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ムリを承知で読み解くコラム!
「マガ」と「ジン」のコラムリコラム第3回
「おお、「貧者の埋蔵金」!?」

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ジン突然だけど、キミはカードをどのくらい持ってる?

マガそりゃあいっぱいあるよ。近所のスーパーのカードまで数えると、10枚は超えるかも。でも、なんで急にそんなことを聞くわけ?

ジンその中にはもちろん、銀行のキャッシュカードや信販会社のクレジットカード、消費者金融のカードなんかもあるわけだよね。

マガあ、僕は幸いにも消費者金融には手を出さずに済んでいるから、そっち系のカードはないな。でも、信販会社のクレジットカード、銀行のキャッシュカード、ガソリンスタンドのカードとかデパートのカードとか、そう言われればいつ作ったのか作らされたのかもわからないカードも、けっこうあるね。

ジンま、みんな似たようなものだけど。そういうカードをたくさん持っている人ほど、多重債務者の可能性があるわけだ。

マガそれはそうだろうな。

ジン朝日新聞の政策面のコラム「政策ウォッチ」(5月23日)が、次のように書いていた。

<貸金業法改正 まず多重債務者の支援を  警察庁が先日、08年の自殺者数を発表した。原因・動機のうち「多重債務」が前年より1割減ったが、看過できないのは、「事業不振」や「生活苦」が各1割増えたことだ。こうした人たちの中には高金利に苦しんでいた人たちもいたとみられる。  来年6月までに上限金利の引き下げや借り入れ限度額を規制する改正貸金業法が完全施行される。ただ、完全施行の前に見直すという規定があり、貸し金業界や一部の政治家が金利引き下げに反対している。「貸金業者の経営が悪化し、結果として、零細企業が借金できなくなる」などの理由を挙げる。今後、こうした動きは活発化しそうだ。(以下略)>

 つまり、金利引き下げや借り入れ限度額の見直しというのは、多重債務者を作らないための考え方だが、それを見直すということは、借金漬けでにっちもさっちもいかなくなった人の救済よりも、貸金業者保護の面が強いということになる。零細企業に貸し渋る大手銀行の責任は問わず、消費者金融業者にはいい顔をする。しかも、大手銀行は消費者金融やクレジット会社を傘下に収め、そこへ融資することで莫大な利益を上げている。それに手を貸す政治家もいるし、それを煽る評論家もいる。

マガなるほど。そういう動きがあるんだ。どっちを向いて政治をやっているのか。

ジン例えば自民党には「中小・零細企業資金繰りを憂える会」というのがあって、平将明衆院議員なんかが中心人物だけど、このグループがそういう主張を繰り返している。木村剛氏(日本振興銀行会長)も同じような主張をしているけど、この日本振興銀行は、悪名高かった商工ローンのSFCGから多額の債権を買い取って受け継いだことでも大きな批判を浴びたんだ。

マガなるほどね。それで僕にカードの枚数を聞いたわけだ。確かに、自殺の大きな原因のひとつは、多重債務だよね。健康上の理由っていうのが、毎年自殺原因のトップだけど、それだって貧困からくる鬱病という面もあるはずだし。

ジンということで、ここまでは前置き。実は、今日は1冊の本を紹介しようと思ったんだ。このカードにまつわる本だ。なにしろ、テーマはとっても深刻な話なんだけど、実はこの本、メチャクチャ笑える。本気で最近、こんなに笑った本はないね。

マガ深刻なテーマだけど、笑える本?

ジンこれは『貧者の埋蔵金 過払い金を取り戻せ!!』(明石昇二郎著、集英社、952円+税)という本。サブタイトルに「実録ドキュメント キミにも簡単にできる、返しすぎた借金の奪還術」とある。

マガ同じような話、どっかで目にしたことがあるな。

ジンそうかもしれない。実はこれ、「週刊プレイボーイ」に連載されて、大反響があった記事に加筆したものなんだ。

マガ道理で。電車の中吊りか新聞の広告なんかで見たのかな。で、何がどう笑えるわけ?

ジンなにしろこの明石さん、半端じゃないカード中毒。借りては返し、返してはまた借りる、その繰り返しで生きてきたようなルポライターなんだ。

マガこの明石さんは「マガジン9条」の、原発についてのインタビューに出ていた人だよね。

ジンそう。原発取材では、出版界ではとても有名なライターさんだ。まあルポライターというのは身銭を切って、自分の金を持ち出して取材を続けることもある仕事だから、カード地獄の一歩手前なんて人も多いけどね。明石さんは、その典型的な地道取材派のライターさんなんだ。

マガそれで?

ジンこの本の帯に、こうある。 <クレジットカード会社、消費者金融に電話して、私は600万円取り返しました~著者~>  どう? 読んでみたくなったでしょ?

マガほう、600万円も取り戻した? 凄まじい奮闘の記録というわけだ。

ジンいや、ところがそんな悲壮感は、この本にはまるでない。明石さん、電話するだけで、払い過ぎた利子、つまり過払い金を取り戻していくんだ。ときには弁護士さんに相談したりするけれど、基本は自分で電話してカタを付けていくというルポ。

マガえっ、そんなに簡単にできるものなの? でもさ、カード利用者がみんな過払い金を持っているわけじゃないでしょ。第一、その過払い金って何よ?

ジンかつて貸金業には、利子のグレーゾーンというのがあった。えっと驚くほどの高利子がグレーな領域でつけられていたことがあったんだ。この本ではこう説明している。

<クレジットカードでキャッシング、すなわちお金を借りると、年率にして24~29%もの利息を取られるのが、これまでの常だった。しかしこの利息、実は「利息制限法」なる法律に違反していたのだという。  利息制限法では、取れる利息の上限が定められている。この上限は、借りた金額に応じて異なり、10万円未満なら年率20%、10万円以上100万円未満は年率18%、100万円以上なら年率15%―といった具合だ。  この上限を超え、カード会社に返しすぎてしまったお金のことを「過払い金」と言う。お金を借りている期間が長ければ長いほど、そして利息が高ければ高いほど、過払い金が発生している可能性は高まる。(P13)>

マガなるほど。でもずいぶん前に借りた金だったら、時効ということもあるわけでしょ。

ジンもちろん時効はある。でもね、「過払い金の時効は、すべての返済を終えた時点から数えて10年後に成立する」ということなんだそうだ。だから、この10年以内にまだ貸し借りの取り引きがあるとすれば、それ以前の過払い金も返してもらえる、というわけだ。

マガほう、それは凄い。10%も法定より高い利子で返済していたなら、確かに過払い金は発生しそうだ。

ジン利用期間が長ければ長いほど、そして真面目に返済していた人ほど、この筆者の言う「貧者の埋蔵金」(うまいネーミングだね)が埋もれている可能性が高い。

マガで、どうやって取り返すの?

ジンそれは、この本を読んでくれよ。ま、税込み千円で数十万円の過払い金が返ってくるかもしれないなら、安いもんだと思うけどね。でも、こんな深刻なテーマを、こんなに面白く書けるのは、才能だなあ。

マガなるほど。じゃあ僕のクレジットカードにも過払い金が埋もれているかもしれないな。さっそく読んでみる。その本貸してよ。

ジンキミもせこいなあ、買いなさいよ。明石さんに少しでも印税が入るように、ね。

過払い金を取り戻せ!!
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世界中が揺れている

ジン今週は、こんな話でややノンビリといきたかったけど、世の中、そうもいかないな。

マガほんとに、いろんなことが起きるよね。新型インフルエンザ騒ぎは、ようやく少し下火になってきたけど。関西では、休校中の学校がやっと再開されたしね。事件といえば、中央大学教授殺害の容疑者が5月21日にやっと捕まった。

ジン国外での事件や紛争が、とても目立った週だったね。まず、ビルマ(ミャンマー)の民主化運動指導者のアウンサンスーチーさんが、国家転覆反逆罪とかいうおぞましい罪名で、18日から裁判にかけられている。むろん軍事独裁政権の弾圧。米国人記者が湖を泳ぎ渡り、スーチーさんの家に入ったというのが容疑だけど、それでスーチーさんを起訴なんて、リクツも何もあったもんじゃない。ところで、この軍事政権国家へのODA(政府開発援助)の経済支援が、世界中でいちばん多いのが日本だという事実は、覚えておいたほうがいい。

マガスリランカでの、政府軍とLTTE(タミルイーラム解放の虎)の戦闘が、ようやく終結したというニュースもあった。

ジンこれは、多数派シンハラ人と少数派タミル人の民族対立、そして多数派の仏教徒と少数派のヒンドゥー教徒の宗教対立という側面も持つ。イスラエルとパレスチナの対立構造にも似ているね。もう20年にもわたって紛争が続いてきたが、政府軍が最終攻撃を仕掛け、ついにLTTEをほぼ制圧したという。でもね、この制圧過程で、数万人の犠牲者や難民も出ているという。

マガ宗教というのは人を幸せにするはずのものなのに、どうしてこういうことになるのかなあ。

ジン韓国の盧武鉉前大統領が23日、自殺したというニュースも、とても切ないなあ。

マガ韓国では、権力を失うと疑惑が発生する、というパターンが多いみたいだね。

ジン盧前大統領本人は、金銭的には清廉潔白な人物だと言われてきたけど、権力に群がる親族や取り巻きがいろいろとね。その責任を一身に背負って、崖から飛び降りたということらしい。

マガこれで韓国の政治がかなり動揺する…。

ジンそれは間違いない。李明博大統領への批判がそうとう高まっているからね。」

ああ、北朝鮮という国は…

マガそんな揺れる朝鮮半島情勢に油を注ぐような、25日の北朝鮮の核実験。なんという…

ジンほんとうに困った国だ。いったい何を考えてるんだろう。どうも、金正日総書記の健康不安が背景にあるようだ。とにかく一刻も早くアメリカとの単独交渉に入りたい。そのためにはもう、他の国の事なんか構っちゃいられない。6カ国会議なんか、完全無視。あまりの駄々っ子ぶりに、北朝鮮に大きな影響力を持つといわれる中国さえ、頭を抱えている状況らしい。

マガそれにしても、この機に乗じて、またもや自民党筋や右派論者からキナ臭い意見が聞こえ始めた。敵基地先制攻撃論とか、ついには日本核武装論までね。

ジンそれだけはなんとしてでも防がなければいけない。日本の政治家がそんなことを言い出すだけでも、アジアに不安定要因を作り出す。それに気づかないのかなあ、この人たちは。アメリカだって、日本の核武装なんかには、絶対に同意しない。そんなことを声高に言い出せば、日米はむしろ敵対関係に陥りかねない。つまり、今まで日米同盟一辺倒できた人たちが、今度は核武装を言うことでアメリカを敵に回すことになる。そんな矛盾だらけの論理に気づかない程度の政治家たち。

マガそして、またもや偏狭なナショナリズムに煽られた人たちが、在日の朝鮮人や韓国人を襲ったりする。北朝鮮は結果として、自ら同胞を傷つけることに手を貸しているとしか思えない。ほんとうに困った国だな。

ジンオバマ大統領の核廃絶政策にも、水を差している。日本は唯一の被爆国としても、絶対に核武装論なんかか言い出すべきじゃない。より一層強く、核廃絶を大きな声で世界に向けて発信しなければならない。それが、原爆で亡くなった人たちへの、我々が負わなければならない最低限の義務であるはずだよ。

(放光院+α)

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