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2012-07-25up

佐藤潤一の「カエルの公式」

第7回

脱原発のために
あなたが最初にできること。
「“先生”政治」に終わりを告げる

パブコメ書きましたか?

 前回の「カエルの公式」でご紹介した原発の行方を決める議論への意見募集(パブコメ)ですが、多くの人から「送ったよ!」とメッセージをいただいています。

 まだ送っていない方、「パブコメってなんだ」という方は、ぜひこちらをご覧ください。

脱原発のためにあなたが最初にできること

 今回は、本来第一回の「カエルの公式」で書くべきだった内容で、脱原発、いやそれだけではなくあらゆる社会問題を解決したいと思っている人たちが最初にできることについて書きたいと思います。

 それは、自分の意識を変えること。

 「あー、またそういう意識論ね」との声も聞こえてきそうですが、かなり具体的な成果が期待できる有効な方法だと思いますので、最後まで読んでください…(苦笑)。

あなたも経営者

 あなたは自分が経営者であることをご存知ですか? 
 すべての国民が日本という国の経営者の一人です。

 戦後、日本の憲法ができたとき、当時の文部省が作成した中学一年生向けの教科書には、以下のように書かれていたそうです。(後述する、日隅一雄さんの本から引用しました)

 「もうすぐみなさんも、おにいさんやおねえさんといっしょに、國のことを、じぶんできめてゆくことができるのです。みなさんの考えとはたらきで國が治まってゆくのです。みんながなかよく、じぶんで、じぶんの國のことをやってゆくくらい、たのしいことはありません、これが民主主義というものです」 (「あたらしい憲法のはなし」1947年8月)

 この「じぶんで、じぶんの國のことをやってゆくくらい、たのしいことはありません」という感覚は、とても重要なのに私たちがいつの間にか手放してしまった感覚かもしれません。

「“先生”政治」に終止符を

 「専制政治」という言葉があります。いわゆる独裁政治です。

 一方で、これまでの日本は「“先生”政治」だと言えます。議員を「先生、先生」と呼んでおだてながら利益誘導をしてもらうのが政治の本質だったからです。国民の意思ではなく、業界団体や官僚の意思が「“先生”政治家」をつくりあげ、おいしい蜜を吸うために政治を動かし、利権を築き上げてきたという構図です。

 そんな政治は、全盛期を過ぎたように思えますが、まだまだ過渡期。その政治が残した、もしくは現在進行形で残している原発だとか、借金だとかの負の遺産に今の世代、そして次の世代が苦しめられていると言えます。

 「“先生”政治」が完全になくならないのは、複雑に絡み合って日本社会に根付いてしまった利権構造が原因でしょう。しかし同時に、私たち自身が議員や官僚への「お上」意識を変えられていないことも原因だと思います。つまり、議員や官僚は「エライ」「普通の人が接触できない」という特別な存在であるという先入観です。

議員や官僚はエラくない

 繰り返しになりますが、私たちが変えなければいけない意識は、「政治家や官僚が国民よりエライ」という意識です。

 もちろん、「政治家や官僚を侮辱してもよい」と言っているわけではありません。政治家や官僚は、国民から委託されて政治や行政を行っているのですから、国民が彼らを「先生」のように感じて、意見を言うことを躊躇する必要はないと言っているだけです。

 冒頭に「あなたはこの国の経営者の一人」という表現をしました。私たちは税金を払って議員や官僚を雇っている側だということを意識してほしかったからです。そう考えれば、議員に電話するのも、政府に意見を送るのも遠慮することはないと思いませんか? 議員に「お願いする」という感覚ではなく、しっかりと経営者の一人として部下に意見を伝えるぐらいの感覚を取り戻すべきだと思います。 

 もちろん、有能な経営者は、偉ぶったり、ただ怒鳴りつけたりはしません。良いところは褒め、だめなところは指摘するという良き経営者として、政治に参加する感覚を取り戻すことが必要だと思います。

日隅一雄さんの言葉 「主権在官」

 実は、このブログを書こうと思ったのは、故・日隅一雄さんの「主権者は誰か?」という問いかけをみなさんにもっと知ってもらいたいということからです。

 日隅さんは、大手新聞社の元記者という経歴を持つ弁護士でした。自らNPJ (News for the People in Japan)という市民メディアを立ち上げ、ジャーナリスト活動も続けていましたが、6月12日、癌のため49歳という若さで他界されました。

 東電福島第一原発事故後、東電と政府の合同記者会見にフリーの記者として参加すること110回、弁護士で記者という厳しい目で、政府や東電への追及をやめなかったことで多くの方に支持されていました。

 日隅さんは、今の日本が「主権在民」ではなく、「主権在官(官僚に主権がある)」だとして、「市民が主人公となる社会のために主権を取り返さなければいけない」と語り続けていました。

<資料:私の日隅さんとの出会いは、こちらから>
故・日隅一雄氏の「主権者は誰か?」という問いの重要性/

Public Servant(国民に仕える人= 官僚、公務員)

 実は私も、数年前まで「主権在民」というのを強く意識したことはありませんでした。ただ欧米で議員や官僚と面会するときに、なぜ彼らは偉そうではないのかと思うことは多々ありました。

 先日ドイツに行ったときに面会した官僚に「政権が交代したら、官僚として新しい政策に対応するのは難しいですよね」と何気なく聞いたら、「この国では、国民の意見が変われば柔軟に対応できるようにするのがPublic Servant(国民に仕える人=官僚)として優秀な人材とされています」とさらっと英語で語っていたのが印象的でした。

 そんな社会を実現するためには、まず私たちの「議員や官僚はエライ」という「お上」意識を払しょくして、気軽に議員や官僚に電話したり意見を送ったりすることから始めませんか?

資料:「徹底分析 日隅一雄 2012年3月30日 映像 IWJより」


2012年3月30日に、「徹底分析 日隅一雄」というイベントが開催され、私も日隅さんと対談をさせていただきました。映像の42分30秒ころから約18分が私と日隅さんの対談です。いつも明るく、ときに厳しいお人柄がよく伝わります。

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何か困ったことや嫌なことがあれば、
どこかの「エライ人」がなんとかしてくれる。
そんな姿勢がときに独裁者を呼び込む危険性は、
すでに多くの人が指摘しているところ。
脱原発だけでなく、私たちの「目指したい」未来を作る一歩は、
「人任せ」意識からの脱却からはじまるのかもしれません。

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佐藤潤一さんプロフィール

さとう じゅんいち グリーンピース・ジャパン事務局長。1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中に、NGO「リザルツ」の活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato