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2010-02-23up

伊藤塾・明日の法律家講座レポート

2010年12月18日@伊藤塾本校

「けんぽう手習い塾」でおなじみの伊藤真さんが主宰する、資格試験学校の伊藤塾では、
法律家・行政官を目指す塾生向けの公開講演会を定期的に実施しています。
弁護士、裁判官、ジャーナリスト、NGO活動家など
さまざまな分野で活躍中の人を講師に招いて行われている
「明日の法律家講座」を、随時レポートしていきます。
なおこの講演会は、一般にも無料で公開されています。

弁護士としてのこれまで、そして、これから。〜伊藤塾出身の若手弁護士が熱く語る〜

講演者:
箭内隆道さん
(弁護士、「虎門中央法律事務所」所属)
大久保涼さん(弁護士、「長島・大野・常松法律事務所」所属)
阿南剛さん(弁護士、「潮見坂綜合法律事務所」所属)

今回の講師は、箭内隆道さんと大久保涼さんが53期、そして阿南剛さんが54期という若手弁護士であり、司法試験合格後、共に伊藤塾でさまざまな経験を積み、その後ビジネス弁護士となり現在も活躍中の3人です。伊藤塾で過ごした日々を振り返りつつ、合格後の時間の有効な使い方や現在のご自身の仕事、そして「これからの目標」などについて講演がありました。その概要を紹介します。

●合格後、「修習」までにやったこと

阿南さん: 私は大学3年生の時に司法試験に合格しました。その後、伊藤塾で講師のアルバイトをしていたのですが、「今しかできないことをしたい」という思いが強くありました。で、その頃読んだ沢木耕太郎の『深夜特急』に影響を受け、バックパッカーとなり、チベット、インド、パキスタン、イラン、トルコ、カンボジア、ラオスなどを放浪していました。その頃の経験が弁護士の仕事に活きているか? と問われればそれは、「特にない」と答えるしかありません(笑)。でも自分が見たい、と思ったものには、どんどんアクセスした方がいい。修習までにやらなくてはならない、ことはありませんし、点がつくのは「司法試験」までですからね。

大久保さん: 私の場合は、4、5ヶ月の自由な時間があったわけですが、その間、伊藤塾で講師のアルバイトと英語塾で中高生に英語を教えていました。アメリカの司法制度に興味があったので、自ら視察旅行を企画し、コーディネーター役もかって出て、50名の合格者を集めてツアーを実施しました。この時の体験が非常に刺激的で、将来は国際的な法務の仕事をしたい、と強く思いましたね。その後、現在の事務所に入ったのも、留学してアメリカのロースクールに行ったのも、やはりこの時の経験が元になっています。

箭内さん: 私は司法試験の勉強を長くやってきていたので、その分たくさんの人にお世話になってきました。伊藤塾では合格までアルバイトをさせてもらっていましたし、合格後も期間雇用社員としても働かせてもらっていました。ですから合格後は、お世話になった人に恩返しをしたいという気持ちが強くありましたね。またものすごく自信というか前向きなエネルギーが湧いてきて、自分の興味のある人の講演会を企画したり、ということもこの時期やりました。

●現在の自身の仕事とそこに至るまで

箭内さん: 修習生の時、企業法務の講座で「民事介入暴力(民暴対策)」についての話を聞いた時、これこそ「正義」だと思い、今の事務所に入り、2004年から2009年までは、東京弁護士会民事介入暴力対策委員会に入っておりました。しかし社会状況の変化もあり、現在ではM&Aに関する業務も行うようになりました。

大久保さん: 国際的な法務の仕事をしたいという希望がかない、この10年間ほどM&A専門の弁護士としてやってきましたが、その内容をふりかえってみると、まさに時代の激しい移り変わりを強く感じます。例えば、新人のころは「out in」といって外国、特に欧米の会社が日本の会社を買う案件が多くありましたが、最近は「in out」といって日本の会社が外国、特にアジアの会社を買う、というケースの法務が多くなりつつあります。
 事務所に入って4~5年してから、シカゴ大学のロースクールに留学しましたが、この時は日本という国を外国人がどのように見ているのか? ということがよくわかりました。彼らにとってアジアといえば、中国かインドなんですね。また中国人留学生が大勢いることも、行って初めてわかったことでした。
 ここ数年は、M&Aにおいてもアジアの企業との関わりが増えましたね。英語ができる弁護士の需要は昔から高いですが、中国語のできる弁護士の需要もこれからはどんどん増えていくでしょう。

阿南さん: 日本の多くの弁護士が行っている「訴訟」を、私も行っています。
 訴訟は案件によっても、裁判官や代理人によっても、結論(判例)が違ってくるものです。そういった何もかもが手作りというか、依頼者と苦楽を共にするところがありますね。一瞬たりとも気が抜けない仕事でもあり、そこがおもしさを感じるところです。「訴訟」は、新人弁護士であっても、良い証拠を見つけてくれば勝てるのです。そのためには積極的に証拠を探してくる、証拠集めをさぼらないこと、が大事ですね。

●これから法曹を目指す人へ

箭内さん: とにかく悔いのない時間の過ごし方をしてください。私自身は伊藤塾を中心とした仲間と一緒に過ごせたことが楽しかったし、充実していました。実務家になるための土台づくりのようなものができたと思っています。あと自分自身のこととしては、時間のあるうちに、英語を真剣に勉強していたら良かったなとは思います。

大久保さん: 司法試験に合格するまでは、とにかく法律の勉強だけをやっていた、という人が多いと思います。 合格後は、見聞を広めるのでもいいし、英語や中国語などの語学の勉強をすることもおすすめですね。また仕事は30年は続けていくことになると思うので、自分の「好き」は何なのか、見つめ直すこともいいと思います。

阿南さん: 最近はしばしば「弁護士になっても仕事がない」などという前向きではないニュースを聞きますが、これからは、弁護士が受け身でいるのではなく、自分で積極的に動く、という時代なんだと思います。

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まずは自分の「好き」は何なのかを見つめ直す、
見たい、やりたいと思ったことにはどんどんアクセスする…
法曹だけではなく、どんな道を志す人にとっても、
心に留めておきたいアドバイスと言えそうです。

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