「都民カフェ渋谷」は、署名活動を通じて出会った仲間たちで作った市民活動グループです。その後も連絡を取り合い、原発のこと、政治のことについて、自由に意見を交わすイベントを開催しています。
現在、メンバーは東京・渋谷区に住む人を中心に36人。そのうち3分の2は女性で、竹田文子さんは代表代行を務めています。竹田さんは、3・11以前は、市民活動の経験はありませんでした。署名集めから今に至るまで、竹田さんのなかで何が変わり、どう行動してきたのかをうかがいました。

◆「原発をなくしたい」、その思いから初めて取り組んだ市民活動

――これまでの活動内容を教えてください。

 発足当初は、原発都民投票の署名を集めながら、原発に関係する映画の上映会や、トークイベントを毎月のように開催していました。最初のイベントは2012年4月、笹塚ボウル(渋谷区)のパーティールームで、映画『原発、ほんまかいな?』を上映しました。3日間でのべ60人ほどが集まり、多くは、地元の人たちでした。上映会が終わったあとは、グループディスカッションをして、お互いの感想に耳を傾けました。その後、5月と6月に2回、『シェーナウの想い~自然エネルギー社会を子どもたちに~』を上映し、こちらも来場者は20人くらいずつでした。

 原発都民投票は、法定数を上回る32万3076票の署名を集めたものの、残念ながら同じ年の6月に都議会によって、都民投票条例をつくる法案自体が否決されてしまいましたが、それでも「都民カフェ渋谷」は解散にはしませんでした。せっかくつながりができたし、お互いに家も近い。署名集めに奔走した受任者同士、それからも集まって活動を続けてきました。
 同年の11月からは、月1回の4回シリーズで「福島からの声を聞く会」として、郡山市から自主避難された相楽栄子さんのお話をみんなで聞きました。福島の食品汚染のこと、生産者のこと、また福島に暮らす人、避難する人の思いなど、テレビや新聞では伝えられない話を聞いて、もっと多くの方に伝えたかったのです。

――竹田さんにとって、市民活動は都民投票の署名活動が初めてだったそうですね。

 そうなんです。私はそれまで普通の主婦で、署名集めもしたことがありませんでした。都民投票にあれだけ一生懸命になれたのは「ひょっとしたら、自分たちで脱原発を決められるかもしれない」と思えたからです。
 それに、署名を集める過程で出会った上原公子さん(元国立市長)が「民主主義を勝ち取りたかったら、不断の努力が必要」とおっしゃっていて、触発された面もありました。都議会議員へのロビー活動も必要と聞いて、何もつてがないのにアポイントを入れて、都民投票についての意見を聞いたり、チラシを持っていったり。ロビー活動という言葉は知ってはいましたが、自分がかかわるとは思っていませんでしたね。

(「原発都民投票の署名」: 原発の是非を問うため、都民による投票結果を首長や議会に尊重するよう定める「都民投票条例」の制定を求めて署名活動が行われた。住民の発意により、直接に地方公共団体に一定の行動をとらせる「直接請求」は、参政権の一つとして、地方自治法で認められている)

◆地元議員と接点を持つ方法

――ロビー活動までされたんですね! 地元の議員さんとの接点は、どのようにして作ったんでしょうか?

 勉強会、イベント開催に合わせて、地元区議、都議の方々の参加を呼びかけましたが、案内はFAXやメール、手紙ですから、気負わず手配できました。もちろん、断られる場合もありますが、頻繁に参加され、地元の方々と交流を深めておられる議員さんもおられました。いきなり事務所を訪ねてお話を伺うのは緊張しますが、こういう案内を出してみることから始めたり、あとは、地元議員の区政報告会に出てみたりするのも、間近で接するいい機会です。

――2012年12月の都知事選挙では、選挙の応援活動にも奔走されたそうですね。

 これも初めての経験だったのですが、脱原発を明確に打ち出した宇都宮健児さんを応援する「勝手連渋谷」として活動しました。初めて選挙事務所に行って、ポスター貼りやチラシのポスティングをしました。
 また、13年6月の都議会議院選挙では、候補者に取材して独自の政見放送を作りました。渋谷選挙区の候補者全員にアポをとり、自分たちでカメラをまわしました。ネット配信のほか、代々木上原のイベントスペースで放送してもらい、地元の住民に情報を届けました。候補者のアポを取り付けるのは大変でしたが、ねばりにねばって全員と会えました。候補者の方々から直接お話が聞けたのは、良かったです。ああ、こういう人たちが私たち地元の代表なんだということが、よくわかりました。
 ただ、結果的に都知事選は宇都宮さんが当選することにはならず、都議会選も私たちが当選して欲しいと思った人ではなく、再選する人がほとんどでした。

――どんな気持ちでしたか。

 やっぱり残念でしたね。同時に、すごく自分がマイナーな存在であることを思い知らされました。私も3・11の前までは、ビラを配ったり、激しく政治的な主張をしたりしている人が敬遠される傾向にあることは知っていましたが、自分は今、そちら側に入ったんだ、と自覚したのです。でも、こういった社会や政治に対して意見を発することがマイナーであること自体が変わっていかないといけませんよね。

◆市民と政治家が対話することの意義

――そうですね。大変なこともあるかもしれませんが、市民が政治家と直接会ったり、話をしたりすることの意義は大きいですよね。区議会議員とのつながりもできたのでしょうか。

 2013年の5月には、渋谷区議のはるた学さんを通じて、同じ渋谷選挙区の長妻昭議員にお会いしました。2012年に成立した「子ども・被災者支援法」がなかなか進んでいなかったので、都民カフェ渋谷として要望書を提出するためです。要望書には4つの要望案を上げました。その中の一つに、高速バスの運転再開についてがありました。福島から避難してきている笹塚在住の方が、高速バスが復旧せず、地元に帰る時に不便だと訴えていたので、私たちから改善を求めました。長妻さんはこの要望書提出に対して理解を示され、「地元渋谷区からやってみますか」とおっしゃってくれて、国交省に限らず、復興庁、文科省、経産省などの「関係省庁と面談をやりましょう」と提案され、後日数回面談を設定していただきました。
 でも、なかなか一足飛びにはいきません。要望案4点の中で、僅かに動くかもしれないと期待していたのが高速バスの案でしたが、それも結局、新宿駅でバス停のスペースを確保することができず、私たちの要望は通りませんでした。高速バスの事故が多発したため、新たな申請が厳しくなったという理由でしたが、被災者には何らかの配慮があってもよいのではないでしょうか。優先順位がおかしいと思います。

◆地元議会の委員会を傍聴してわかったこと

――市民活動をすることで、思いを共有する人と出会えたり、政治家に声を届けたりできる一方で、地方議会に行くとその現実に驚かれることもあったとか。

 時に無力感を覚えることもあります。今年6月に、「集団的自衛権行使容認反対」の署名を集めて、渋谷区議会に請願書を提出しました。議会の前に、紹介議員が委員会で請願内容を説明するのですが、その委員会の様子を傍聴に行って驚きました。紹介議員は私たちの声を代弁してくれる役割なのですが、請願に反対の与党議員からのヤジがすさまじかったのです。趣旨を説明している途中なのに、話を遮って「憲法96条が何か知っている? 言ってみて」「この話はもう終わっていますから」などと言っていて、議論にならないのです。笑いながらあげ足取りに終始して、結局、請願書は受け入れられませんでした。
 私たちは傍聴していて、市民の思いというものをまったく理解をしようとしていない様子を目の当たりにしました。なぜこのような請願書を提出したのかを分かろうともしないのです。

――区議会や委員会を、もっと大勢の人が傍聴するようになるといいですね。

 あの委員会を見たら、きっと多くの人が呆れると思います。地元の議会や委員会への傍聴の手続きは簡単です。会議の当日、区議会事務局で名前や住所を記入し、傍聴券をもらえば誰でもすぐに傍聴できます。ぜひ、地元の議会に足を運んでみてほしいですね。自分たちの税金を使ってこんな議論をしているのかと、誰もが目が覚めるはずです。

――そうした市民活動に参加する女性としない女性は、もちろん時間があるか無いかなども関係しますが、意識の面で何か違いは感じられますか?

 「政治と生活は別ではない」と思うかどうかではないでしょうか。原発にしても、集団的自衛権にしても、大きな話のようで実生活に必ず影響がありますよね。女性で市民活動を始めた人は、政治と生活が密着していることに気づいたように見えます。

◆生活と政治は密着している。楽しむ気持ちを持って「不断の努力」を続けたい

――逆に言うと、心のどこかで政治と生活を切り離して考えていると、行動に結び付きにくいのかもしれませんね。

 私自身、原発都民投票まで市民活動をしていませんでしたし、普段、主婦友達とは政治や原発のことをあまり話しませんでした。知り合いのママのなかには、署名をお願いすると「主人の意見を聞かないと…」「そういうのは嫌いだから」と言う人もいます。
 都民カフェのあるメンバーは、子どもの通う小学校で都民投票の署名を集めると、あとになって「学校でそういうことをするのはどうなの?」と言われたそうです。先生に手紙を書いたうえで保護者会のあとに話して、賛同する人にお願いしたのに…。
 一方で、「初めて自分で考えた。ありがとう」と言ってもらえることもあります。

――すべてすぐによい結果をもたらさないにしても、その一言から自分で行動を起こす意義を感じますね。

 そうですね。大変なこともたくさんありますが、これが上原さんの言っていた「不断の努力」なのかな、と思って活動を続けていますし、一度知ってしまったこと、わかってしまったことに対して、見て見ぬふりはできないじゃないですか。

――最後に、突然年内に決まった総選挙と、来春の地方統一選挙に向けて、やりたいと思っていることはありますか?

 まだ模索中ですが、ツイッター(@tomincafe_sy)やブログ(tomincafeshibuya.blog.fc2.com/)上で、地元選挙区の情勢など発信できればと考えているところです。今は、「原発都民投票」の署名集めの時のような、危機感や使命感、 高揚感からは随分かけ離れた地味な活動ですが、人任せにしないために何が出来るのか、その時々で考えて動いていきたいです。悲観的にならず、楽しめる気持ちは  忘れずにいたいと思っています。

 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、
「女性たちのネットワークをつなげ広げることが、
原発など環境問題の解決への大きなパワーとなる」とし、
「グリーン・ウイメンズ・ネットワーク」をスタートさせました。
グリーン・ウイメンズ・ネットワーク

 

  

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〈政治参加編vol.2〉3・11から始まった身近な政治参加。仲間が広がり市民活動グループとなって、政治への働きかけへ。」 に1件のコメント

  1. magazine9 より:

    地方議会を傍聴した竹田さんの言葉をお聞きして、以前にも元地方議会議員の女性から「いかに地方議会が形骸化しているかに呆れます」とうかがったことを思い出しました。「だからこそ、陳情書などを持ってどんどん地方議員に会いに行き、女性票を意識させ、変えていってほしい。それでだめなら、自分たちのなかから立候補をだせばいい」と。
    竹田さんたちのような動きを、ネットワークを広げながら全国各地で行っていけば、きっと変えられます。地方が変われば国を変えられる――来年の統一地方選にむけて、動き出しましょう!

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グリーン・ウィメンズ・ネットワークとは
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの女性スタッフの呼びかけで2013年9月よりスタートしたプロジェクト。各地に点々とちらばっている同じ想いの女性たちがつながって、線となり束になって大きな声を政府、企業に届け、環境問題を解決に導くことを目指しています。
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