松崎菊也の笑うニュース・クイズ：２
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柳沢大臣、年金問題を語るよ
まつざき・きくや 戯作者 1953年、大分県別府市生まれ。劇団民芸の演出家を経て、88年、社会風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」に参加。99年独立。現在、風刺コントの台本を書きつつ政治風刺ライブを展開中。ＴＢＳラジオ荒川強啓デイキャッチ・毎週月曜日の名物コーナー「あの人の独り言」で、権力者になりすます爆笑一人芝居を生放送中。『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでコラムを執筆。著書に『一瞬の沈黙』『巷は勘違いに満ちている』『男が捨てられた夜』（いずれも三五館）、『コメディアン』（実業之日本社）、『松崎菊也のひとり天誅！』（毎日新聞社）など。
どうもこの大臣は、法的な根拠がある発言は許されると思っているようだ。年金納付記録が５,０９５万件も消えた問題について、国会での答弁はどれも人を食ったものだった。５月２３日の衆議院予算委員会で、民主党の長妻昭委員によって「消えた年金記録」を国が調べるのが筋ではないか、と追及された際に、柳沢大臣は何と答えたか？ 次の３つからホンモノの答弁はひとつだけ。あとはわたくしの妄想である。
−質問−
衆議院予算委員会での
「消えた年金記録」に関する追及に対する
柳沢厚生労働大臣の回答は、次のうちどれ？
- 1.自分の年金記録が変だ、と思う方も多いと思うので、国が責任もって調べてご報告するのが筋であろうというご指摘は甘んじて受けたいと思います。ただし、この調査がどれぐらいの手間と日数がかかるか、につきましては今すぐにお答えできかねます。
- 2.自分の年金記録が変だ、と思う方も多いでしょう。こちらから全部の記録を調べて、「これはどうも違っている」というモノが見つかれば、逐一ご本人にお知らせをいたしたいと思います。これは、そうとうな手間と時間がかかることだけは申し添えます。
- 3.自分の年金記録が変だ、と思う方がおられたら、ぜひわれわれに申し出ていただきたい。年金は社会保険方式でして、申請主義という法的な仕組みですから、こっちからやります、というわけにはいかないのでございます。
正解はな、な、なんと３番！（衆議院インターネット審議中継より抜粋）。柳沢厚生労働大臣は、自分の年金記録が変だと思ったら社保庁に申し出ろ、と言ったのだ。申し出れば調べてやるよ、と言ったのだ。年金はいったんみなが出したカネを国が管理して再分配までしてやるが、基本的にテメエの老後の面倒はテメエで見るのが筋だろ。言って来ればしぶしぶながら調べてやるよ。と言ったのだ。
わたくしは、安倍内閣にとってこの発言が致命傷になると思っている。役人出身の大臣は、発言したことが如何に法的な根拠を持っていようとも、言下にひそむ「ニュアンス」を理解しない。「いいじゃん、だって法律で決まってるんだもの」と言っちまうことが、どれだけ反感を買うか、皆目分かっていないのだ。おなじく、「女性は子どもを産む機械だ」ということも法律で決まっているのかと問われれば、この大臣「我が国は思想信条表現の自由が国の最高法規で保障されている」と居直る腹か？ こやつアホを通り越している。
総理がいまさら「年金時効停止特別措置法案」なる参議院選挙対策を出してきた。「１年で調べます！」と街頭演説でさかんに訴えているが、もう遅い。
支持率急落で痛切に感じていることは、このひとことに尽きよう。 大臣をかばいすぎると墓穴を掘る。
