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2010-12-01up

フリーランスライター 畠山理仁の「永田町記者会見日記」~首相官邸への道~

第27回

ついに出た!「記者クラブを震撼させる新刊」

 皆様、ご無沙汰しています。フリーランスライターの畠山理仁です。
 久しぶりの連絡といえば「宣伝告知」です。告知の恋人、ロッテです。

 本日12月1日、『マガジン9』で連載していた「永田町記者会見日記」が一冊の本になりました。この本は同連載に大幅加筆し、連載未収録の原稿や、新たに行なった亀井静香前郵政改革・金融担当大臣、岡田克也前外務大臣、原口一博前総務大臣へのインタビューも収録しています。これまで連載をお読みいただいていた読者の方も楽しめる作りになっていますので、ぜひご一読いただければ幸いです。
 なお、印税の一部は『マガジン9』編集部にも入るようになっています(本当に一部ですみません)。どうぞご支援をよろしくお願いいたします。

『記者会見ゲリラ戦記』
(畠山理仁著・扶桑社新書・288ページ・本体760円+税)
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2010年11月29日@民主党本部

「なぜあれから「国会招致断念」という報道になるのか、少し不思議に思っている」
(民主党・岡田克也幹事長)

 私は昨年秋の政権交代直後から、1年以上にわたって「記者会見オープン化」の現場を歩き続けてきた。新聞やテレビなどのマスメディアが多くの記者や高級な機材で取材を続ける中、私は“貧者の武器”ともいえる無料サービスのツイッターやユーストリームを活用しながら、世界的に見れば「滑稽なゲリラ戦」を展開してきた。

 本来であれば、この連載が長く続くことなどあってはならない。ましてや一冊にまとまって世に出てしまうなんて「異常事態」だ。ずっとそう思っていた。

 でも、拙著『記者会見ゲリラ戦記』は、世に出てしまった。

 著書が出て嬉しい半面、悲しくもある。本当はこの本が出る前に、早く記者会見が「普通のもの」になってほしいと願っていたからだ。

 この本の大きなテーマは「記者クラブ」問題だった。私が指摘したかったのは「記者クラブは情報を独占することにより、“報じない権力”を行使している」ということだ。一般の方には馴染みのない話題だから、楽しい読み物になるよう、できる限り驚きや笑いを交えて綴った。だから「ふざけすぎ」というお叱りも甘んじて受けるつもりでいる。

 ここで柄にもなく真面目な話をしたい。みなさんにぜひ知っておいてもらいたいことだ。
 人の手を介して「報じられる情報」は「事実の全て」ではない。すべて「編集」という作業を経た「一部」である。編集をするのは人間。そのため報道が常に正しいとは限らない。
 もちろん、報道に携わる人間は常にそうした制約の中でも良質な報道を続けようと思っている。それでも時には「間違う」ことや「曲がって伝えてしまう」こともある。また、その場にいる人間が横並びで報じなければ、その事実は「なかったこと」になる可能性もある。
 これは記者クラブに限らず、私の発言に関しても同じことが言える。誰の情報が常に正しいとか、間違っているとか、一概には言えない。読者が自分の目で「現場に行く」ことが無理な場合、読者にも情報を吟味する目が求められているのだ。

 ところが「記者会見のオープン化」が進むことによって、従来の「異常事態」は解消されつつある。多様な記者が「公の会見」に参加しはじめたことにより、より多様な情報が受け手にもたらされることになった。これまで「一部」しか伝えられなかった記者会見の情報が、「ノーカット」で見られる時代が来た。これは「政治の現場で起きていること」と「報道」とのギャップの検証が可能な時代になりつつあることを示している。
 一見、国民には全く関係ないように思える「記者会見のオープン化」は、本当は「国民の知る権利」「情報公開」と深く関わっているのだ。

 さて、そんなことを綴った本書の発売を目前に控えた11月29日。民主党本部で開かれた岡田克也幹事長の記者会見の冒頭、岡田幹事長からはこんな発言があった。

 岡田幹事長:今日は役員会を開催いたしまして、小沢元代表の国会招致に関して意見交換を行ないました。『国会招致断念』という一部の報道がありますが、私がどういうふうにお話ししたかという議事録も持っています。なぜあれから「国会招致断念」という報道になるのか、少し不思議に思っているところであります。

 問題の記事は、11月27日に三重県川越町で開かれた岡田幹事長記者会見での発言がもとになっている。「一部報道機関」は岡田幹事長の「発言の一部」をクローズアップし、「国会招致断念」との見出しで「今国会での小沢氏招致を断念する意向を示した発言」と報じたのだ。これは明らかに岡田氏の意図が“曲げて伝えられた”例だ。
 なお、「一部報道」は私の知る限り、時事通信、読売新聞、産経新聞、毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞で行なわれていた。おそらく時事通信が配信した記事が元になっているのだろうが、ほとんど全紙だ(笑)。

 それではなぜこのようなギャップが生じたのか? 私はこの日の会見で、岡田幹事長の『反論』を聞いてみた。

畠山: 幹事長は「なぜあの発言から国会招致断念となるのか、少し不思議に思っている」とおっしゃいました。幹事長ご自身、発言と報道との間にギャップが生じる理由について、なにか思い当たるフシはございますでしょうか?
岡田幹事長: 私はかなりクリアに発言しているつもりですし、注意深く発言しております。それを注意深く受け取っていただくといいわけですが、必ずしもそうではない場面があります。
 この「小沢元代表の今国会招致断念」という報道ですが、(記者からの)質問は「今国会ではもう難しい。次の国会にどうするのか」という趣旨だったんですね。それに対して私は「そういうことは必ずしもない」ということで、「次の国会に送る」という(前提での記者からの)質問に対して、それを打ち消しているわけです。
 その上で、「今の臨時国会での国会招致を不可能にしているのは野党の審議拒否もある」ということを申し上げた。そのうちの後段部分のみを取り上げて「断念した」と言っておられるわけですが、その前段部分で私は明らかに質問者に対して打ち消している(笑)。どうしてああいう表現、報道になるのか、私は納得していないわけです。
 党としても、私自身も、なるべくどういうやりとりがあったかという全文を明らかにすることで読者の皆さんに判断していただこうと思っているところです。
 この記者会見も、できましたらネットなどで全部放映されますと、それだけ、より国民の皆さんに私が何を述べているかということが理解されることになるのではないかと期待しているところです。

 ちなみに岡田幹事長の締めの言葉は、次のとおり。

 岡田幹事長: 最近、あまりニコニコ動画さんとか来てくれませんけれどもね(笑)。

 そこで記者会見は終了。ところが会見終了後、私は現場にいたベテランジャーナリストから叱られてしまった。

 「あそこで終わっちゃダメだろ! どうして『ニコニコ動画が来ないのはアンタに人気がないからだ!』って言わないんだ!」

 質問する記者の側も、ある意味『権力』となりうる。当然、国民の厳しい監視の目にさらされなければならない。
 今後も皆様からのご指導、ご鞭撻(アチャコ)をお願いしつつ、新刊発売のお知らせでした。

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フリーランス記者にとっては、
「永田町記者クラブ」という前人未到の地に、
1年間にわたりほとんど寝ないで 「ゲリラ戦」を次々と展開していった畠山さんの、
情熱と勇気と茶目っ気が伝わってくる渾身の1冊。
是非、お手にとって、お読みください。


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当選された方は、この本のレビューをアマゾンやブログ、
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※申し込み締め切りは、12月8日(水)です。
(当選の発表は発送をもってかえさせていただきます)

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畠山理仁さんプロフィール

はたけやま みちよし1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。 昨年9月18日、記者クラブ加盟社以外にも開放された外務大臣記者会見で、フリーの記者として日本で初めて質問。今年1月22日には、東京地検からの事情聴取直後に開かれた小沢一郎・民主党幹事長の記者会見を、iPhoneを使ってゲリラ的にインターネットで生中継し注目される。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。

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