戻る<<

コラムリコラム:バックナンバーへ

「マガ」と「ジン」のコラムリコラム
第16回:期待と不安を乗せたまま…。

090916up

マガ そろそろ新政権の形が決まったようだね。民主党・社民党・国民新党の3党連立もなんとか成立したことだし、内閣の顔ぶれもほぼ見えたし。

ジン 鳩山代表と小沢幹事長の間で、話し合いがついたということなんだろうね。

マガ 本当に、戦後初めての実質的な選挙による政権交代。これから何が始まるのか、どんな方向へ政治が進んでいくのか、期待と不安が入り混じっている、というのが僕を含めて一般的な感覚じゃないかな。

ジン それが普通だろうね。連立政権に社民党が入ったというのは確かに波乱要因だけれど、ある意味での民主党内における“ねじれ”に打ち込まれたクサビみたいな気もする。それが「期待と不安」の正体かもしれないな。

マガ 民主党内における“ねじれ”って?

ジン いつも言われることだけど、自民党よりもっと右といわれるような考えの人たちと、その対極に位置するようなリベラルな人たち、その二つの流れが同じ党内に共存している。今回の選挙における民主党のマニフェストは、自民党との差異を明確にする意図があったためだろうけど、かなりリベラル色の強いものになっている。麻生自民党が主張してきたのは「中福祉中負担」。つまり、「福祉のためにはそれなりの負担を覚悟しなさい」ということで、“中程度”とは言っているけど、実際はかなりの負担を国民に求める“自己責任型の政策”だった。言ってみれば新自由主義的な「小さい政府」なんだね。「政府に頼らず、自分のことは自分で考えろ」ということ。麻生首相は選挙戦で「行き過ぎた市場原理主義、新自由主義的考え方を排し」と反省らしき言葉を口にしていたけど、あれは明らかにその場しのぎの方便だよね。結局は「小さい政府」で「国民の自己責任」を要求していたんだから。

マガ まあ、言うこととやることがブレまくるのは、あの人の得意技だったからね。

ジン 外交や安全保障政策にしても、自民党は、とにかくアメリカとの同盟関係を何よりも優先するという、旧来の考え方からまったく踏み出せていなかった。

マガ それに対抗する意味で、民主党はリベラル色を強めた、というわけか。

ジン そう。だから民主党は、インド洋でのアメリカ艦船への給油は、2010年1月の給油法(新テロ特措法)の期限切れ以降は停止すると表明してきた。

マガ 例のインド洋無料ガソリンスタンドね。

ジン この給油については、大きな問題がある。実際のアメリカ艦船への給油は、これまでの約110回中たった11回に過ぎず、あとはパキスタンやフランスなどの艦船への給油だったといわれている。何のための給油だったのか疑問だよ。“国際貢献”という旗を掲げるためのパフォーマンスだったんじゃないかな。
 自民党や外務省、一部の評論家などは「国際貢献の面から絶対に必要だ。もし停止すれば、国際的な非難を浴びることになる」なんて主張してきたけど、事実は違う。2007年11月に、テロ特措法は期限切れになり一端給油は停止されたよね。2008年に自公与党の強行採決で新テロ特措法が成立し、給油が再開されたんだけど、その間数カ月、どこの国からも“非難や批判”は起きなかった。なにしろ、欧米各国などは日本が給油していた事実をほとんど知らなかったというし、アメリカ自身にしたって一部の日本通以外はほとんど認識はなかったというよ。

マガ ほんと? それなのになぜ給油に固執するわけ?

ジン 少しでもアメリカのご機嫌をとっておきたい人たちが、政府や外務省には多かったってことかな。私にはまったくわけが分からないんだけど。

マガ 今度の民主党政権では、それを停止すると言っているんだね。

ジン そう。でもね、最初は政権をとったらすぐに停止、と言っていたんだけど「外交政策の継続性」とか言い出して、マニフェストではそれへの言及を避けたんだ。そこで社民党は「即時停止」の主張は取り下げ、「新テロ特措法の期限切れ(2010年1月)以降は給油を停止すべきだ」と妥協して、何とかその線で収まったようだよ。

マガ それも、連立の効果かな。

ジン 沖縄の米軍基地問題についても、民主党のマニフェストには「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方も見直しの方向で臨む」と、明確に書いてあった。

マガ 在日米軍基地のあり方を見直す、というのは、これまでの日本外交から考えると、そうとう踏み込んだ表現だね。

ジン しかし、党内には「日米同盟こそ日本の根幹で、日米安保体制を損なうような政策には絶対反対」という、自民党とあまり考えが違わない勢力が相当数いる。しかも「日米首脳会談を行う前に鳩山首相の手を縛るべきではない」として、このマニフェストをなし崩しにしてしまおう、という考え方も強かったんだ。それに対し、連立協議で社民党側が主張したのは「せめて民主党のマニフェストどおりの文面を、連立合意文書に明記して欲しい」ということだった。それに国民新党も同調したんだ。

マガ なるほど、民主党内でブレかねない基地問題などについて、連立合意の中でとりあえず釘を刺した、というわけ?

ジン ま、基本政策でねじれてもらっては困る、というのが社民党の譲れない一線だったんだろうね。

マガ それが、民主党内の“ねじれへのクサビ”というのはよく分かったけど、でも、それで果たしてうまくいくのかなあ?

ジン 民主党サイドには「来年の参院選までの我慢。参院選で民主党が単独過半数を取れたなら、すぐに連立を解消する」という意見が根強い。だから社民党としても、それまでになんとか日米地位協定見直しの入り口ぐらいまでには到達したいと、そうとう頑張るんじゃないかな。となれば、確かに連立のギクシャクが露呈されるという不安はある。

マガ でも、民主党がマニフェストに掲げたようなリベラルな部分をそれなりに実現していってくれれば、少しは希望も見えてくるような気もするけど。

ジン しかし「マガジン9条」としては、そう簡単には期待できないんじゃないかな。憲法については、そうとう不安だよ。例えば鳩山代表は、自分でも何度も表明しているように明らかな改憲論者だ。13日の毎日新聞に、こんな記事が載っていた。

<分権目指す改憲 鳩山代表が意欲
 民主党の鳩山由紀夫代表は12日放送のラジオ番組で、憲法改正に関し「憲法の平和主義、人権は当たり前だが、だからといって後生大事に憲法を一言一句変えてはいけないという発想はおかしい」と述べ、地方分権の観点から改正は必要との認識を示した。改正時期には言及しなかった。
 鳩山氏は地方分権について「国が地域をコントロールして補助金漬けにする世の中では自立できない」と指摘。05年に発表した改憲試案に触れ「こういうものの道筋をつけることが大事だ」と強調した。鳩山氏の試案は、国と地方の役割分担を明確にするため、基礎自治体として「市」、広域自治体に「圏」を設置する改正などを提言している。>


これは地方分権面からの改憲論であり、憲法9条については触れていないけど、「マガジン9条」が選挙前に行った「民主党候補者への9条についてのアンケート」に、鳩山代表は自筆で回答を寄せてくれていたよね。それが、次の文章だ。

<自衛の範囲を超えた武力行使や、国連決議によらない海外での武力行使を結果的に認めるような改憲には反対です。一方でいくら9条を墨守してみても時々の内閣の都合で事実上の解釈改憲が進んでいます。政府が行う自衛権行使や国際協力について、国民が憲法の明文できちんと歯止めをかける必要性が高まっています。自衛隊の「できないこと」を明確にするという観点であれば、条文を変えた方がより良くなる余地があると考えます。>

 つまり、現状の解釈改憲に歯止めをかけるための「9条改正」であれば考える余地がある、ということだ。さらに、自衛の範囲内の武力行使、国連決議に基づく海外での武力行使については必ずしも反対ではない、と言っているわけだ。

マガ 鳩山代表の改憲論が、これか。

ジン もっと詳細な議論が必要だろうけど、「安易な解釈改憲への歯止め」として「自衛隊を縛る条文に変える」という意味だろう。それなら、きちんとその新しい条文を提示した上での議論でなければならない。そこが曖昧だから、不安を感じてしまうんだ。

マガ なるほど。実際にどういう内容の改憲を考えているか、具体的な条文案を示して欲しいね。

ジン 特に「自衛の範囲内の武力行使」とはどのような状態を指すのか。「国連決議による武力行使」には全面的に応じるのか。このあたりのきちんとした説明がなされない限り、鳩山新首相の言い分は厳しくチェックしていく必要がある。その意味で、新防衛大臣には要注意だ。

マガ でも、“あの人”が防衛大臣じゃなくて、ホントに良かったなあ…。

(放光院+アルファ)

ご意見フォームへ

ご意見募集

マガジン9条