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「マガ」と「ジン」のコラムリコラム
第10回:劣化ウラン弾禁止法!

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ジン ベルギーって、なかなかの国だね。

マガ ベルギー? どうしたの、急に。

ジン 7月27日の毎日新聞に載っていたんだけど、ベルギーで「劣化ウラン弾禁止法」が成立したんだって。

マガ 劣化ウラン弾って?

ジン 毎日新聞の解説によると、次のようになる。

<核兵器製造や原子力発電のためのウラン濃縮過程で生じる廃棄物「劣化ウラン」を使った爆弾。放射能を含んだ微粒子が飛散し、人体への影響、環境汚染が問題視される。鉄や鉛の弾頭に比べて貫通力が高く、調達コストが低い。米英仏露などが製造し、世界20カ国以上が保有する。>

この劣化ウラン弾の使用禁止を、ベルギーは率先して世界各国に呼びかけたわけだ。少し前には「非核三原則の採用」を決めるなど、ベルギーの平和政策がこのところ、とても目立ってきているように思うんだ。それともう一つ、世界の平和問題に関する詳しい記事が、毎日新聞にはとても多い。これは、ジャーナリズムのあり方として、特筆すべき活躍だと思う。

マガ はい、ベルギーの政策と、そのような情報を詳しく報じる毎日新聞。どちらにも敬意を表しておきます。

ジン 毎日新聞の記事のリードを引用してみよう。

<イラク、アフガニスタンなどの紛争地域で米軍などが使用した劣化ウラン弾の健康被害を追及する動きが広がり始めている。ベルギーが先月、劣化ウラン弾禁止法を施行し、被害国やNGO(非政府組織)の運動も活発化してきた。対人地雷、クラスター爆弾に続き、劣化ウラン弾の使用禁止の可否を国際社会は問われている。>

 さらに記事は、「第1回国際がん学会」でアメリカ人医師が明らかにした調査データでは、大量の劣化ウラン弾が使用されたイラクのバスラ周辺で白血病や小児がんや乳がんなどが激増している、とも書いている。またアメリカ国内でも、イラク戦争帰還兵が異常を訴え、多数の訴訟も起きているとも伝えている。

マガ 安くできて、貫通力が高いということでバンバン使ったわけだ。人体への影響の考慮なんか、戦争の論理の前には無力なんだね。

ジン とにかく安上がりに人が殺せれば、それが“最良の兵器”なんだからね。

マガ それにしても、いつだってこんな“汚い兵器”の開発・所有国が、米英仏露だっていうのも、考えてみればアタマに来る話だなあ。なにが先進国だよ。

ジン でも、それに対して、はっきりとノーを突きつける国や組織が現れたわけだ。対人地雷、クラスター爆弾、今回の劣化ウラン弾。国際社会が、非人道的兵器(人道的兵器なんていうのは語義矛盾だと思うけど)の廃絶に向けて、足並みをそろえ始めている。そして、その究極が核兵器だ。

マガ 核兵器廃絶へ進む道に、また一筋の光が見えたわけだ。でも、ベルギーの影響はどの程度なのかな?

ジン この影響はまだ顕著じゃないけど、イタリアやノルウェーなどの国や、ヨーロッパNGOなどがかなり活発に動き始めていると、この記事は指摘しているね。EUの中ではNGOの存在はそうとう重要視されているから、各国ともこの動きは無視できなくなるんじゃないかな。

マガ 日本は、どういう反応をしているんだろう。

ジン うん、相変わらずだな。記事の最後にこうある。

<日本政府は「WHOなど国際機関の調査結果を注視する」と静観の構えだ。外務省幹部は「日米関係がある以上、率先して禁止の旗は振れない」と本音を漏らす。
 医師の振津かつみ・ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)運営委員は「在日米軍の劣化ウラン弾保有数すら政府は把握しようとしない。予防原則を踏まえて、被爆国・日本こそ規制に取り組むべきだ」と語る。>

結局、アメリカの顔色をうかがわなければ、日本政府は人道的措置さえ表明できない。劣化ウラン弾を禁止すれば、日米同盟が壊れるのか。外務省の言う日米同盟とは、その程度のものなのかね。これは裏返せば、アメリカ政府の能力を見くびっていることだと、外務官僚は気づかないんだろうかね。劣化ウラン弾禁止に、もし日本が賛成したとしても、アメリカだって世界の趨勢を無視することはできない。それは、クラスター爆弾や対人地雷廃棄運動の成功を見れば分かるはずだ。声高に日本を非難したりしたら、それこそアメリカは世界から外交能力を疑われることになる。対立する政策をいかに調整していくかが外交なんだから、交換条件を持ち出してくるかもしれないけど、それに対し日本は積極的に非核政策を主張すればいい。オバマ大統領の非核演説を、今度は逆に日本がアメリカに投げかければいいわけだ。

マガ もし民主党が政権を獲ったら、せめてこんな人道的政策ぐらいは、独自の立場を鮮明にして欲しいよね。

温暖化ガス排出削減をめぐって

マガ それにしても、ひどい集中豪雨だったね。九州北部や山口県あたりに、大きな被害が出てしまった。

ジン ほんとうに最近の天候はおかしい。群馬県館林では、巨大竜巻が発生してかなりの被害が出たし、少し前には、岡山県でも竜巻が発生した。アメリカ中西部では竜巻(トルネード)被害がしょっちゅう発生するので、それ専用の天気予報まであると聞いたけど、日本でこんな竜巻被害が出るのはほんとうに珍しい。

マガ やっぱり地球温暖化が影響しているんだろうか。

ジン そう考えるしかないだろうね。竜巻がそのせいかどうかは分からないけど、もう30年ぐらい前から「大都市の亜熱帯化」とか「ヒートアイランド現象」とかが言われていた。このところ、それがますますひどくなってきている気がするね。

マガ ヒートアイランド現象って、大都市のアスファルト・ジャングルが、行き場の失った熱を溜め込むことによって起きる現象だよね。

ジン そう言われているね。それがいわゆる「ゲリラ豪雨」を引き起こすらしい。たとえば東京で言えば、中野区あたりを突然ものすごい集中豪雨が襲っても、おとなりの新宿区にはほとんど雨が降らず、中野区のごく狭い範囲だけに局地的な被害をもたらす、というような現象だ。それは今までは、わりと大都市に特徴的な現象だったわけ。ところがここ数年、そういう現象が大都市以外の地方でも起き始めている。もちろん、かつても集中豪雨被害というのは各地であったんだけど、これほど全国に波及し始めたのは、ここ10年くらいのことなんじゃないかな。

マガ ということは、世界的な異常気象現象の中のひとつということなのかな。

ジン 私には詳しいことは分からないんだけど、そう考えるのが常識的かな。

マガ それに人災も加わる。

ジン きちんと検証しなくては言えないことだけど、7月21日に突然の土石流で大きな被害を出した、山口県防府市の特別養護老人ホーム・ライフケア高砂の理事長さんが「裏山の森林の伐採によって、保水機能が奪われたために起きた人災です」とはっきり語っていたから、人災の可能性は大きいかもしれないね。

マガ ほんとうに住民のためになる工事かどうか、ここでも問われるよね。地球規模の異常気象に人災が加わって、災害の規模が大きくなるわけだ。

ジン それは確かに言えると思う。この異常気象は、地球温暖化の影響が、本格的に世界中に蔓延してきていることの現れだろうな。

マガ それへの対策は、どうなっているの?

ジン 温暖化ガス(CO2)の削減に極めて深刻に取り組まなくてはならない段階にきている、一刻の猶予もできないほど状況は逼迫している、としか言えないんだけど、実は日本政府はあまり熱心じゃないんだ、残念ながら。これもアメリカの様子見という傾向が強い。ブッシュ政権は完全に財界寄りで、とにかく温暖化ガス削減には消極的、例の京都議定書をさえ批准しなかったぐらいだからね。支援企業の言いなりだったとしか言いようがない。オバマ政権になって、かなり方針転換を図っているけど。

マガ どういうふうに?

ジン たとえば、米下院は、大企業の温暖化ガス排出量を2020年までに17%(2005年比)、2030年までに42%、さらに2050年までには83%削減するよう求めるという温暖化対策法を今年の6月に可決している。これはもちろん、オバマ政権のいわゆる「グリーン・ニューディール政策」に添ったものだ。

マガ ようやくアメリカ政府も、温暖化防止に本腰を入れ始めたということなのかな。

ジン しかし、いわゆる途上国側は先進国に対し「温暖化ガス排出量削減枠がまだ少なすぎる」と批判しているし、一方で先進国側は途上国に対し「環境に配慮した上での経済成長を求める」としているから、どうもいまひとつ議論は噛み合わないんだ。

マガ それで、日本の対応はどうなっているの?

ジン これがどうも、いまひとつ評判が良くない。麻生首相は先日のイタリア・サミットでも「2020年までに2005年比で15%の温暖化ガス排出量削減を目標とする」と表明したが、この2005年比15%削減というのも実は数字のマジックなんだ。これを1990年比に直すと、8%削減にしかならない。こんな目標にすら、日本財界総本山の経団連は反対している。実は麻生首相の原案には、1990年比で+4%~-25%という幅で6つの選択肢が用意されていた。当然のことながら経団連は+4%という最低の目標を支持していた。

マガ えっ、それじゃあ削減じゃなくて増加じゃないか。

ジン これは一応、05年比に換算すれば-4%ということになる。まあ財界の意見としては、大幅な増加を防げればそれで何とかなる、ということだろうけど。

マガ 地球の未来より、自分たちの儲けのほうが大事ということですかね。

ジン ちなみに、民主党は2020年までに2005年比25%削減案を支持している。それでも低いと、世界中の科学者は見ているようだけど。たとえば、世界最大の自然保護NGOのWWF(世界自然保護基金)は、6月2日の共同記者発表資料の中で、「世界中の科学者は、2℃以上の気温上昇を伴う壊滅的な気候変動を防ぐためには、日本のような先進国が全体として2020年までに1990年比25~40%の排出量削減をすることが必要であると試算している」としている。麻生首相の提案は、1990年比で実質8%なんだから、この差は大きいよね。
さらにWWFは「先進国各国はこれまで、温暖化対策に消極的だったブッシュ前米政権を隠れ蓑にして、排出ガス削減目標の確約を避けてきた。昨年までは、カナダ、日本、ロシアなどの各国はブッシュ前米政権の後ろに隠れていられたが、もはやその隠れ蓑はない」とまで指摘している。そろそろ日本も、世界から納得してもらえるような対策案を提示するべき時期だよ。

マガ それでもまだ民主党案のほうが、温暖化防止には積極的ということになるよね。麻生首相は、どうしてもっと積極的に踏み込めないんだろう。そのほうが、選挙戦のいい宣伝材料にもなると思うけどなあ。

ジン なりふりかまわず選挙戦に突入してしまった麻生首相としては、財界の意に反する目標なんかは、とても掲げられない。それでなくとも、政権交代の可能性が大きくなって、財界自体が従来の自民党完全支持の見直しも考えているらしい状況なんだから。

マガ 最後まで自分のことしか考えなかった人なんだ、麻生さんは。なにしろ、またしても「高齢者は働くことしか才能がない」なんて凄まじい発言をしてしまった。なんでもう少し考えてからモノを喋らないのかなあ。

ジン 自民党の候補者は「ああ、またこれで票が逃げた」とガックリきているらしい。あの両院議員懇談会の最後にチラリと見せた麻生首相の涙で、ほんの少し支持が回復しそう、と考えていたのも、すべて吹っ飛んでしまった。もう足掻きようもない。

マガ 最後の最後に来て、あの発言だもんなあ。麻生降ろしを企てた面々は、「やっぱり引きずり降ろしておくんだったなあ」と悔やんでいるかもしれないね。

(放光院+α)

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