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松本哉ののびのび大作戦

090930up

これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、松本哉のコラム連載です。
高円寺から世界へ「のびのび大作戦」、日本のみならず世界各地でも増殖中!
翻訳ツールもつけました。

まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)

※アマゾンにリンクしてます。

第17回「恐怖! タバコファシズム時代の到来!」

 最近、長野に行ってイベントをやったり、富山に行って騒動に参加したりと、各地に行くことが多かった。それもようやくひと段落したので、最近は高円寺生活が続いている…。 で、いざホームタウンに腰を落ち着けてみると…!! なんと、またバカげた規則ができようとしていた! 歩きタバコの罰金化! なんだなんだ、まったく油断も隙もありゃしねえ。

杉並区内の街中にこんな景気の悪い掲示が出現!!

 これは杉並区の条例で決まったようだが、杉並区内の禁煙区域内(駅前や商店街などの人の集まりそうなところ)ではタバコを吸ったら罰金2000円だという。まあ、最近いろんな地域で導入されつつある、例のやつだ。要するに街にはびこるお節介市民の合法化に加え、カツアゲ権まで与えちゃうことになる。うひゃ~、これはキモチ悪い!!
 一応言っておくけど、こう文句を言い始めてるものの、何を隠そう自分はタバコは吸わない。むしろ、あまりにケムリがすご過ぎるときは腹も立つし、友達が家に遊びに来たときにタバコで畳をこがされたりして「どうなってんだ、おい!」って時だってある。別に個人的にはタバコがなくなっても構わない。だが! それとこの路上禁煙化はまた話がぜんぜん違って、どうもやっぱり釈然としないものがある。

 このあいだ、うちの店のすぐそばに住む90歳近いおじいさんが、いつものように商店街の道端に座って、日に当たりながらタバコを吸っていた。散歩の帰りにこうして街行く人を眺めながら一服するのが毎日の日課なのだ。だが、そのとき!! 見たこともないナゾのオッサンが突如やってきて、「おい、オマエなにやってんだぁー! 早く火を消せ! ココは禁止区域なんだよ! 迷惑なんだよ!!」と、怒鳴り始めた! うわー、なんだコイツ! …で、当然、おじいさんは何のことだかサッパリわからず、ポカーンとしていたが、とりあえずタバコを消して家に入っていった。
 う~ん、確かにこのおじいさんからしたら、数十年も同じ行動してるのに、いきなり規則が変わって怒鳴られたら、そりゃ、わけわからないよ。それに昼間の北中通りなんてたいして人が歩いてないんだから、迷惑にもなってないのに…。まったく、かわいそうに。

 とりあえず 、最近の禁煙ブームはキモチ悪いことこの上ない。「歩きタバコは子どもの目の高さなので、とてもキケン」とか言ってるけど、それで起こった事故ってどれだけなんだろ? それを言ったら、蕎麦屋の出前の自転車にぶつかって熱湯かぶっても蕎麦禁止にはならないのに、タバコだけおかしいじゃねえか! 最近では禁煙ブームも高じてきてるので、「攻撃してOK!」みたいな雰囲気が全開だ。喫煙自体がだんだん追いやられてきて、たとえば駅の待合室なんかでは、片隅にガラスで区切られた喫煙所があったりする。たいていこういうところは、周りはガラガラで広々としてるのに、そこだけ人がギュウギュウに入っていて、ケムリで真っ白になってたりする。ほとんどアウシュビッツのガス室みたいだ。最近はもう、弱者に対する迫害でしかない。これはもう、タバコを吸わない身としても、さすがに良心がとがめるほどだ。

ちょっと昔はこんなこと言ってたのに…。

 とりあえず、この禁煙化の流れは、監視カメラを張り巡らせての“街の浄化”だったり、街を再開発して“街の効率化”の名の下に文化をめちゃくちゃにするのと大して変わらず、とりあえず上から押さえつけちゃおうっていう考え方だ。お上から強制される秩序なんか、何の意味もないし、単に自治を放棄してるだけ。人がたくさんいるんだから、ちょっとぐらいは揉めたり混乱したりってのはつき物だ。それを、妙にキレイサッパリとさせたがる所がすでにおかしい。そんなのムリムリ! やめたほうがいいよ!!
 タバコの問題も同じで、結局は自分らで何とかしないとしょうがない。ガキんちょの近くで吸ってる人がいたから吸わないように頼んでみたり…、文句を言ったものの、お互い酔っ払ってるもんだからつかみ合いになったり…、うかつにポイ捨てを注意したもんだから、それがきっかけで人生相談を延々と聞かされ、なんだか仲良くなって来たり…、食堂でメシを食ってるときに風上でお坊さんがタバコを吸ってるので、後ろから「オッサン、向こうで吸ってくれよ!」と、ボウズ頭にしょうゆをかけたところ、振り向いたら坊さんじゃなくてコワイ職業の人だったので、全力疾走で逃げたり…。っていう、やり取りの積み重ねが自治だったり、人間関係作りだったり、街づくりの第一歩だったりする。こういうことは実はかなり大事なことのはずだ。
 だが、それを上からの決まりで規制しちゃったら、元も子もない。「決まってるからダメ」っていう発想になり、それが、「決まってないからやっていい」ってことになるんだから、大変だ。「これは人としてやっていいかどうか」って事を考える機会がなくなったら、なにも世の中は進歩しない。もうちょっとこじつけて言っちゃえば、死刑制度みたいなものも同じで、なんでも「厄介なものを根こそぎなくしちゃえば解決」みたいな発想じゃ、どうしようもないね。

 って、考えたら、やぱりタバコを吸ったら区役所に金を取られるっていうのは、やっぱりおかしいでしょ。完全に余計なお世話だよ。
 さーて、文句も言い終わったので、なんかやらかさないとね~(今後の予定参照)。

【お知らせ】
●9月30日 「杉並区安全美化条例」に抵抗する フラッシュモブ
9月30日 午後8時集合/JR高円寺駅南口 駅前噴水広場
【持ち物】紙巻きタバコ、葉巻、パイプ、水タバコ、嗅ぎタバコ、含みタバコ、噛みタバコetc.
【※注意事項】
・モブが行われている時間内は持参のライターやマッチなどで着火しないでください。日常生活で喫煙している方は着火用具を「あえて」しまっておいてください。
・喫煙継続時間は数十分です。「喫煙自由最後の夜」を大いに満喫し、「生政治」到来へのささやかな抵抗を。
・ホイッスルによる終了の合図と共に直ちにモブの現場から雲散霧消します

●10月1日 高円寺駅前!大喫煙未遂大会(予定)
 吸いそうで吸わない。時間未定。

●10月某日 たばこデモ(やるかもと言う話を小耳に挟んだ。要情報収集)

たとえ「嫌だなあ」と思うことでも、
「話をしてやめてもらう」のと、
権力が力ずくで「禁止する」のとは大きく違う。
「やめさせればOK」の考え方は、
実は何の解決にもなっていないのでは?
みなさんのご意見もお寄せください。

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